チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

OpenAIは、ChatGPT内で直接動作する新世代のアプリケーション「Apps in ChatGPT」を発表しました。これにより、ユーザーはChatGPTとの会話を続けながら、ホテルの予約やデザイン作成、オンラインコースの受講といった様々なタスクをシームレスに実行できるようになります。開発者にとっても、8億人を超えるユーザー層にリーチできる新たなプラットフォームが登場したことになります 。

本記事では、この「Apps in ChatGPT」がもたらす新しい体験、開発者に求められる設計思想、そして開発から収益化までのロードマップについて、公式情報をもとに詳しく解説します。

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Apps in ChatGPTとは何か

Apps in ChatGPTは、ユーザーとの対話の中に自然に組み込まれ、タスク実行を支援する開発者製のアプリケーションです。ChatGPTが会話の文脈を理解し、最適なタイミングでアプリを提案したり、ユーザーがアプリ名を直接呼び出して起動したりすることが可能です。

会話の流れを止めずにタスクを実行する新体験

従来のチャットボットのように、外部サイトに遷移してタスクを完了させる必要はありません。Apps in ChatGPTは、自然言語での指示に応答し、インタラクティブな地図やプレゼンテーション、ビデオプレーヤーといったリッチなインターフェースをチャット画面内に直接表示します。

これにより、ユーザーは「会話」という直感的なインターフェースを維持したまま、これまで以上に多くのことを、より創造的に、そしてスピーディーに達成できるようになります。OpenAIはこの体験を「アプリと話す (talking to the app)」と表現しており、ユーザーが対話している対象をモデルが正確に把握し、文脈に沿ったサポートを提供できる点が特徴です。

GPTsやプラグインとの違い

これまでもChatGPTの機能を拡張する「GPTs」や「プラグイン」が存在しましたが、「Apps in ChatGPT」はそれらの進化形と言えます。大きな違いは、開発者がフルスタックのアプリケーションを構築できる点にあります。

  • インタラクティブなUI: プラグインが主にAPI連携によるテキストベースの応答に留まっていたのに対し、AppsではインタラクティブなUIをチャット内に直接レンダリングできます。
  • 柔軟な開発: 新しく提供される「Apps SDK」は、オープンスタンダードな「Model Context Protocol (MCP)」上に構築されており、開発者はバックエンドのロジックからフロントエンドのUIまで、完全にコントロールすることが可能です。

過去の様々な試みから得られた学びを活かし、開発者がよりリッチで統合された体験を構築できる、本格的なプラットフォームとして設計されています。

機能Apps in ChatGPTGPTsプラグイン (Plugin)
UIの表現力高い (インタラクティブなUIをチャット内に表示)限定的 (主にテキストベース)限定的 (主にテキストベース)
主な目的会話内でのタスク完結、リッチな体験提供特定の目的に特化したChatGPTのカスタマイズ外部サービスのAPI連携
開発Apps SDK (フルスタック開発が可能)設定画面でのノーコード/ローコード開発外部APIとマニフェストファイルが必要
自由度高い (UI/UXを柔軟に設計可能)中程度 (設定範囲内でのカスタマイズ)低い (APIの応答形式に依存)

デモから見る具体的な活用事例 (Coursera, Canva, Figma)

発表されたデモンストレーションでは、具体的な活用事例が示されました。

Coursera(オンライン学習)

ChatGPTに「機械学習について教えて」と尋ねると、Courseraアプリが関連コースを提案。チャット内でビデオ教材を再生し、ピクチャーインピクチャーで表示しながら、ビデオの内容について「彼らが今言っていることをもっと説明して」と質問すると、ChatGPTが文脈を理解して詳しく解説してくれます。

Canva(デザイン作成)

会話のアイデアをもとに「カラフルで風変わりなポスターを作って」と依頼するだけで、Canvaが複数のデザイン案を生成。インラインで表示された案の中から一つを選び、フルスクリーンで詳細を確認。さらに「このポスターを資金調達用のピッチデックにして」と頼むと、スライド資料に変換してくれるなど、創造的な作業を強力にサポートします。

Figma(デザインとブレインストーミング)

チームでのブレインストーミング中に「新しいアプリのアイデアを出そう」とChatGPTに話しかけると、Figmaアプリが起動し、オンラインホワイトボード「FigJam」のテンプレートをチャット内に表示します。ユーザーは会話を続けながら、リアルタイムでアイデアを付箋に書き出したり、簡単なフローチャートを作成したりできます。これにより、アイデア出しから具体的なデザインへの移行がシームレスになります。

アプリ開発者に求められる設計のポイント

OpenAIは、ユーザーに一貫性のある、便利で信頼性の高い体験を提供するため、開発者向けのデザインガイドラインを公開しています。

OpenAIが推奨する4つの基本原則

質の高いアプリを設計するための基本原則として、以下の4つが挙げられています。

  1. Conversational (会話的): ChatGPTの会話の流れやUIにシームレスにフィットする、自然な拡張機能のように感じられること。
  2. Intelligent (インテリジェント): 会話の文脈を理解し、ユーザーの意図を予測してサポートすること。
  3. Simple (シンプル): 各インタラクションは単一の明確なアクションや結果に焦点を当て、UIや情報は必要最小限にすること。
  4. Responsive (レスポンシブ): 高速かつ軽量に動作し、会話を妨げるのではなく強化すること。

加えて、支援技術を利用するユーザーを含む、幅広い層が利用できるようアクセシビリティへの配慮も求められます。

アプリに適したユースケースと不適切なユースケース

すべてのタスクがアプリに適しているわけではありません。以下のような特徴を持つユースケースが推奨されています。

適したユースケース

  • 予約、注文、スケジュール管理など、会話に自然にフィットするタスク。
  • 開始と終了が明確な、短〜中期間のアクション指向のタスク。
  • その場でユーザーがすぐに行動に移せる、価値のある情報提供。
  • カードなどで視覚的にシンプルに要約できるもの。

不適切なユースケース:

  • ウェブサイトに適した長文コンテンツの表示。
  • 複雑な複数ステップのワークフロー。
  • 広告、アップセル、無関係なメッセージング。
  • 他人に見られる可能性のあるカード内での機密情報の表示。

体験価値を高める3つの画面表示モード

開発者は、用途に応じて3つの異なる表示モードを使い分けることで、ユーザー体験を最適化できます。

表示モード特徴最適なユースケース
Inline (インライン)会話の流れに直接埋め込まれる基本的な表示形式。カードやカルーセルがある。単一のアクションの実行、複数の選択肢の提示、情報の簡潔な要約など。
Fullscreen (フルスクリーン)インライン表示から画面全体に展開される没入型の表示形式。地図の探索、フォームへの入力、デザインの編集など、より複雑な操作や多くの情報を扱うタスク。
Picture-in-picture (PiP)画面の隅にフローティング表示され、会話を続けながら持続的に利用できる。ビデオ再生、ライブセッションの視聴、ゲーム、リアルタイムの進捗追跡など。

開発から公開、収益化までのロードマップ

開発者は、公開されたロードマップに沿ってアプリの開発と公開を進めることができます。

Apps SDKプレビュー版を利用した開発の始め方

開発者は、本日よりプレビュー版として公開された「Apps SDK」を利用して、すぐにアプリの構築を開始できます。

  • 開発環境: Apps SDKはオープンスタンダードなModel Context Protocol (MCP) 上に構築されており、開発者は自身のコードとバックエンドを用いて、UIとロジックを自由に設計できます。
  • サポート: OpenAIは、開発を支援するためのドキュメント、ガイドライン、サンプルアプリを提供しています。

アプリの申請と審査プロセス

開発したアプリは、OpenAIへの申請と審査を経て公開されます。

  • 申請開始時期: 2025年後半にアプリの申請受付を開始する予定です。
  • 審査基準: 申請されたアプリは、公開されている開発者ガイドラインの基準を満たしているかレビューされます 。安全性、プライバシー、品質などが評価の対象となります。
  • 公開と掲載: 審査を通過したアプリは、ユーザーが検索・閲覧できる専用のディレクトリに掲載されます。特にデザインや機能性が優れたアプリは、ディレクトリ内や会話の提案で目立つように特集される可能性があります。

将来の収益化と「Agentic Commerce Protocol」

開発者がアプリから収益を得るための仕組みも計画されています。

  • 収益化モデル: アプリの収益化に関する詳細は後日発表される予定です。
  • Agentic Commerce Protocol: 将来的に、ChatGPT内で商品の購入などを即座に完了できる「インスタントチェックアウト」機能がサポートされる予定です。これは「Agentic Commerce Protocol」と呼ばれる新しいオープンスタンダードに基づいています。

まとめ:Apps in ChatGPTがもたらすユーザーと開発者の未来

「Apps in ChatGPT」の登場は、単なる機能追加に留まりません。これは、AIとの対話が、私たちの生活や仕事におけるあらゆるタスク実行の起点となる未来を示唆しています。

ユーザーは、思考や会話の流れを中断することなく、より多くのタスクを直感的かつシームレスにこなせるようになります。ChatGPTは、質問に答えるだけの存在から、日々の活動を包括的にサポートする「統合プラットフォーム」へと進化していくでしょう。

開発者には、8億人を超える巨大なユーザー基盤に直接アクセスできる、またとない機会が提供されます 。Apps SDKという強力なツールキットにより、アイデアを迅速に形にし 、新たな収益源を確立することが可能になります 。これは、イノベーションを加速させ、全く新しい価値を持つアプリケーションが生まれる土壌となるはずです。

デジライズでは、生成AIの導入支援を行っています。個別のミーティングで業務内容をヒアリングし、現場で本当に使えるAI活用法を一緒に考えるところからスタートします。導入後の研修や活用支援まで一貫して伴走いたしますので、AI担当者がいない企業様でもご安心ください。

まずは情報収集からでも歓迎です。ご興味のある方は、以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。

参考

Introducing apps in ChatGPT and the new Apps SDK
Apps SDK
App developer guidelines

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。