毎月2〜3日の突合が数十分になった事例も。EC構築のIT企業で、回答者の96.7%が週3日以上AIを活用
株式会社コマースニジュウイチ 様

導入前の課題
- 定型の確認・資料作成:業務棚卸では資料・書類作成が全体の約2割を占めて最も大きく、ある受講者は毎月の数値の突合と管理表の更新に2〜3日をかけていた
- AI活用の定着:研修開始時点では、会社として業務で使える環境を整えている段階で、使い方は人によって異なっていた。開始時のアンケートでAIを活用している業務の数は、回答59名の平均で2.58件だった
- 知見の共有と情報の確かさ:業務の知見が一人ひとりの手元にとどまりやすく、7月のアンケートでは「生成された情報の正確性・信頼性への懸念」が活用の障壁として最も多く挙がっていた
導入後の効果
- 定型の確認・資料作成:ある受講者の事例では、AIに表を作成させる形に変えたことで、毎月2〜3日かけていた突合と管理表の更新が数十分に。振り返りでは回答60名中34名が、資料・書類作成に当たる業務をAIに任せていると記述した
- AI活用の定着:プログラム最終回の振り返りでは、回答60名のうち58名(96.7%)が週3日以上AIを使っていると回答。活用業務数は回答60名の平均で6.32件だった
- 知見の共有と情報の確かさ:GPTsで業務の知見を共有・横展開しやすくなったという声が寄せられた。出典を示すよう指示する使い方を身につけた方もおり、定例の会話に「AIに聞いてみました」という発言が自然に出るようになった
株式会社コマースニジュウイチ様では、2026年4月から9月までの提供期間に、67名を対象とした生成AI研修「法人リスキリング」を実施しました。使用ツールはChatGPTです。4月9日(木)から8月7日(金)にかけて全9回のプログラムを行い、最終回の振り返りでは、回答60名のうち58名(96.7%)が週3日以上AIを使っていると答えています。最終報告ミーティングでは、毎月2〜3日かけていた数値の突合と管理表の更新が数十分で終わるようになった事例も共有されました。
研修が始まった4月は、会社として業務で使える環境を整えていく段階でした。そこから数か月で、部内の定例に「AIに聞いてみました」という言葉が自然に出てくるようになります。ECシステムを手がけるIT企業が、どのように活用を広げていったのかをご紹介します。
会社紹介

株式会社コマースニジュウイチ様(略称:コマース21)は、1999年12月に設立された、東京都港区西新橋に本社を置くIT企業です。創業後大規模EC向けシステムを独自開発し、ECシステムの構築と運用を行なうSIer企業として、国内大手企業を中心にECビジネスを支えてきました。
近年はSI事業にとどまらずコンサルティング事業に着手し、クライアント企業と共に消費者に対して、価値の創出を徹底的に重視したバリューチェーンに向き合い、社会への価値の創出に挑戦しています。

同社の強みとして掲げられているのが、データを起点に顧客との関係を深める「ロイヤルカスタマーDXソリューション」です。公式サイトでは「データ次第で価値は創れる。」という言葉が掲げられています。

ビジョンは「情報から生みだされる価値で世の中を満たす」。公式サイトでは、その意味を「情報からデータを生み出し、データベースから価値ある体験を創る。」と説明しています。提供価値の一つには「『作業』で終わらせない」が掲げられています。今回の研修には、製品開発、管理・人事・情報システム、企画営業、品質管理など、幅広い部署の社員が参加しました。
生成AI導入前の課題感
研修の入口では、受講者一人ひとりが自分の業務を書き出す業務棚卸を行いました。66名分・14カテゴリの業務を集計すると、最も時間を占めていたのは資料・書類作成で、全体の約20%。続いて勉強・情報収集(約14%)、システムやデザインの開発・制作(約12%)、社内の定例会議(約10%)、メール・メッセージ対応(約8%)が並びました。上位3カテゴリだけで全体の約46%にのぼります。
つくる・調べる・まとめるといった作業が、業務時間の大きな部分を占めていたことになります。ある受講者は、毎月の数値の突合と管理表の更新に、手作業で2〜3日をかけていました。
AIを使う環境そのものも、研修と並行して整えていく段階でした。会社としてChatGPTのビジネス向けアカウントを正式に配布したことで、安心して使い始められるようになった方もいたと、ご担当者から伺っています。研修開始時のアンケートでは、AIを活用している業務の数は回答59名の平均で2.58件。使い方も、検索の延長やメール文面の作成など、人によってさまざまでした。
実施内容 ― 株式会社コマースニジュウイチ様ならではの取り組み
- 全9回のプログラム
2026年4月9日(木)のスタートアップミーティングから、ワークショップ全4回、中間報告を挟んで活用支援ミーティング2回、8月7日(金)のアフターフォローミーティングまで。受講者は67名で、グループに分かれて業務棚卸を進めながら受講しました。8月28日(金)にはご担当者向けの最終報告ミーティングを行い、9月末までは動画学習とチャットでの質問対応を続けています。 - 業務棚卸で見えた重い業務に、対応するワークを実施
ワークショップでは、議事録とメールの作成、GPTsによる定型業務のチャットボット化、Excelでの表の作成、資料作成とCanvas、Deep Researchによる調査などを扱いました。棚卸で時間が大きかった資料作成・情報収集・会議・メール対応の、いずれにも対応するワークを行っています。 - 定期業務と「曖昧な相談」を題材にした活用支援
活用支援ミーティング①では、毎週・毎月の確認や振り返りをChatGPTに促してもらうスケジュール機能と、曖昧な相談を確認質問・改善案・判断材料に整理するワークを扱いました。技術系・管理系など職種ごとのサンプルを用意し、自分の業務に置き換えて試せる形にしています。 - エンジニアの多い組織に合わせたCodexのワーク
システム開発に携わる社員が多いことから、活用支援ミーティング②では最新情報と質疑応答に加え、ChatGPTとCodexの違いや、データ集計・文書のとりまとめ・コードの修正をCodexで行うミニワークを取り入れました。アフターフォローミーティングでは、Codexで営業の提案資料をつくる流れを実演しています。 - 受講者の声からテーマを組み立てる
アンケートで集めた「今後取り上げてほしいテーマ」を、活用支援ミーティング②の内容に反映しました。受講者からは、毎回共有される最新ニュースや新機能の紹介が、いち早く機能に触れるきっかけになったという声も寄せられています。
生成AI活用の効果
最終報告ミーティングで共有された事例のうち、変化がとりわけ大きかったのは、ある受講者の毎月の数値の突合と管理表の更新でした。これまで手作業で2〜3日かけていた作業を、AIに表を作成させる形に全面的に変更。同じ作業が数十分で終わるようになりました。浮いた時間で、これまで手が回らなかった業務にも取り組めるようになったといいます。
ある受講者の事例 毎月の数値の突合・管理表の更新(最終報告ミーティングでご担当者が共有された値)
| BEFORE | 毎月2〜3日 |
| AFTER | 数十分 |
| 週3日以上AIを使う方(回答60名中58名) | 96.7% |
| 自己評価レベル3以上(回答60名中59名) | 98.3% |
| AIを活用している業務の数(回答60名の平均) | 6.32件 |
| 週あたり削減時間(自己申告・上限を10時間として集計) | 7.27時間(回答60名の平均) |
利用も日常のものになりました。8月7日(金)の振り返りでは、回答60名のうち58名(96.7%)が週3日以上AIを使い、うち45名は週5日使っていると答えています。自己評価では、59名(98.3%)がレベル3「限定的に使える」以上を、うち47名(78.3%)がレベル4「業務効率化レベルで活用している」を選びました。
AIを活用している業務の数は、開始時のアンケート(回答59名)の平均2.58件に対し、最終回の振り返り(回答60名)の平均は6.32件でした。
※ 数値は受講者の自己申告値です。活用業務数は、開始時(2026年4月9日(木)のアンケート・回答59名)と最終時点(8月7日(金)の振り返り・回答60名)の各時点の回答者平均の比較で、回答者は同一ではありません。自己評価のレベルは受講者自身が選択肢から選んだものです。週あたり削減時間は、10時間を超える回答を10時間として集計した値です。
業務棚卸の上位業務で進んだAI活用
| 4月の棚卸で時間が大きかった業務 | 全体に占める割合 | AIに任せている業務として挙げた方 |
|---|---|---|
| 資料・書類作成 | 約20% | 60名中34名 |
| 勉強・情報収集 | 約14% | 60名中22名 |
| 社内の会議(定例) | 約10% | 60名中18名 |
| メール・メッセージ対応 | 約8% | 60名中19名 |
※ 右列は、振り返りの設問「4月に棚卸しした業務のうち、今AIに任せられているもの(複数可)」の自由記述を、キーワードで業務領域に分類して数えた人数です。1人が複数の領域を挙げている場合は、それぞれに数えています。その業務の時間が同じ割合で減ったという意味ではありません。社内の会議は参加・運営を含む分類で、挙げられたのは主に議事録の作成です。業務棚卸は2026年4月時点・66名分の集計です。
棚卸で時間が大きかった上位の業務で、AIに任せる動きが広がりました。とくに資料・書類作成は、回答者の半数を超える方が挙げています。専門業務でも、調査から資料作成までをAIが担うようになり作業のスピードが上がったという声や、コードレビューや設計書の作成に使っているという声が寄せられました。
導入前と導入後で、業務の進め方を比べると次のようになります。
導入前|確認と作成に手が取られる
- 毎月の数値の突合と管理表の更新を、手作業で進める(2〜3日)
- 調査資料は、多くの資料やソースを自分で確認してから作成する
- 業務の知見は一人ひとりの手元にあり、共有に手間がかかる
- 分からないことは、まず自分で検索して調べる
導入後|「作業」で終わらせない時間が生まれる
- AIに表を作成させる形に変え、同じ作業が数十分に(ある受講者の事例)
- 調査から資料作成までAIが担い、スピードが上がり抜け漏れが減ったと感じている方も
- GPTsで知見を共有し、横展開が早くなったという声も
- まずAIに聞き、出典と最終確認は自分で行う
振り返りシートの自由記述には、こうした変化が言葉としても表れています。まず、AIとの付き合い方そのものが変わったという声です。
「生成AI活用の自身の業務へのメリットを体感できたことで、AI自体への認識が何か便利なモノから活用すべきツールへと変化しました。気づいたら日常的に利用するようになっており、自分でも驚いています。」
研修の振り返りシートより
使うことが日常になると、個人の工夫が組織の資産に変わり始めます。GPTsを使った知見の共有について、次のような声がありました。
「いままで各個人のナレッジに依存、アウトプットできていなかった面も、作成が手軽なGPTs活用によりナレッジの共有と横展開が各段に早くなりました。」
研修の振り返りシートより
そして、使う量が増えるほど大切になるのが、AIとの距離の取り方です。
「また、出典元の所在や最終確認は人間が行う意識もより強まり、AIを信じすぎず選択肢の1つとして捉えられるようになりました。」
研修の振り返りシートより
最終報告ミーティングでも、情報の出典を示すようプロンプトに入れる使い方が研修を通じて身についたこと、相談を受ける側が「まず自分で考え、ChatGPTに聞いたうえで持ってきてほしい」と言えるようになったことが共有されました。AIを使うかどうかではなく、どう確かめながら使うかが、社内の共通の話題になり始めています。
今後の展望
振り返りに回答した方のほとんどが日常的にAIを使うようになった今、次の論点は、個人の活用を部署や会社全体の仕組みにつなげることです。最終報告では、次のような論点を共有しています。
- 情報の確かさを担保する使い方の共有
7月のアンケートでは、活用の障壁として「生成された情報の正確性・信頼性への懸念」が最も多く挙がりました。ファクトチェックの進め方には人による違いが残っているため、確かめ方の型を社内で揃えていくことが考えられます。 - 活用の範囲と運用ルールの整備
AIを使う業務の範囲や、ほかのツールと組み合わせる際の運用をどう定めるか。活用が広がった今だからこそ、ルールで支える仕組みづくりが次の論点のひとつです。 - ツール連携・自動化と開発への展開
受講者が次に深めたい領域としては、ツール連携・自動化と、Codexなどを使った開発・エンジニアリングが多く挙がりました。汎用的な使い方が定着したからこそ、より実践的で技術寄りの活用へ関心が移っています。
半年間の取り組みを通じて、生成AIを「試す」段階から「日常業務で使う」段階へ進んだ株式会社コマースニジュウイチ様。毎月2〜3日かかっていた突合作業が数十分になった事例や、振り返りの回答者の96.7%が週3日以上AIを使うようになったことは、その過程で生まれた成果のひとつです。
「情報から生みだされる価値で世の中を満たす」——データから価値を生み出す仕事を日々手がける同社にとって、AIは「作業」を減らし、考える時間を取り戻すための新しい道具になりつつあります。



