チャエン

株式会社デジライズ 代表取締役

チャエン

Tencentは2026年11月4日、大規模言語モデル「Hy4」の正式版を公開しました*1。8月にプレビュー版を出したモデルで、正式版では初めて画像の理解とPC操作(コンピューター操作)に対応しています*2。API料金はプレビュー版から変えず、性能だけを上げた形です*1。

Tencentの公表値では、PC操作の評価「OSWorld 2.1」でHy4は78.9となり、Claude Opus 5.5の81.8に近い水準と報じられています*6。先に結論を言うと、Hy4は「自社環境で動かせるPC操作AI」の候補になりますが、重みはまだ出ていません。今はAPIで業務に合うか試し、重みが出たら自社評価をやり直す、という順番がおすすめです。

この話題は、私もXで紹介しました。


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Tencentとは|Hy4を開発する中国の大手IT企業

Tencent(テンセント)はWeChatやゲーム事業で知られる中国の大手IT企業で、生成AIは「Hunyuan(混元)」チームが開発しています。最近のモデルは「Hy」の名前で出ていて、Hy4はその最新世代です。プレビュー版は2026年8月28日に公開され、総パラメータ770B・アクティブパラメータ49B、コンテキスト100万トークン超のモデルとして発表されました*3。

Tencentとは?オープンモデルHy4がPC操作に対応|料金・Claude Opus 5.5との比較(画像1)
画像:茶圓のX投稿より(@masahirochaen)

プレビュー版の重みはHugging Faceで公開され、ライセンスはApache License 2.0です*4。商用でも使いやすい条件で、自社のサーバーやクラウドで動かせるのがオープンモデルの大きな利点です。今回の正式版も重みを公開する予定ですが、正式版のライセンスはまだ示されていません。

Hy4正式版の概要

項目内容
公開日2026年11月4日(プレビュー版は8月28日)
規模TechNodeは770Bと報道(Tencentの正式発表では未確認)。プレビュー版は総パラメータ770B/アクティブ49B
コンテキスト100万トークン(OpenRouter掲載は1,048,576トークン、出力上限65,536トークン)
新しく増えた機能画像の理解、PC操作(コマンドラインとGUIの両方)
API料金100万トークンあたり入力0.834ドル/出力2.501ドル(プレビュー版と同じ)
使える場所Tencent Cloud(TokenHub)、OpenRouter、CodeBuddy/WorkBuddy、元宝、ima
重み近く公開予定(日付は未公表)。システムカードも合わせて公開予定

表の数字はTencentの発表と、それを伝えた報道で確認したものです*1*5。正式版のパラメータ数はTechNodeが770Bと報じていますが*1、Tencentの正式発表では確認できていません。プレビュー版は総パラメータ770Bでした*3。正式版は学習の量を増やして中身を強化したモデルと説明されています*2。

Hy4で何ができるか|画像の理解とPC操作が加わった

正式版の一番の変化は、画像を見てPCを操作できるようになった点です。Tencentは、細かい画像の読み取り・複雑なグラフの分析・数学の図を使った推論に対応したと説明しています*2。プレビュー版は文章だけを扱うモデルだったので、扱える仕事の幅が大きく広がりました。

PC操作はコマンドラインとGUIの両方

PC操作では、コマンドラインと画面の操作(GUI)を組み合わせて作業できるとされています。BlenderやCADのような専門ソフト、複数のアプリをまたぐ長い作業にも専用の学習をしたと説明されています*2。表計算ソフトから数字を拾ってメールを作る、といった定型作業をAIに任せる使い方が想定されます。

  • 画像の理解 — 図表や書類を読み取り、複数の画像をまたいで推論する
  • PC操作 — 画面を見てクリックや入力を行い、必要に応じてコマンドも使う
  • 専門ソフト — Blender・CADなどの操作に向けた学習をしている
  • 長い作業 — 複数アプリをまたぐ手順の多い作業を続けて進める

Tencentが想定する使いどころ

Tencentは、画像とPCの作業・フロントエンドやゲームの開発・金融や事務・研究開発・長く付き合う個人アシスタントを主な用途に挙げています*2。社内のプロダクトチームが実際の業務の流れに沿って学習と評価に加わったとも説明しています*1。性能表の数字だけでなく、実務に近い形で作られた点は評価できます。

金融分野では、金融の専門家213人が実際の579の課題で評価し、Hy4は3.04点だったと報じられています*5。ただ、評価の設計も実施もTencent自身によるもので、外部の検証ではありません。この点は後の注意点で詳しく触れます。

Hy4の性能|Claude Opus 5.5との比較

気になるのは、海外の主要モデルとどこまで並ぶかです。報道によると、Tencentの公表値は次の通りです*6。どれもTencentが出した数字で、第三方の評価はまだありません。

評価内容Hy4Claude Opus 5.5
OSWorld 2.1PC操作78.981.8
Terminal Bench 4.0ターミナルでの作業44.466.4
ProgramBenchソフト開発30.056.5

PC操作のOSWorld 2.1では差が3ポイントほどですが、ターミナル作業やソフト開発では大きな差があります。Tencent自身も、最先端の数学・長い開発作業・画像の質問応答などの社内評価では、トップの非公開モデルとまだ大きな差があると認めています*2。性能を誇張せず弱いところも出している姿勢は、判断材料として信頼しやすいと私は考えます。

Tencentの公表値として、OSWorld 2.1でのGPT-6.1 Solのスコアは75.2と報じられています*6。比べるときは、Tencentが公開するシステムカードの数字も確かめてください。

比較に使ったClaude Opus 5.5の料金や性能、effortの選び方は、以下の記事で解説しています。

Claude Opus 5.5とは?料金・性能・effortの選び方と4モデル実機比較

Claude Opus 5.5とは?料金・性能・effortの選び方と4モデル実機比較

ハルシネーション(もっともらしい誤り)は減った

Tencentの社内の検索評価では、ハルシネーション率がプレビュー版の15.76%から正式版で5.45%に下がったと報じられています。当て推量による誤りも23.1%から5.6%に下がったとされます*5。ただ、評価の条件は細かく示されていません。社内の検索評価という限られた条件の数字として受け止めるのがよいと見られます。

Hy4の料金と使い方|APIで試し、重みで自社運用

API料金は100万トークンあたり入力0.834ドル、出力2.501ドルです*1。中国の人民元では入力6元・出力18元、キャッシュが効いた入力は0.3元で、プレビュー版と変わりません*6。性能を上げても値上げしなかったので、プレビュー版で試していた企業はそのまま乗り換えられます。

項目料金・条件
入力0.834ドル/100万トークン
出力2.501ドル/100万トークン
キャッシュ入力0.042ドル/100万トークン
TokenHubの割引12月31日まで定価の半額
CodeBuddy/WorkBuddy11月4日〜15日は無料枠あり(上限つき)

Tencent CloudのTokenHubでは12月31日まで半額で使え、CodeBuddyとWorkBuddyでは11月15日まで上限つきの無料枠があります*1*7。試すなら、この期間に自社の業務データに近い課題を流してみるのが効率的です。

使える場所は3つ

  • Tencentの製品 — CodeBuddy・WorkBuddy・元宝・imaで画面から使える
  • API — Tencent CloudのTokenHubとOpenRouterから呼び出せる
  • 重み(予定) — 公開されれば自社のサーバーやクラウドで動かせる

日本の企業がまず試しやすいのはOpenRouterです。OpenRouterは複数のAIモデルを同じ形式で呼び出せる中継サービスで、今使っている他社モデルと入れ替えて比べやすいのが利点です。ただし、OpenRouter経由でも最終的にはTencent Cloudで処理されるため、データの扱いは後で説明する点に気をつけてください。

自社環境で動かすときに必要なもの

重みが出れば、APIを使わず自社の環境で動かせます。プレビュー版の公開ページでは、FP8版をGPU 8枚で分けて動かす vLLM と SGLang の例が載っています*4。正式版もvLLM・SGLangのコミュニティ、Inferactと組んで動かす環境を整えるとしています*2。

正式版の規模はTencentの正式発表では確認できていませんが、プレビュー版と近い規模なら必要な機材も近いと見られます。770Bのモデルを社内で動かすには大型のGPUサーバーが前提で、中小企業が手元で気軽に動かせる規模ではありません。廉価で速い「Hy4 flash」も近く出る予定なので、自社運用を考えるならそちらを待つのも一つの手です*1。

Hy4のようなオープンモデルを自社のサーバーや閉じたクラウド環境に組み込みたい、とお考えの方もいるのではないでしょうか。法人向けAIリスキリングサービスの導入社数No.1*の弊社デジライズが、AIコンサルティング&開発のサービス資料を無料でお送りしています。既製のAIサービスでは要件が満たせず、自社に合わせたシステム構築や環境の検討が必要な場合の進め方をまとめています。

※出典:株式会社東京商工リサーチ「法人向けリスキリングサービスに関する調査」(2026年5月/調査期間:2026年3月26日〜4月17日/調査方法:デスクリサーチおよびヒアリング/2026年3月末時点)

企業での活用事例|Hy4が向く仕事・向かない仕事

Hy4の強みは、PC操作ができるモデルを低い料金で使え、いずれ自社環境でも動かせる点です。一方で開発作業では海外のトップモデルに差があります。私なら次のように使い分けます。

業務Hy4の向き不向き理由
社内システムの定型操作向くPC操作の評価が高く、料金も安い
書類・図表の読み取り向く画像の理解と100万トークンの長い文脈を使える
機密データを扱う作業重み公開後に向く自社環境で動かせばデータを外に出さずに済む
大きなソフト開発慎重に開発系の評価では非公開モデルとの差が大きい
正確さが最優先の調査慎重にハルシネーションの数字は自社評価のみ

向いているのは「手順が決まった作業」

経費精算の入力や、複数の社内システムから数字を集めて報告書にまとめる作業は、手順が決まっていて結果も確かめやすい仕事です。こうした作業は、間違えたときに人が気づきやすく、PC操作AIの最初の用途に向いています。API料金が安いので、何度も繰り返す作業ほど費用面の利点が出ます。

PC操作AIの考え方や、人間との差がどう縮まってきたかは、以下の記事でも解説しています。

【速報】Simular AIがAgent S3を発表|人間レベル72%に迫る69.9%の性能でコンピュータ操作を完全自動化

【速報】Simular AIがAgent S3を発表|人間レベル72%に迫る69.9%の性能でコンピュータ操作を完全自動化

海外モデルとの使い分け

難しい開発や判断を伴う仕事は、Claude Opus 5.5やGPT-6.1 Solのような海外のトップモデルに任せ、数の多い定型作業をHy4で回す、という組み合わせが現実的です。料金の差を活かしつつ、品質が必要な部分は上位モデルで守れます。GPT-6.1 Solの性能と料金は、以下の記事で解説しています。

GPT-6.1 Solとは?GPT-6 Astraに迫る性能を5分の1のコストで使う方法

GPT-6.1 Solとは?GPT-6 Astraに迫る性能を5分の1のコストで使う方法

Hy4を使う前の注意点|数字・データ・ライセンス

Hy4は魅力のあるモデルですが、企業で使う前に確かめたい点がいくつかあります。特に、PC操作は社内システムに直接触れるため、文章を作るAIより慎重な設計が必要です。

  • 評価の数字 — 今出ている数字はTencentの自社評価で、外部の検証はまだない。重みが出たら第三方の評価を待つか自社で測る
  • データの保存先 — APIはTencent Cloudで処理される。社内規程で国外のクラウドへの送信が許されるか、法務・情報システム部門に確認する
  • ライセンス — プレビュー版はApache 2.0だが、正式版のライセンスは未公表。公開時に商用利用の条件を確かめる
  • PC操作の権限 — AIに渡すアカウントの権限を最小にし、送金や削除など戻せない操作は人が承認する流れにする
  • 安全性 — Tencentはサイバーや生物のリスクを重視したシステムカードを出すとしている。公開されたら目を通す

システムカードでサイバー・生物分野のリスクを重視すると明言している点は、責任ある公開の姿勢として評価できます*2。一方で、重みが公開されると誰でも安全対策を外して使えるのがオープンモデルの性質です。自社で動かす場合は、利用ログの記録やアクセスの管理を自社で用意する必要があります。

社内で試すときの進め方

  1. 課題を決める — 実際の業務から、結果が確かめやすい作業を5〜10個選ぶ
  2. APIで試す — 割引や無料枠の期間に、機密を含まないデータで今のモデルと比べる
  3. 運用方法を決める — API利用で足りるか、重みを使って自社で動かすかを決める
  4. 重み公開後に再評価する — 自社環境で同じ課題を流し、速度と品質を確かめる

まとめ

  1. 何が変わったか — Hy4はHyシリーズで初めて、画像の理解とPC操作に対応したオープンモデルになった
  2. 性能 — OSWorld 2.1は78.9でClaude Opus 5.5の81.8に近いが、開発系の評価では差が大きい
  3. 料金 — APIは入力0.834ドル・出力2.501ドルでプレビュー版から据え置き、12月末までTokenHubは半額
  4. 注意点 — 数字は自社評価で、重みと正式版のライセンスはまだ出ていない

私のおすすめは、割引と無料枠がある今のうちに、機密を含まない定型作業でHy4を試しておくことです。重みが出たら自社環境で同じ課題を流し、APIで使い続けるか自社で動かすかを決めてください。データを外に出せない業務でPC操作AIを使いたい企業にとって、Hy4は注目しておく価値のある選択肢だと私は考えています。

参考資料

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社デジライズ 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。