議事録3時間が30分に。創業50年の卸売企業が、半年で週の削減時間を2.2倍にするまで
株式会社昭和堂 様
導入前の課題
- 文書作成の負荷:商談の議事録は1件3時間、提案書は5時間かかっていた。稟議書の作成や契約書の確認も重なり、営業と管理部門の双方で、つくる作業が業務時間を占めていた
- AI活用の定着:研修で学んだ内容を実務に結びつける場面が少なく、週あたりの削減時間は第1回から第4回まで1.14〜2.12時間にとどまっていた
- 帳票・データ業務の手作業:週間シフト表は関数の知識が必要なため毎回手入力で、抜けや被りが発生。商品マスタの登録もJANコードや商品名を1件ずつ調べていた
導入後の効果
- 文書作成の負荷:成果発表会で示された営業部の事例では、議事録は3時間 → 30分(約83%削減)、提案書は5時間 → 2時間(60%削減)。メール文面も従来比 約半分になり、生まれた時間を提案準備と顧客対応に回している
- AI活用の定着:各時点の回答者平均で、週あたりの削減時間は2.12時間 → 4.67時間(約2.2倍)。週1回以上Copilotを使う方が回答6名中4名、うち2名は「毎日(業務に不可欠)」と回答
- 帳票・データ業務の手作業:関数やVBAを書いた経験のない担当者が、対話しながらシフト表の自動入力化・在庫表の自動取得・VBA生成を実現。抜けや被りがなくなり、確認作業は件数そのものが増えた
目次
株式会社昭和堂様では、2026年3月から8月までの半年間、社員10名を対象に生成AI研修「法人リスキリング」を実施しました。使用ツールはMicrosoft 365 Copilotです。受講者アンケートの回答者平均で、週あたりの削減時間は2.12時間から4.67時間へと約2.2倍になり、成果発表会では商談の議事録が1件3時間から30分になった事例も共有されました。
研修の前半、週あたりの削減時間は1〜2時間のあたりで伸び悩んでいました。それが後半になって動き出します。「学ぶ」から「日常の道具にする」へ——菓子や雑貨を北陸3県に届ける創業50年の卸売企業が、どのように定着させていったのかをご紹介します。
会社紹介

株式会社昭和堂様は、昭和50年(1975年)12月に福井市で創業した卸売企業です。菓子、食品、飲料、雑貨、文房具、酒類の卸・小売に加え、美容事業も手がけています。本社のある福井オフィスのほか、石川オフィス(野々市市)と富山オフィス(富山市)を構え、北陸3県を商圏としています。従業員は90名(2024年12月時点)。2025年12月に創立50周年を迎えました。

同社が掲げるミッションは「世界中の『あそび場』にささやかな幸せを届ける」です。遊技場やアミューズメント施設、学童施設や学校、各種イベント——「あそびごころ」を求めて人が集まるすべての場を「あそび場」と定義し、そこで提供される景品を通じて一人ひとりに幸せを届けることを使命としています。

扱う商品の一つひとつが「プライズ」——ささやかな幸せを生み出す「日常のごほうび」です。そのため商品の種類は多く、商品マスタの登録、在庫の管理、詰め合わせの見積といった業務が日々発生します。今回の研修に参加したのは、営業部・営業課・商品課・物流課・管理課という、この現場を担う各部署の社員でした。
生成AI導入前の課題感
研修導入の目的は、全社の業務効率化を加速させることでした。経営層からは「社内の業務効率化のスピードを加速させたい」「売上の分析をよりわかりやすくしたい」という声が、現場からは「会社全体の効率化を促進し、全体のリソースを増やしたい」という声が寄せられていました。
研修の入口で実施した業務棚卸では、シートにご記入いただいた12名分の業務を洗い出した結果、月間1,211.5時間(4週換算で週あたり302.9時間)の業務量が見えてきました。時間が集中していたのは、営業・商品・見積事務(週39.5時間)、事務処理・庶務(週32.5時間)、メール・問い合わせ対応(週32.2時間)、資料・文書作成(週24.1時間)、データ集計・分析(週22.4時間)といった領域です。
ただ、研修が始まっても活用はなかなか伸びませんでした。週あたりの削減時間は第1回ワークショップ1.36時間、第2回2.00時間、第3回1.14時間、第4回2.12時間。学んだことが実務に接続しきれず、1〜2時間のあたりで足踏みが続いていたことになります。
具体的にどの業務が重かったかは、受講者の記述に表れています。「各項目を毎回入力していた為、抜け・被りが多発」(週間シフト表)、「登録依頼書や見積書の情報に誤りや不足があり、JANコードや商品名の確認に手間がかかっていた」(商品マスタ登録)、「VBAをそもそも書けないので作成できなかった」(データ取り込み用シート)。卸売業らしく、帳票とマスタデータの整備に時間が吸われていました。
実施内容 ― 株式会社昭和堂様ならではの取り組み
- 半年・全9回のプログラム
スタートアップミーティングから始まり、初心者向け研修、ワークショップ全4回、アフターフォローミーティング、活用支援ミーティング2回まで。学ぶ期間で終わらせず、実務で使い続ける期間まで伴走する構成にしました。 - 業務棚卸を起点にしたテーマ設定
「AIで何ができるか」からではなく、「どの業務に時間がかかっているか」から入りました。棚卸で見えた照合・在庫・集計・管理の手作業を、そのままワークの題材にしています。 - 業務アプリの中でCopilotを使える環境へ
研修の中盤にあたる2026年5月、Word・Excel・PowerPoint・Teamsの中でCopilotを使える環境が整いました。ワークで学んだことを、その日の業務でそのまま試せる状態です。なお、第3回ワークショップの評価は全4回で最も高いものでした。 - 卸売の現場に寄せた部課別ワーク
活用支援ミーティング①では、営業部・営業課・商品課・物流課・管理課の部課別に分かれ、Excel上のCopilotで「2つのリストの突合」「在庫発注点のアラート」「メンバーマネジメント表」を扱いました。あわせて手順書・部課別のプロンプト集・業界事例集を配布しています。 - 成果発表会で社内の資産にする
活用支援ミーティング②は成果発表会にしました。8名がそれぞれの実務での使い方を、課題・活用方法・成果・実際のプロンプトまでスライドにまとめて発表しています。個人の工夫がその場で共有され、会社の資産になりました。
生成AI活用の効果
成果発表会で共有された事例のうち、変化がもっとも大きかったのは営業部の商談議事録でした。会議を録音してAIで議事録化し、次回の前に振り返りとタスクの漏れを確認する。この流れに変えたことで、1件3時間かかっていた作成が30分になっています。
同じ方の事例では、提案書の作成が5時間から2時間(60%削減)、メール文面の作成が従来比 約半分になりました。受講者全体では、各時点の回答者平均で、週あたりの削減時間は2.12時間から4.67時間へ、AI活用業務数は2.12件から2.67件へ伸びています。回答者平均で見ると、業務の幅(約1.3倍)よりも、1業務あたりの削減時間(約1.0時間→約1.75時間)の伸びが大きいのが、この半年の特徴でした。使える業務の数だけでなく、1件ごとの効果も伸びていることがうかがえます。
主要KPIの変化(各時点の回答者平均)
部署ごとに広がった活用業務
| 部署 | AIで担うようになった業務 |
|---|---|
| 営業部 | 議事録・商談メモ/提案書のブラッシュアップ/顧客メールの文面 |
| 管理課 | 稟議書の構成案/契約書のリーガルチェックと表記ゆれの修正/VBA生成/業務フロー図・役割分担表・手順書 |
| 商品課 | 商品マスタ登録時のJAN・商品情報の調査と確認/紙資料のPDFスキャンから案内書への変換 |
| 営業課 | 在庫表の自動取得(XLOOKUP)/販促ポスターの作成 |
| 物流課 | 週間シフト表の自動入力化 |
上位を占めるのは文書作成ですが、そこに商品マスタ・在庫表・シフト表という帳票の整備が並ぶのが、卸売業ならではの結果でした。定型の文書作成から、業界固有の専門業務まで活用の裾野が広がっています。
利用の頻度も変わりました。活用支援ミーティング②の時点で、週1回以上Copilotを使う方が回答6名中4名。うち2名は「毎日(業務に不可欠)」と回答しています。
1日の流れで見ると、変化はこうなります。
成果発表会の発表資料には、こうした変化が言葉としても表れています。まず、関数を書いた経験のない方の変化です。
関数があまりわからなかった為AIでしたいことを対話形式で作成し、自動入力が必要なところ等改修。抜け・被り等もなくなり、効率・精度UP
成果発表会の発表資料より
道具の使い方を覚えたというより、これまで手が出せなかった領域に届くようになった、という報告でした。同じ変化は、資料づくりの側にも起きています。
これまで構想段階で止まっていた改善案を、検討や提案に進められる状態へ変えることができた
成果発表会の発表資料より
頭の中にあった改善案を、提案書・業務フロー図・役割分担表・要件一覧という形にできるようになった、という声です。そして半年を終えた時点で、AIとの向き合い方そのものが変わっていました。
AIは『代わりに考える相手』。的確な指示と最後の確認をセットにすると、質もスピードも上がる
成果発表会の発表資料より
「作業の主役はAI。しかし人は『確認・修正』が新たなボトルネック」——成果発表会ではこう整理されていました。AIに任せて終わりではなく、確認の時間をどう減らすかが次の論点になる。半年でここまで到達したことが、いちばんの成果かもしれません。
今後の展望
成果が見え始めた今、次の論点は、活用の個人差を埋め、横展開を仕組みにすることです。最終報告では、次のような論点を共有しています。
- AI推進の役割を置く
成果発表会では、管理課の方が業務フロー図や要件一覧といった業務設計レベルの成果を出されていました。こうした方を推進役に置き、月1回の社内共有会とプロンプト集の更新を回していくことが選択肢のひとつです。 - 使い方に合わせた個別フォロー
毎日使う方がいる一方で、使う場面がまだ月に数回という方もいます。業務ごとに使いどころを一緒に見つける個別の支援が、次の打ち手になります。 - 現場・物流系の業務設計
業務棚卸でもっとも工数が大きかったのは現場作業・移動(週71.3時間)でした。この領域はAI単独では動かないため、手順書化と記録の整理から始めることが考えられます。 - 次に出てきた壁への対応
「どういうプロンプトを書くとよい成果が出るか」「扱うデータが膨大で管理方法に困っている」「毎月更新が必要な商品案内書を何から指示すればよいか」。課題の中身が、「AIが分からない」から「この業務をこう変えたい」に変わってきています。
半年間の取り組みを通じて、生成AIを「学ぶ」段階から「日常業務で使う」段階へ進んだ株式会社昭和堂様。議事録が3時間から30分になった事例や、回答者平均で週あたりの削減時間が約2.2倍になったことは、その過程で生まれた成果のひとつです。
「世界中の『あそび場』にささやかな幸せを届ける」——その現場を支えているのは、商品マスタや在庫表やシフト表といった、表に出ない日々の仕事です。創業50年を迎えた同社の歩みは、生成AIという新しい道具を得て、次の段階に入ります。
