AI活用業務が1人2.2件から3.8件に。岡山のシステム会社が契約書チェックから新人研修まで広げた生成AI活用

ピコシステム株式会社 様

ピコシステム株式会社

導入前の課題

  • AIを使える業務の広がり:管理部門は紙の書類と人の目による確認作業が多く、AIを使える業務の見え方が限られていた
  • 提案と営業資料の負荷:提案書の作成や、製品を選ぶたびのメーカーへの問い合わせなど、提案までの準備に時間がかかっていた
  • 個人の経験に頼る業務:契約書のチェック、コードのレビュー、新人SEの育成が、特定の人の経験に頼っていた

導入後の効果

  • AIを使える業務の広がり:業務棚卸で79業務を洗い出し、48件のAI活用候補を特定。受講者アンケートの自己申告では、同じ11名のAI活用業務数が1人平均2.2件 → 3.8件、週あたりの削減時間が2.0時間 → 約3.0時間に
  • 提案と営業資料の負荷:顧客の条件から候補製品を比較表つきで絞り込む使い方や、社内イベント・展示会・メルマガの企画と文章作成にAIを使う取り組みが、成果発表会で紹介された
  • 個人の経験に頼る業務:契約書のAIによる一次チェック、社内規定や名刺作成に答えるチャットボット、新人SE向けの訓練の自動評価など、個人の技を仕組みにしようとする取り組みが、成果発表会で10名から共有された

目次

    ピコシステム株式会社様では、2026年1月から6月までの半年間、社員11名を対象に生成AI研修「法人リスキリング」を実施しました。受講者アンケートの自己申告では、AIを活用している業務の数は研修開始直後の1人平均2.2件から3.8件へ、週あたりの削減時間は2.0時間から約3.0時間へと増えています。

    研修の成果発表会では、契約書の一次チェックや新人SEの育成といった、個人の経験に頼っていた業務を、AIで仕組みにしようとする取り組みが次々に共有されました。「学ぶ」から「組織で使う」へ——岡山を拠点に半世紀以上、企業のシステムを支えてきた同社の歩みをご紹介します。

    会社紹介

    ピコシステム株式会社様は、岡山市に本社を置くシステム会社です。1968年に事務機器の販売から始まり、1971年にコンピュータの取り扱いを開始。1975年にピコシステム株式会社へ社名を変更しました。2026年には、創業59年を迎えています。岡山の開発センターのほか、東京・大阪・姫路に拠点を構え、従業員は161名(2026年5月時点)です。

    ピコシステム株式会社 公式サイト
    ピコシステム株式会社 公式サイト(www.picosystem.co.jp)

    オーダーメイドのシステム開発、メーカーパッケージの導入支援、オリジナル業務パッケージの開発、クラウドシステムの構築、OA機器の販売と保守、docomoショップの運営まで、企業のIT環境を幅広く手がけています。掲げる言葉は「CREATE THE FUTURE」です。

    ピコシステム株式会社 会社案内
    会社案内(www.picosystem.co.jp/corporate/)

    今回の研修に参加したのは、管理部門、営業、SE、サービス部門の11名です。

    生成AI導入前の課題感

    研修の導入にあたって同社が重点を置いたのは、管理部門のメンバーでした。管理部門には紙の書類が多く、人の目による確認作業に時間がかかっていました。営業では、提案書づくりに時間がかかることが課題でした。その糸口として、生成AIを取り入れることにしたといいます。

    システム会社として、これまでもシステムを入れて手作業をなくす取り組みは続けてきました。ただ、社員一人ひとりが自分の業務にAIを使うという道筋は、まだできていませんでした。研修開始時には、次のような声が寄せられています。

    資料の作成に時間がかかることが多いため、良いプロンプトを学び時間を削減していきたい。

    受講者アンケートより

    研修開始直後の第1回ワークショップの時点で、AIを活用している業務は1人平均2.2件、AIで削減できている時間は週2.0時間でした。「ほとんど活用していない状態からのスタート」という方もいれば、AIの活用に懐疑的だったという方もいました。

    実施内容 ― ピコシステム様ならではの取り組み

    • 業務ごとに段階を踏む全4回のワークショップ
      第1回でAIの基礎・文章生成・データの可視化、第2回で契約書などの文書分析と議事録の生成、第3回で画像生成とアイデア出し、第4回でチャットボットの作成と社内規定のナレッジ化を扱いました。回を追うごとに、個人の作業から組織で使う仕組みへと題材を進めています。
    • 業務棚卸で使い道を洗い出す
      アンケートとは別に、11名の業務を棚卸しして79業務を整理しました。その中から、すでにAIを活用している使い方が54件、これからAIを使える候補が48件挙がり(1つの業務に複数の使い方が挙がる場合があります)、工数が大きくAIを使いやすい業務がどれかが見えてきました。
    • アフターフォローで学びを実務につなぐ
      全4回の振り返りと、受講者ごとの活用状況の確認を行い、実際の業務で試すテーマを一人ひとり整理しました。ここで決めたテーマを、続く活用支援ミーティングの題材にしています。
    • 成果発表会で取り組みを共有する
      活用支援ミーティング②を成果発表会とし、受講者がそれぞれの業務での取り組みをスライドにまとめて発表しました。発表のあとには、発表者ごとに良かった点と次に伸ばせる点をまとめたフィードバックを届けています。

    生成AI活用の効果

    成果発表会でとくに目を引いたのは、個人の経験に頼っていた業務にAIを入れる取り組みです。成果発表会では、業務委託契約書と秘密保持契約書をAIで一次チェックする仕組みや、社内規定をもとに質問に答えるチャットボットが発表されました。チャットボットは社内で共有され、誰でも使える状態になっています。

    受講者アンケート(自己申告)の数値も見てみます。研修開始直後の第1回ワークショップと、各受講者の最新の回答を、同じ11名で比べました。

    主要KPIの変化(受講者11名)

    AI活用業務数(1人平均)
    2.2件→3.8件
    約1.8倍
    週あたり削減時間(1人平均)
    2.0時間→約3.0時間
    約1.5倍
    週あたり削減時間(11名の合計)
    22.0時間→32.5時間
    約1.5倍

    各回の回答者(9〜11名)の満足度の平均は、5段階で4.27〜4.56でした。

    成果発表会で共有された取り組み

    領域取り組み
    法務・契約業務委託契約書・秘密保持契約書のAIによる一次チェック/社内規定に答える検索チャットボット
    営業・企画社内イベント・展示会・ホームページリニューアル・メルマガの企画と文章作成/顧客の条件からの製品の絞り込みと比較表
    開発・SESQL文の自動生成/定型的なコーディングとレビューのたたき台
    人材育成新人SE向けのヒアリング訓練(AIがお客様役を演じ、段階ごとに評価)/部内勉強会の資料作成(判例を根拠に整理)
    広報・総務展示会用のオリジナルイラスト/社内イベントのフライヤー/名刺作成マニュアルを読み込ませた専門エージェント

    新人SEの研修では、AIにお客様役を演じさせ、ヒアリングから要件整理、設計までの各段階を評価させる仕組みをつくっています。人によって進め方が異なっていたレビューや育成を、同じ基準で回せる形にしていこうとする取り組みです。

    成果発表会では、顧客から相談を受けた際に、機能・規模・予算・セキュリティといった条件を整理してAIに渡し、候補製品を比較表つきで絞り込む取り組みも紹介されました。メーカーへの最終確認の前に候補を絞れるため、提案の準備を早められます。営業・企画業務の大半でAIを使うようになった方からは、残業が減ったというご本人の実感も寄せられました。

    ※ 数値は受講者アンケートの自己申告値です。研修開始直後は第1回ワークショップの回答(11名)、比較時点は各受講者の最新の回答(11名。第4回に回答のなかった2名は第3回の回答)をもとにした1人あたりの平均と合計です。業務棚卸の件数はアンケートとは別の集計で、受講者11名分の業務単位の件数です。

    受講者のコメントには、AIとの向き合い方の変化が表れています。

    AIの活用には少し懐疑的な部分があったが使ってみると大変便利で効率が上がるということが分かった。うまく活用できれば便利な反面、間違いも多々あり、逆に効率が悪くなるケースもあった。使い続けることでより精度が上がるので会社全体で使っていければと思った。

    受講者コメントより

    便利さだけでなく、間違いへの注意も含めて使いどころをつかんでいる、という声です。ほとんど使っていなかった状態から、日常業務に取り入れ始めた方もいます。

    AI に対して、ほとんど活用していない状態からのスタートでしたが研修スタートとともに研修外での日常業務でも少しづつAIを活用できてよかった。少しづつではあるが研修内容を元にして効率化につながっていると感じております。特に指示文は助かりました。

    受講者コメントより

    そして、AIに任せる部分と人が判断する部分を切り分ける、という考え方も生まれています。

    AIは魔法の道具ではなく、使い手の考え方や質問の質によって成果が大きく変わるということを改めて認識しました。研修後、さっそく業務プロセスの中で「AIに任せられる部分」と「人が判断すべき部分」を整理し、少しずつ実践に取り入れています。

    受講者コメントより

    研修を推進した方は、これまでシステムを入れて手作業をなくしてきた同社で、社員が自発的にAIを使って業務を変えていく道筋ができたと振り返ります。

    今後の展望

    成果が見え始めた今、次の論点は、発表された取り組みを組織の仕組みとして定着させることです。

    • 管理部門の手作業を2〜3割減らす
      研修を推進した方は、管理部門の手作業を2〜3割減らすことを次の目標に掲げています。各自がばらばらに仕組みをつくるのではなく、きちんと管理しながら進めていく必要がある、とも話します。
    • 取り組みをテンプレートとチャットボットにする
      成果発表会で共有されたプロンプトや仕組みを、業務ごとのテンプレートやチャットボットとして整えていくことで、研修に参加していない社員も同じ使い方ができるようにしていくことが考えられます。業務棚卸で見つかった48件の活用候補が、その材料になります。
    • 職種に合わせたツールの使い分け
      資料作成やデータ分析、開発といった職種ごとに向いているツールは異なります。部署や職種に応じた使い分けを整理していくことも、次の検討テーマです。

    半年間の取り組みを通じて、生成AIを「学ぶ」段階から「組織で使う」段階へ踏み出したピコシステム株式会社様。受講者の自己申告でAIを活用する業務が1人平均2.2件から3.8件に増え、個人の技を仕組みにしようとする取り組みが次々と生まれたことは、その過程で得られた成果のひとつです。

    「CREATE THE FUTURE」——半世紀以上にわたり企業のシステムを支えてきた同社の歩みは、生成AIという新しい道具を得て、次の段階に入ります。

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