年間約1,560時間をAIで削減。創業1933年のパズル・ゲームメーカーに、社内アプリを自作する人材も
株式会社ハナヤマ 様

導入前の課題
- 資料・レポート作成:月次レポートや提案資料など「書く」業務が、業務棚卸しで週30時間を超えていた。白紙から組み立てる作業が、各部署の時間を大きく占めていた
- 活用の二極化:毎日のようにAIを使うメンバーがいる一方、通常業務に追われて手をつけられない受講者もいた。研修序盤ではAIを週0日しか使わない受講者も残っていた
- 照合・整形の手作業:発注書の確認やスプレッドシートでのデータ整形が多く、自動化したいというニーズは高かった。一方で、こうした業務でのAI活用はまだ進んでいなかった
導入後の効果
- 削減時間:AIによる削減時間は、受講者10名の合計で週24.5時間 → 32.5時間に。年間換算で約1,176時間 → 約1,560時間(約33%増)へ広がった
- 活用の広がり:AIを使う業務は10名の合計で62件 → 81件(約31%増)。週0日だった受講者も関数作成などで使い始め、回答者10名全員が業務でAIを使う状態になった
- 自動化と内製:Workspace StudioやNotebookLMで自動化と自社専用化の型を習得。社内の業務ツールを自作し、業務を「スキル」として自動化するメンバーも現れた
株式会社ハナヤマ様では、経理・財務、営業、企画・マーケティング、研究・開発、事務の各職種から集まった社員を対象に、約半年間の生成AI研修「法人リスキリング」を実施しました。アンケートに回答した受講者10名の合計で、AIによる削減時間は年間換算で約1,176時間から約1,560時間へと約33%増加しました。AIを使う業務も、10名の合計で62件から81件に広がっています。
研修の序盤には、毎日AIを使うメンバーとまだ手をつけられないメンバーの差がはっきりありました。そこから、全員が自分の業務でAIを使う段階へ。なかには、業務アプリを自分で作るメンバーも現れました。創業1933年のパズル・ゲームメーカーが、半年間でどのように活用を広げていったのかをご紹介します。
会社紹介

株式会社ハナヤマ様は、1933年創業、東京都千代田区に本社を置くパズルとゲームの専門メーカーです。ファミリーゲーム、立体パズル、ビンゴなどの玩具を昭和初期から製造・販売し、国内だけでなく海外市場にも商品を届けています。千葉県市川市に物流センターとお客様相談センターを構え、物流・OEM、海外での製造販売、パッケージ製造を担うグループ会社とともに事業を展開しています。

同社を代表するのが、はずすパズル「はずる(HUZZLE)」です。ルールは「はずすこと。元に戻すこと。」だけ。世界有数のパズル作家の設計を、同社の精密鋳造技術で形にしたシリーズで、50を超えるデザインが大人向けのパズルとして世界中で親しまれています。ほかにも「かつのう」「ロジカルニュートン」などのシリーズを展開しています。2026年には「日本おもちゃ大賞2026」で2商品が優秀賞を受賞し、経済産業省の「新たな世界を切り開く玩具産業企業20選」にも選ばれました。

掲げるメッセージは「わからない を おもしろく。」。わからないからこそおもしろい、という同社らしい姿勢は、新しい道具である生成AIとの向き合い方にも表れていました。
生成AI導入前の課題感
研修では、職種の異なる社員がそろって受講しました。経理・財務、営業、企画・マーケティング、研究・開発、事務と、日々の業務の中身は人によって大きく違います。そのため、まず受講者それぞれの業務を棚卸しし、どこに時間がかかっているかを洗い出すところから始めました。
棚卸しで挙がった業務は105件、合計で週約192時間にのぼります。なかでも大きかったのが、月次レポートや販売店・問屋向けの提案資料など、文章や資料を「書く」業務です。これらだけで週30時間を超えていました。発注書の確認には週4時間、データの入力・整形には週5時間ほどかかっており、これらの照合・整形業務ではAIはまだほとんど使われていませんでした。
AIの使い方にも差がありました。研修序盤(第1回ワークショップ)の時点で、10名中7名はすでに週4日以上AIを使っていました。一方で、通常業務が忙しく手をつけられず、AIを週0日・0業務と回答した受講者もいます。使っている業務の数にも、人によって大きな開きがありました。いわば、使える人は使い、使えない人は使えないままという二極化です。
実施内容 ― ハナヤマ様ならではの取り組み
約半年間のプログラムは、全員が自分の業務でAIを使えるようになることを軸に、受講者の声に合わせて内容を組み替えながら進めました。
- 動画学習+合同ワークショップ全4回で土台づくり
スタートアップMTGでツールと学習システムの使い方を説明したうえで、10時間以上の動画学習を開始しました。合同ワークショップは全4回で、プロンプトの基礎とファイル活用、Gem(チャットボット)作成、Google Workspace×Geminiを2回扱いました。日常的に使っているGoogleのツールの中で、AIを使えるようにしています。 - 受講者の声を受けて、活用支援MTGの内容を組み替え
中間報告MTGでは、初心者層が情報量と進行スピードについていくのに苦労しているという声が挙がりました。その一方で、スプレッドシートを使う業務が多く、自動化へのニーズが高いことも分かりました。そこで、以降の活用支援MTGはテーマを絞った講義形式に切り替えました。グループ作業の部屋でも、運営側がプロンプトをその都度送り直すようにしています。 - 自社の業務を題材にした3回の活用支援MTG
1回目はGoogle Workspace Studioを使い、問い合わせメールの自動振り分けと、自分の業務の自動化フロー設計に取り組みました。2回目はGeminiで、販売店・問屋向けの新商品提案資料の作成、発注書16件のチェック、受注データの整形と集計の3本をワークにしました。3回目はNotebookLMとGeminiを組み合わせ、自社の資料を根拠に部署ごとの効率化アイデアを探りました。どの回でも「AIは下ごしらえ、事実・数値・最終判断は人」という線引きを共有しています。 - 業務棚卸しとアンケートで変化を追う
研修の前後で、受講者がAIを使っている業務の数、利用頻度、削減できた時間を毎回のアンケートで集めました。回ごとの変化を、中間報告と最終報告で共有しています。
生成AI活用の効果
最も大きく変わったのは、AIで削減できた時間の総量です。アンケートに回答した受講者10名の合計は、研修序盤の週24.5時間から、最終回答では週32.5時間に増えました。年間に換算すると、約1,176時間から約1,560時間への増加です。
AIによる削減時間(受講者10名の合計・年間換算)(受講者アンケート回答値)
| BEFORE | 約1,176時間 |
| AFTER | 約1,560時間 |
| 削減時間の増加率 | 約33% |
| AIを使う業務(10名合計) | 81件 |
| 業務でAIを使う受講者(10名中) | 10名 |
| 年あたりの削減時間 | 約1,560時間(受講者10名の合計 週32.5時間 × 4週 × 12か月) |
受講者全体で、年間換算にして約384時間の上乗せです。削減時間が増えただけでなく、AIを使う業務も10名の合計で62件から81件へ、約31%増えています。
主要KPIの変化(受講者10名の全体)
| 指標 | 変化 | 伸び |
|---|---|---|
| AIを使う業務(10名合計) | 62件 → 81件 | 約31%増 |
| 年間の削減時間(10名合計) | 1,176時間 → 1,560時間 | 約33%増 |
| ワークショップ満足度(平均) | 3.70 → 4.14 | 約12%増 |
ワークショップの満足度は、第2回にいったん3.10まで下がりました。運営を見直した結果、第4回では4.14まで上がり、回答者の86%が5段階で4以上をつけています。
AIを使っている業務の広がり(受講者10名中の人数)
| 業務領域 | 研修序盤 | 最終回答 |
|---|---|---|
| データ分析・表計算 | 4名 | 7名 |
| メール作成・返信 | 5名 | 5名 |
| 議事録・商談記録の作成 | 5名 | 5名 |
| 資料・企画書・提案書の作成 | 4名 | 5名 |
| 画像生成・編集 | 3名 | 4名 |
| 翻訳 | 2名 | 3名 |
最も広がったのはデータ分析・表計算で、4名から7名に増えました。スプレッドシートの関数をAIに作らせる、在庫データの一覧を整える、複数の資料を突き合わせて分析するといった使い方が、営業、事務、研究・開発へと広がっています。メール作成と議事録は、研修序盤からすでに半数が使っていました。ここに資料作成や画像生成、動画作成が加わり、「書く」業務の多くをAIと分担する形ができてきました。
※ 数値は受講者が各回のワークショップ後のアンケートで回答した値です。研修序盤は第1回ワークショップでの回答(未回答の1名は第2回の回答)、最終回答は各受講者の最後の回答を使っています。年間換算は週あたりの削減時間 × 4週 × 12か月で計算したもので、前提が変われば結果も変わります。
アンケートの自由記述にも、こうした変化が表れています。研修序盤にAIを週0日しか使っていなかった受講者は、スプレッドシートを扱う回で次のように書いています。
「文章で入力することで、関数を作成して自動で入力してくれる。」
受講者アンケートより
この受講者は、最終回答では在庫データの一覧を整えるときの関数確認にAIを使い始めていました。ほかの受講者からも、自分の業務に結びつける声が寄せられています。
「スプレッドシートとGeminiを同時に使えるのが業務に役立ちます」
受講者アンケートより
「開発業務内で企画提案書や資料まとめの際、活用できそうだなと感じました。」
受講者アンケートより
さらに一歩進んだ変化もありました。受講者の中には、研修で学んだGeminiの活用をきっかけに、Claude Codeなど別のツールも自分で試し、社内の業務ツールを自作したり、繰り返す業務を「スキル」として登録して自動化したりするメンバーも現れています。研修で身につけたGeminiでの基礎の上に、自分で道具を選んで業務の仕組みごと変えていく段階に入りつつあります。
今後の展望
AIを使える人が社内に広がった今、ハナヤマ様の次のテーマは、個人の工夫を組織の仕組みにしていくことです。
- 推進メンバーのスキルを社内に広げる
推進メンバーが作った業務自動化のスキルを、ほかのメンバーも使えるようにしていきます。ターミナルに不慣れなメンバーにも使いやすいよう、デスクトップアプリ経由など、取っつきやすい形で渡す方法を検討しています。 - スプレッドシート業務の自動化を広げる
研修でニーズが高かったスプレッドシート連携やWorkspace Studioでの自動化を、日々のレポート作成や照合業務に少しずつ組み込んでいきます。 - 活用事例を共有し、全員の活用へ
活用事例の共有を進め、全員が自分の業務でAIを使える状態を目指します。 - ほかのAIツールの活用も視野に
Geminiで身につけた基礎をもとに、Claudeなど、ほかのAIツールの活用も視野に入れています。
約半年間で、生成AIは一部のメンバーだけが使う道具から、10名全員が自分の業務で使う道具になりました。年間換算で約1,560時間という削減時間は、その途中で生まれた成果のひとつです。

「わからない を おもしろく。」——パズルとゲームで、わからないことを楽しむ文化を届けてきたハナヤマ様。生成AIという新しい「わからない」も、同社はおもしろがりながら自分たちの道具にしつつあります。



