店内放送の原稿作成が1時間から5分に。「古本市場」「ふるいち」を展開するリユース企業で、受講者全員が自分のAIエージェントを持つまで
株式会社テイツー 様

導入前の課題
- 定型文書の作成:店内放送の原稿、消耗品の発注メール、日次の報告など、決まった形の文書を毎回一から作っていた。原稿は1本あたり約1時間かかっていた
- 情報の整理と照合:店舗から届く情報の整理や、在庫・買取実績のデータ抽出に、1回あたり20〜45分ほどかかっていた
- 活用の広がり:社内に知見を共有する場がなく、個人がばらばらにAIを使っていた。毎日AIを使う方は回答者8名中4名、エージェントを作って使う方は2名にとどまっていた
導入後の効果
- 定型文書の作成:店内放送の原稿は約1時間 → 5分。消耗品の発注メールは20分 → 5分、日次の報告は15分前後 → 5分程度に。商品ごとに内容を合わせた原稿を数分で作れるようになった
- 情報の整理と照合:店舗運営のブリーフィングは1日あたり約30〜45分 → 約5〜10分。在庫の抽出は30分 → 5分。これまで手が回らなかった突合確認も行えるようになった
- 活用の広がり:エージェントを作って使う方は回答者9名全員に。毎日AIを使う方は9名中8名。9つの仕組みを成果発表会で共有し、社内の事例として蓄積した
株式会社テイツー様では、本部の10名を対象に、約半年間のAI教育「AI人材養成講座」を実施しました。社内で使っているMicrosoft 365 Copilotを題材に、受講者それぞれが自分の業務に合わせたAIエージェントを作成し、成果発表会では9つの仕組みが発表されています。
「なんとなくCopilotを使える」状態から、自分の業務を任せる仕組みを持つ段階へ。全国に「古本市場」「ふるいち」を展開するリユース企業が、半年間でどのように活用を広げていったのかをご紹介します。
会社紹介

株式会社テイツー様は、1989年に岡山市で「古本市場」を創業したリユース企業です。本社を岡山県岡山市に置き、「古本市場」「ふるいち」「トレカパーク」などの店舗を合計175店舗展開しています(2026年2月28日現在)。書籍、家庭用テレビゲーム、トレーディングカード、ホビーなどの販売と買取を通じて、家族で楽しめる廉価な娯楽を提供しています。

2019年には、AI機能を搭載した自社開発のトレーディングカード読取査定機「TAYS(テイズ)」の運用を直営店舗で開始しました。2022年からは他社への提供も始めるなど、店舗の現場にテクノロジーを取り入れてきた企業です。
経営理念は「満足を創る」。良質な商品とサービスを提供し、常に変革を追い求めることで社会に貢献するという姿勢を掲げています。
生成AI導入前の課題感
キックオフでうかがったのは、次の3つの課題でした。1つ目は、経営層への報告に向けて、AI導入の費用対効果を示せるデータがほしいこと。とくに小売業の事例があると、自社の業務に結びつけやすいというお話でした。2つ目は、社内で知見を共有する場がなく、個人がばらばらにAIを活用していること。3つ目は、生成AIの適切な活用に向けた運用ルールのさらなる整備が課題となっていたことです。
受講者の多くは、Copilotを業務で触ったことはあるものの、自分の業務にどう組み込むかはこれからという状態でした。AI教育の開始時点で、AIを活用している業務の数は平均2.6業務、1週間あたりの削減時間は平均2.35時間。7月の時点でも、毎日Copilotを使う方は回答者8名中4名で、エージェントを作って使う方は2名にとどまっていました。
時間がかかっていたのは、店舗運営を支える日々の定型業務です。店内放送の原稿は1本あたり約1時間。店舗から届く情報の整理や、在庫・買取実績のデータ抽出にも、1回あたり20〜45分ほどかかっていました。
実施内容 ― テイツー様ならではの取り組み
半年間のプログラムは、社内で使っているMicrosoft 365 Copilotの基本を学ぶことから始め、受講者それぞれの業務に合わせた仕組みづくりへ進む形で設計しました。
- スタートアップと合同ワークショップ全4回
スタートアップで現状と導入目的を確認したうえで、ワークショップでは議事録やメールの作成、契約書の確認、Excelのデータ加工、エージェントの作成など、汎用的な業務を題材にCopilotの使い方を学びました。 - 活用支援MTG全3回で「自分の業務」に落とし込む
1回目はExcel同士の突合と定型文の作成、2回目はノートブックとエージェントの作成をテーマに、受講者が自分の業務を題材にして手を動かしました。 - 店舗運営の業務に合わせた仕組みづくり
店内放送の原稿、店舗運営のブリーフィング、消耗品の発注メール、トレカガチャの在庫抽出、宅配買取の実績反映など、リユース店舗ならではの業務を題材にエージェントを作成しました。 - 成果発表会で9つの仕組みを共有
3回目の活用支援MTGを成果発表会とし、受講者が作った仕組みを発表しました。個人のなかにあった工夫を、参加者全員の知見として共有する場になりました。
生成AI活用の効果
最も大きく変わったのは、店内放送の原稿作成でした。商品ごとに伝える内容を一から考えて1本あたり約1時間かかっていた作業が、エージェントに任せることで5分で仕上がるようになっています。長い原稿でも、商品それぞれの内容に合わせた文面を、店舗で使えるレベルで作れるようになりました。

成果発表会では、ほかにも8つの仕組みが発表されました。受講者が発表スライドに記入した変化は次のとおりです。
発表された仕組みの Before/After
| 業務 | Before | After |
|---|---|---|
| 店内放送の原稿作成(1本) | 約1時間 | 5分 |
| 店舗運営のブリーフィング(1日) | 約30〜45分 | 約5〜10分 |
| トレカガチャの在庫抽出 | 30分 | 5分 |
| DXテーマの発掘 | 30分 | 数分 |
| 宅配買取の実績反映 | 約20分 | 5分以下 |
| 消耗品の発注メール作成 | 20分 | 5分 |
| 日次のインシデント報告 | 15分前後 | 5分程度 |
※ 単位(1本・1日・1回)がそろっていないため、合計はしていません。
宅配買取の実績反映では、時間の短縮に加えて、これまで手が回らなかった突合確認も行えるようになりました。商品ページの制作では、時間の削減ではなく、これまでできなかった表現の工夫ができるようになったという変化も報告されています。
アンケートの指標も動いています。

AIを活用している業務の数は約2倍になり、中間報告で目標とした5業務に届きました。エージェントを作って使う方も、7月の2名から、9月には回答者全員に広がっています。
1日の流れで見ると、変化はこうなります。

受講者アンケートには、こうした変化が言葉としても表れています。
感覚的に使用していた部分に明確な理論の裏付けがされたため。
受講者アンケートより
なんとなく使っていたCopilotを、根拠を持って使えるようになったという声です。エージェントの作成を学んだ回では、社内での使い方を見据えた声も寄せられました。
エージェント機能は使いこなせていなかった為、今後の社内運用のヒントをいただきました。
受講者アンケートより
業務で使い慣れたアプリでの活用にも手応えがありました。
ExcelのRAWデータを読み込ませるだけで、グラフやダッシュボードに加工できる点が良かった。
受講者アンケートより
成果発表会では、多くの受講者が指示文に「推測で埋めない」「分からないところは要確認と書く」といった一文を入れていました。AIが苦手な部分を理解したうえで、自分で補強しながら使う。その姿勢が、受講者のあいだに根づいています。
今後の展望
9名がそれぞれ自分の仕組みを持った今、テイツー様の次のテーマは、その仕組みを会社の仕組みへ広げていくことです。
- 9つの仕組みを他部署へ横展開
発表された仕組みは「届いた情報の整理」「データの照合・抽出」「決まった形の文書作成」「Webページの制作」の4つの型に分けられます。同じ型の業務はほかの方の仕事にもあるため、横展開の候補として検討を進めていきます。 - AIの運用ルールを整える
エージェントの所有者や資料の置き場、異動・退職時の引き継ぎなど、組織でAIを使うためのルールづくりを進めています。ルールを先に決めておくことで、活用が広がる段階での混乱を抑えます。 - 学び続ける仕組みをつくる
AIツールは短い期間で機能が変わります。受講者以外の方も含めて、継続して学べる環境づくりを検討しています。
半年間の取り組みを通じて、AIを「使える」段階から「自分の仕事を任せる仕組みを持つ」段階へと進んだテイツー様。発表された9つの仕組みは、小売の現場から生まれた同社自身の事例集です。
店舗の現場にAIを取り入れてきた同社が、次に手を入れたのは本部の仕事の進め方でした。「満足を創る」ために常に変革を追い求める姿勢が、生成AIという新しい道具を得てさらに加速していきます。



