「操作方法が分からない」が半年でゼロに。社員6名の磁気コネクターメーカーが、代表自ら全9回に参加して得たもの
Magconn株式会社 様

導入前の課題
- AI活用スキル:6名中3名が「操作方法が分からず、利用実績がほとんどない」レベル1。少人数の体制のなかで、AIを使える人と使えない人に分かれていた
- 業務時間:棚卸しで洗い出した業務は27件・週8,220分(137時間)。うち資料作成が週2,310分と最も重く、担当者は全員がAI未活用のまま手作業で進めていた
- 活用の広がり:AIに触れる頻度は週4.0日。用途は翻訳など一部に限られ、時間を最も使う資料作成やメール対応には手が届いていなかった
導入後の効果
- AI活用スキル:自己評価は平均1.60 → 3.00(約88%増)。レベル1だった3名は全員がレベル3以上へ移り、レベル1は0名に。1名は複数業務で成果を実感するレベル4へ到達した
- 業務時間:AIで削減できた時間は1人あたり週3.92時間 → 5.10時間(約30%増)。AIを活用する業務数も1人あたり2.17件 → 3.20件(約48%増)へ広がった
- 活用の広がり:頻度は週5.0日となり、受講者全員が毎営業日AIに触れる状態へ。メール作成・議事録・Excel集計に加え、出荷報告メールの一括作成にまで活用が及んだ
Magconn株式会社様では、6名の受講者を対象に、2026年2月から8月までの約7か月間にわたる生成AI研修「法人リスキリング」を実施しました。Copilot活用スキルの自己評価は平均1.60から3.00へと約88%上昇し、AIに触れる頻度は週4.0日から週5.0日へ。受講者全員が毎営業日、業務のなかでAIを使う状態になっています。
研修開始時点では、6名のうち3名が「操作方法が分からず、利用実績がほとんどない」という状態でした。磁気で接続するコネクターによって機器の使い勝手を変えてきた同社が、今度は自分たちの働き方に手を入れるまでの半年間をご紹介します。
会社紹介
Magconn株式会社様は、2019年設立、東京都国分寺市に本社を置くマグネットコネクターのメーカーです。マグネットコネクタモジュール、タブレット端末用ケース、充電用スタンドとその周辺機器の開発から製造・販売までを手がけ、全国の大手飲食チェーンや電子機器メーカーを主な取引先としています。
同社の中核にあるのが、磁力で吸着する独自のコネクター「Magconn(マグコン)」です。コードの抜き挿しをなくしたまま充電とデータ同期を可能にするこの技術は国内外で特許を取得しており、接触式充電方式の採用によって充電効率97%を実現しています。スパークとショートを防ぐ機能、端子部の金メッキによる耐腐食性、防水・防滴・防塵といった仕様も、業務用の過酷な環境を前提に設計されたものです。

この技術をパッケージ化した自社ブランド製品が、タブレット用業務ソリューション「ピタッとくん」です。セルフオーダーシステムに欠かせないタブレット端末について、「重い」「消毒や掃除がしにくい」といった現場の不便を、ケースとスタンドの設計から解いていきます。モジュール販売、OEM/ODM開発製造の受託、自社ブランド製品の企画・製造・販売という3つの事業を通じ、ショッピングカートや医療機器といった幅広い分野へ展開してきました。

社名の「Magconn」は、Magnet(磁石)と Connectivity(接続性)を組み合わせた造語です。抜き挿しという当たり前の動作に残っていた不便を、つなぎ方そのものを変えることで解消する——その姿勢は、今回の生成AI活用の進め方にも重なります。
生成AI導入前の課題感
研修は、代表自身の「業務作業の無駄を無くしたい」という問題意識から始まりました。少人数で開発から製造・販売までを担う体制のなかで、一人ひとりが抱える作業をどう軽くするかが出発点にありました。
一方、開始時点の受講者の状態には差がありました。Copilot活用スキルの自己評価では、6名中3名が「操作方法が分からず、利用実績がほとんどない」レベル1。AIに触れる頻度は平均で週4.0日、AIを活用している業務数は1人あたり平均2.17件でした。週の大半でAIに触れてはいるものの、用途は翻訳や下書きの作成といった一部にとどまり、業務の中心にはまだ届いていない状態です。
そこで研修の序盤に、6名それぞれが担当業務の棚卸しを行いました。洗い出された業務は27件、週あたりの合計は8,220分(137時間)。内訳を見ると、時間の使われ方には明確な偏りがありました。
業務カテゴリ別の所要時間(上位5件)
| 業務カテゴリ | 週あたりの所要時間 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 資料作成 | 2,310分(38.5時間) | 28.1% |
| 顧客対応 | 1,050分(17.5時間) | 12.8% |
| メール対応 | 750分(12.5時間) | 9.1% |
| 戦略立案 | 600分(10.0時間) | 7.3% |
| 顧客開拓 | 600分(10.0時間) | 7.3% |
上位5カテゴリだけで全体の約65%を占めています。とりわけ資料作成は、提案資料・見積書の作成が営業担当者3名に共通する最大の負担でありながら、棚卸しの時点では担当者全員が「AI未活用」と回答していました。最も重い業務ほど、手つかずのまま残っていたのです。
実施内容 ― Magconn様ならではの取り組み
半年間のプログラムは、少人数の組織で全員の足並みをそろえることと、棚卸しで見えた自社の重い業務に直結させることを軸に設計しました。
- 受講者6名がそろって参加
代表自身も受講者の一人として、全回に参加しました。役職や職種を横断して同じ内容を同じ時間に学ぶことで、「誰かだけが使える」状態を避けることを狙いとしています。 - 全9回を、中間報告で折り返す構成
スタートアップMTG1回、ワークショップ4回、中間報告MTG1回、活用支援MTG3回の全9回を実施。動画学習は全期間にわたって並走させ、学びと実践を往復できる設計としました。 - 棚卸しを起点にしたワーク設計
ワークの題材は、洗い出された27業務のうち上位を占める資料作成・メール対応・データ集計から選定。汎用的な演習ではなく、翌日から同じ手順を自分の業務に使える形に置き換えました。 - Microsoft 365 Copilot に絞った実務適用
Outlook、Excel、PowerPoint、Teams と、すでに全員が日常的に開いているアプリケーションの中でAIを使う形に絞り込みました。新しいツールを増やさないぶん、定着までの距離を短くしています。 - 業務自動化の入口まで到達
終盤の活用支援MTGでは、Office Scripts と Power Automate を扱いました。Excelの定型処理を記録して自動化し、月次のサマリー通知までをつなぐ内容で、完成したコードは全員に配布しています。
生成AI活用の効果
最も大きく動いたのは、受講者自身のスキル認識でした。「操作方法が分からない」というレベル1の3名は、研修を通じて全員がレベル3以上へ移り、レベル1は0名になっています。営業担当の1名は、複数業務で成果を実感しているレベル4まで到達しました。
主要指標の変化(受講者平均)
| 指標 | 変化 | 伸び |
|---|---|---|
| Copilot活用スキル | 1.60 → 3.00 | 約88%増 |
| 週あたりの削減時間 | 3.92時間 → 5.10時間 | 約30%増 |
| AI活用業務数 | 2.17件 → 3.20件 | 約48%増 |
AIで削減できた時間は1人あたり週3.92時間から5.10時間へ、AIを活用している業務数は1人あたり2.17件から3.20件へ増えました。頻度も週4.0日から週5.0日となり、最終回のアンケートでは回答者全員が「週5日」と答えています。特定の日にまとめて使うのではなく、日々の業務のなかにAIが入った状態です。
※ 数値は受講者アンケートの自己申告値です。スキル・削減時間・活用業務数は導入前後の平均で、変化率は(導入後−導入前)÷導入前で算出しています。業務カテゴリ別の所要時間は、受講者が業務棚卸しシートに登録した申告値です。
活用の広がりは、受講者の言葉にも表れています。研修開始時点で知識がまったくなかった受講者からは、次のような声が寄せられました。
「まったく知識のなかったところから、どのように業務へ取り入れていくか研修で知ることができて、すこしづつ自分の業務に取り入れられるようになりました。」
受講者アンケートより
演習の題材を自社の実務に寄せたことも、活用が定着した理由のひとつでした。
「実際の使用方法、活用例を交えてワークショップを行ったことにより、実業務で活用できています。」
受講者アンケートより
さらに、業務の組み立て方そのものが変わったという声もあります。運送会社から届くデータを加工してAIに読み込ませ、取引先ごとの出荷報告メールを一度に作成する——研修で学んだ手順を組み合わせ、自分の担当業務の流れごと作り替えた例です。
「出荷報告メールを運送会社のデータを加工し読み込ませ、一気に取引先ごとにメールを作成してもらっています。」
受講者アンケートより
プロンプトを考えるところでつまずいていた受講者が「そもそものプロンプトもAIが考えてくれる」と気づき、AIに相談しながら進める形へ切り替えた例もありました。操作を覚える段階から、AIを前提に手順を設計する段階へと移りつつあります。
今後の展望
受講者6名が全員レベル3以上に立ったことで、Magconn様の次のテーマは「使える状態」から「使い続けて成果を出す状態」へと移ります。
- 配布済みの自動化コードを実運用へ
Office Scripts と Power Automate で作成したコードは全員に配布済みです。月次サマリーの通知など、繰り返し発生する処理から実際の運用に乗せていくことが次の一歩になります。 - 資料作成への本格的な適用
週2,310分と最も重い資料作成は、提案資料・見積書の作成が中心です。アンケートでも「提案資料・報告資料のスライド作成」を使いこなしたい業務に挙げる声が複数あり、伸びしろが最も大きい領域として残っています。 - データの集計・グラフ化の定着
「最も時間・手間がかかっている作業」として、データの集計・グラフ化・分析を挙げた受講者が最多でした。Copilot in Excel の活用を深めることで、月次レポートの作成時間に直接効いてきます。 - 社内での利用ルールづくり
OEM/ODMで顧客の設計情報を扱う事業の性質上、何をAIに入力してよいかの判断が個人任せになっている状態は避けたいところです。全員が日常的に使うようになった今だからこそ、共通のルールを定める段階に来ています。
半年間の取り組みを通じて、Magconn様は「AIの操作が分からない人がいる会社」から「全員が毎営業日AIを使う会社」へと変わりました。
抜き挿しという当たり前の動作に残っていた不便を、つなぎ方から見直して解いてきた同社。Magnet と Connectivity を組み合わせた社名のとおり、次に手を入れたのは自分たちの仕事のつなぎ目でした。



