チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

「商談準備に追われて、提案の中身を考える時間がない…」
「顧客のことを調べたつもりでも、いつも情報が浅くて刺さらない…」

こんな悩みを抱える営業(セールス)の皆さん、多いんのではないでしょうか。私もデジライズで多くの企業の営業現場を見てきましたが、優秀な営業ほど「準備」に時間をかけています。

しかし、その準備が非効率だったとしたら?

ある調査では、営業担当者が1回の商談準備にかける時間は平均で約43分、しかも67%もの人が「毎回は準備ができていない」 と回答しているんです。*1

これ、とんでもない機会損失ですよね。

でも、安心してください。その「情報収集」「仮説立案」「質問設計」という、最も時間がかかり、かつ最も重要なプロセスを、たった10分で終わらせる方法があります。それが、 AIの活用 です。

この記事では、私が実際にクライアントにも推奨している、ChatGPT、Gemini、PerplexityといったAIを使いこなし、商談準備を劇的に自動化・効率化する具体的なテクニックを、プロンプト例付きで徹底的に解説します。

*1 出典:UKABU調査


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商談準備が営業を苦しめる「3つの壁」

そもそも、なぜ商談準備はこれほどまでに営業担当者を苦しめるのでしょうか?理由はシンプルで、準備プロセスには大きく分けて3つの重いタスクがあるからです。

  1. 情報収集の壁: 顧客の最新ニュース、IR情報、競合動向、業界トレンドなど、見るべき情報がWeb上に分散しすぎている。
  2. 社内連携の壁: 「あの顧客、過去に誰か接点なかったっけ?」という社内情報(過去の議事録や別担当者のメモ)がバラバラで、最新の状況が分からない。
  3. 仮説構築の壁: 集めた情報から「顧客が本当に抱えている課題は何か?」「何を提案すれば響くか?」という仮説と、それを検証するための「質問」を設計するのが難しい。

従来の営業は、これら全てを「気合と根性」で乗り越えてきました。しかし、平均43分かかる作業をAIで自動化できればどうでしょう?

AIは、この「情報収集」→「仮説立案」→「質問設計」という一連の流れを、驚くべきスピードで一気通貫にサポートしてくれるんです。

企業・市場情報をAIで自動リサーチ

まずは、商談の土台となる「顧客理解」です。ここでは、最新のWeb情報、社内の閉じた情報、そしてそれらを整理するプロセスをAIで自動化します。

「最新ニュース」と「競合動向」を3分で把握

おすすめAI:Perplexity / ChatGPT

商談相手の「今」を知るのに、リアルタイムのWeb検索は欠かせません。

ここで最も強力なのが Perplexity です。Perplexityは最新のWeb情報を検索し、情報源(どのサイトから引用したか)を明記しながら回答を生成するのが最大の特徴です。IR情報や報道など、情報の正確性が求められる場合に最強のツールです。

【プロンプト例】

# 役割
あなたは一流の市場アナリストです。

# 目的
営業担当者が{商談相手の企業名}との初回商談で活用するための、最新のブリーフィング資料を作する。

# 実行タスク
Web上の最新情報を検索し、以下の4つの項目について詳細なサマリーを作成してください。
- 事業内容と主要な収益源: この企業が「何で」収益を上げているか(主要サービスや製品)。
- 直近6ヶ月の重要ニュース: IR情報、新製品リリース、経営陣の変更、M&A、資金調達など、業績に影響する可能性のある出来事。
- 主要な競合他社: 主要な競合を2〜3社挙げ、その動向も簡単に(例:競合A社は最近〇〇を発表)。
- 市場での機会と脅威 (S/W): 外部情報から読み取れる、この企業にとっての追い風(機会)と向かい風(脅威)。

# 出力形式
上記の4項目を、見出しをつけた箇条書きで分かりやすく整理してください。

もちろん、ChatGPTの検索機能でも同様のことは可能です。普段ChatGPTをメインに使っている方は、まずはそこから試してみるのが良いでしょう。

実際に株式会社デジライズの名前を入れてみたところ、以下の画像のように出力されました。しっかりと出典も明記されており、ファクトチェックも容易になっているのがポイントです。

「Google Workspace / Microsoft 365」と連携し、社内履歴を把握

おすすめAI:Gemini (Google環境) / Copilot (Microsoft環境)

最大の落とし穴が「社内情報」です。「半年前、別部署がすでに失注していた…」なんて、想像するだけで恐ろしいですよね。これは、お使いの社内環境に合わせて、AIを使い分けるのが必須です。

  • Google環境の方
    • Gemini が最適です。GeminiはGoogle Workspaceと連携しており、あなたのGoogleドライブ内やGmail内の情報を横断で検索・要約できます。
  • Microsoft環境の方
    • Copilot が最適です。Outlookのメール履歴やTeamsのチャット履歴、SharePoint上の資料をAIが瞬時に検索してくれます。

【プロンプト例】

# 役割
あなたは優秀な営業アシスタントです。

# 目的
{商談相手の企業名}との過去の社内接点情報をすべて整理し、営業担当者が「何を話すべきか」「何に注意すべきか」を把握できるようにする。

# 実行タスク
私のGoogle Workspace(ドライブ、Gmail) / Microsoft 365(SharePoint, Teams)内から、{商談相手の企業名}に関連する情報をすべて検索してください。
その上で、以下の3点を抽出・要約してください。

- 過去の主なやり取り: 最後に接触した日付、社内担当者、相手の担当者、主要な議題。
- 未解決の宿題 (TODO): 過去のやり取りで「保留」「要確認」となっている事項。
- ネガティブな記録: 過去のクレーム、失注記録、または特に注意すべき担当者の情報や発言。

# 出力形式
上記1〜3の項目を箇条書きで報告してください。該当する情報が見つからない場合は「該当なし」と明記してください。

【補足】Slackにも情報がある場合

おすすめAI:ChatGPT on Slack / Claude on Slack

もちろん、GoogleドライブやTeamsだけでなく、Slackに社内の情報が残っている企業も多いでしょう。その場合、ChatGPTやClaudeのSlack連携が非常に強力です。AIにSlack内を検索させ、膨大なログの中から重要な意思決定や顧客のフィードバックを瞬時に掘り起こすことができます。

メインの環境(Google/Microsoft)での検索と併せて、Slack内の情報もAIで検索することで、社内情報の取りこぼしを完全に防ぐことができるでしょう。

ClaudeがSlackで使えるように|導入手順・使い心地・ビジネスでの活用事例を解説

ClaudeがSlackで使えるように|導入手順・使い心地・ビジネスでの活用事例を解説

Anthropic社が開発する「Claude」がSlackとの公式連携を開始しました。この連携により、Slackワークスペース内でClaudeに直接質問したり、会議の準備、資料作成、情報検索を行うことが可能になりました。…

H3:収集した情報を「商談用サマリー」に整理

おすすめAI:ChatGPT / Claude (使い慣れたAIでOK)

さて、Web上の「最新情報」と、社内の「過去の履歴」が集まりました。このままでは情報が分散していて使えませんよね。ここで、使い慣れたAI(ChatGPTやClaudeでOK)に情報を整理させます。

【プロンプト例】

# 役割
あなたは一流の営業コンサルタントです。

# 目的
分散した顧客情報を「商談で勝つための戦略サマリー」に集約する。

# 実行タスク
以下の【外部情報】と【内部情報】を分析し、商談準備のための「戦略サマリー」を作成してください。

# 入力情報
【外部情報】
{ここに「最新ニュース・競合動向」のサマリーを貼り付け}

【内部情報】
{ここに「社内履歴・過去の宿題」のサマリーを貼り付け}

# 出力形式
以下の見出しに従って、簡潔な箇条書きでサマリーを生成してください。
{
## 相手の現状 (As-Is):
(例:新規事業△△を立ち上げ、リソースがそちらに集中している)
## 3つの強み (Strength):
(例:市場でのブランド力、独自の技術)
## 3つの弱み・課題仮説 (Weakness / Hypothesis):
(例:新規事業と既存事業のカニバリゼーション、社内データが分散している可能性)
## 直近の重要トピック (Trigger):
(例:競合□□社が新サービスを発表。自社の優位性が揺らぎ始めている)
}

これで、次の「仮説構築」フェーズにスムーズに進むための、最強の「商談準備サマリー」が完成しました。

AIで「仮説質問リスト」を作る

情報が整理できたら、次は「何を聞くか?」です。商談の成否は「質問の質」で決まります。AIを壁打ち相手に、顧客の核心を突く質問を設計しましょう。

H3:“思考型”の質問リスト(仮説)を生成する

💡 おすすめAI:Claude / ChatGPT / Gemini

先ほど作成した「商談準備サマリー」を元に、AIに“思考の壁打ち”をさせます。

「この情報から、どんな仮説が立てられる?」「核心を突く質問は?」 こんな“思考”が必要な作業には、Claudeが適していると私は感じています。Claudeは長文の理解力と論理的な推論(Reasoning)能力に優れている ため、商談の文脈を深く読み取った回答が期待できます。

とはいえ、この作業は ChatGPTGemini でも全く問題なく可能です。重要なのは「AIに質の高い仮説を考えさせる」ことです。

【プロンプト例】

# 役割
あなたはトップセールスであり、BANTCH情報を巧みに聞き出すヒアリングの達人です。

# 目的
顧客自身も気づいていない「潜在的な課題」を引き出し、「この営業は分かっている」と思わせるための、戦略的な質問リストを作成する。

# 入力情報
【戦略サマリー】
(ここにさきほど作成した「戦略サマリー」を丸ごと貼り付け)

【こちらの提案(商材)】
{ここに提案できる商材を羅列、それぞれの特徴など詳細も}

# 実行タスク
上記サマリーとこちらの商材を踏まえ、「仮説(弱み)を検証するため」の質問を5つ生成してください。

# 出力形式
質問: (顧客に聞くべき具体的な質問文) 
意図: (その質問で何を確認・検証しようとしているのか)
...

AIで商談資料のたたきを作る

おすすめAI:Gemini / Claude / Manus / Genspark

仮説と質問リストで商談の「骨子(戦略)」が固まったら、いよいよ「武器」となる資料のたたきを作成します。ここでゼロからPowerPointを開く必要はありません。ここでもAIの強みを使い分けましょう。

各ツールの強み

Gemini は、最近のアップデートでかなり質の高いプレゼン資料を作成できるようになりました。Googleスライドに落とし込む際に、ずれが生じないのが強みです。無料版でもプレゼン資料を作成できるので、簡単に試すことができます。

一方、 Claude は、Microsoftとの互換性が強みです。GeminiではGoogleスライドにずれなく出力できましたが、ClaudeはPowerpointにずれなく落とし込むことができます。Microsoft環境の方におすすめです。

さらに、 ManusGenspark のような、プレゼンテーション資料の作成に特化したAIツールもあります。これらは、ビジュアルデザインやレイアウトまで含めて自動生成してくれるため、デザインの時間を大幅に短縮したい場合に有効です。ただし、GoogleスライドやPowerpointに落とし込む際にずれが生じてしまうため、少し上級者向けのツールとなっています。

どのツールを使うにしても、重要なのはリサーチと仮説構築で得た情報をインプットとしてAIに渡すことです。これにより、一般的な資料ではなく、顧客に最適化された「たたき」が完成します。

# 役割
あなたは、トップセールスであり、顧客の課題解決を導くストーリーテリングの達人です。

# 目的
以下の【戦略サマリー】と【仮説質問リスト】に基づき、顧客の心を動かし、課題解決の必要性を感じさせる商談資料の「構成案(たたき)」を生成する。

# 入力情報
【戦略サマリー】
{ここに作成した「戦略サマリー」を丸ごと貼り付け}

【仮説質問リスト】
{ここに作成した「仮説質問リスト」と「その意図」を丸ごと貼り付け}

【こちらの提案(商材)】
{ここに提案できる商材を羅列、それぞれの特徴など詳細も}

# 実行タスク
商談の流れを意識し、以下のスライド構成案を作成してください。

- 課題: 顧客の課題を定義・共感する
- 深堀: 課題の真因を深掘りする(ここで【仮説質問リスト】の要素を反映)
- 解決策: 解決策(こちらの商材)を提示する

ロールプレイ形式でヒアリングを練習

おすすめAI:ChatGPT / Gemini (Live機能)

質問リストができたら、最後は「どう伝えるか」の練習です。 テキストでAIと壁打ちするだけでも十分効果がありますが、もし可能なら「音声会話(Live機能)」を使ってみてください。

ChatGPTやGeminiの音声会話機能を使えば、AIが顧客役になりきり、より本番に近い臨場感でヒアリングや反論処理の練習ができます。

【プロンプト例:ChatGPT / Gemini】

# 役割
あなたは{商談相手の企業名}の{相手の想定役職}です。
私は、あなたに{こちらの提案商材}を提案しに来た営業担当です。

# 商談相手のペルソナ
非常に多忙で、時間にシビア。「結論から話してほしい」と思っている。
こちらの提案には懐疑的。「またよくある営業か」と思っている。
コスト意識が非常に高い。

(ここに戦略サマリーから分かる「相手の状況」を追記。例:新規事業の立ち上げで手一杯)

# 実行タスク
これから商談のロールプレイを行います。
あなたは上記ペルソナを厳格に守り、私のヒアリングや提案に対して、現実的で少し厳しめな回答を返してください。
私(営業マン)が主導権を握り、あなたの潜在課題を引き出せるかテストしてください。

私から始めます。準備ができたら「準備完了です。始めてください。」とだけ言ってください。
提案と商談を生成AIで強化するー 提案書・営業トーク・反論処理をAIで仕組み化・効率化

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まとめ:AIを“商談準備チームの一員”にする

いかがでしたでしょうか。 これまであなたが40分以上かけて一人でやっていた商談準備 が、AIの特性を理解し、使い分けることで、たった10分で完了するイメージが湧きましたか?

  • Perplexity / ChatGPT: 最新情報を集める「Webリサーチ担当」
  • Gemini / Copilot: 社内情報を整理する「アシスタント」
  • Claude / ChatGPT: 仮説を立てる「戦略コンサルタント」

AIにこれらを任せることで、あなたは「どうすれば顧客の課題を解決できるか?」という、最も創造的で価値のある仕事に集中できるようになります。

この記事で紹介したようなAI活用は、あくまで第一歩です。 AIの真価は、個人の生産性向上に留まらず、チーム全体、ひいては組織全体の業務プロセスを変革し、「営業組織の“勝ちパターン”」として仕組み化(自動化)することで発揮されます。

「とはいえ、自社のどの業務からAIを導入すればいいの?」
「チーム全員が使いこなせるようにするには、どんな研修が必要?」

こうしたお悩みをお持ちの企業様も多いのではないでしょうか。

デジライズでは、生成AIの導入研修を行っています。個別のミーティングで業務内容をヒアリングし、現場で本当に使えるAI活用法を一緒に考えるところからスタートします。実際に使えるように、AIの専門家が伴走いたしますので、AI担当者がいない企業様でもご安心ください。

まずは情報収集からでも歓迎です。
導入の流れや支援内容をまとめた資料をこちらからご覧いただけます。

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この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。