チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

今回は、Googleが2025年7月24日に発表した新しいAIツール「Opal」が日本でも使用可能になったので、実際に使ってみた感想と詳細な使い方を解説していきます。DifyやN8nといったワークフロー型AIツールの独壇場だった市場に、Googleが満を持して参入してきました。しかも完全無料で使えるという衝撃的な内容です。

この記事では、実際にOpalを触ってみた上で分かった機能や特徴、そして他のツールとの違いまで、企業でのAI導入を検討されている方に向けて詳しく解説します。

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Opalとは?Googleが公開したノーコードAIツールの正体

出典:公式サイト

Opalの基本概要(提供国・公開日・無料利用の現状)

Opalは、Google Labsが2025年7月24日にリリースした試験運用版のAIミニアプリ構築ツールです。当初はアメリカ限定で公開されましたが、2025年10月7日のアップデートで提供国が大幅に拡大されました。

最大の魅力は、完全無料で利用できるという点です。Googleアカウントさえあれば、誰でもすぐにAIアプリの開発を始められます。公式サイトからアクセスするだけで、コーディング不要で高度なAIワークフローを構築できます。

Opalの特徴と位置づけ(ワークフロー型AIツールの中での立ち位置)

Opalは、「ビジュアルワークフロー構築ツール」というカテゴリに属します。これは、複数のAI処理を連鎖させて実行するAIアプリを、プログラミングなしで作れるツールです。

従来のツールとの最大の違い

特徴OpalDify/n8n
ノード生成AIが自動生成手動で配置*
設定難易度自然言語で指示パラメータ手動設定
対象ユーザー初心者〜中級者中級者〜上級者
API設定不要(Google統合)多くの場合必要

私がOpalを触って最も驚いたのは、「こういうアプリを作りたい」と日本語で説明するだけで、AIが自動的にワークフローを設計してくれるという点です。DifyやN8nでは、ノードを一つひとつ手動で配置し、接続していく必要がありましたが、Opalでは全てがAI任せでOKなんです。

* 2025/10/13にn8nが自然言語の指示からワークフローを自動生成する機能のBeta版を実装済み

Opalの3つの特徴:自然言語×ビジュアル編集×共有

①自然言語でアプリを構築──文章を打つだけでノードが生成

Opalの最大の特徴は、自然言語による開発です。例えば、「YouTubeの動画からクイズを作成するアプリ」が欲しいと思ったら、まさにその通りに入力するだけです。

実際の指示例

YouTubeの動画URLを受け取って、その内容からクイズを5問作成し、回答と解説も生成するアプリを作成して下さい。

この一文を入力すると、Opalは自動的に以下のようなノード構成を作成します。

  • User Input: ユーザーからYouTube URLを受け取る
  • Get Video Transcript: 動画の文字起こしを取得
  • Generate Quiz: Gemini 2.5 Flashでクイズを生成
  • Format Output: 結果を整形して表示

従来のツールでは、これらのノードを全て手動で配置し、それぞれのパラメータ設定、さらにAPI認証をする必要もありました。Opalなら、作業時間が10分の1以下になります。

②ビジュアルエディタで直感的に操作(User Input / Generate / Output)

AIが生成したワークフローは、ノードベースのビジュアルエディタで表示されます。主なノードタイプは以下の通りです。

基本ノードの種類

  • User Input: ユーザーからの入力を受け取る
  • Get Webpage: Webページのコンテンツをスクレイピング
  • Search Web: Web検索を実行
  • Generate: Geminiモデルでテキスト生成
  • Output: 結果を表示

各ノードをクリックすると、プロンプトの内容やモデルの設定を細かく調整できます。Opalは自然言語の指示から自動的にワークフローとノード設定を生成するため、多くの場合そのまま実行可能な状態になっています。

③ワンクリックでアプリを共有(Googleアカウント連携)

完成したアプリは、共有URLを発行するだけで他の人に使ってもらえます

共有機能の特徴

  • アクセス権限の設定: 特定のGoogleアカウントのみ、または誰でもアクセス可能
  • 実行回数の制限: なし(2025年10月時点では無制限)
  • 編集権限: 閲覧のみ、または編集可能を選択可能

企業内でAIツールを共有したい場合、この機能は非常に便利です。例えば、マーケティングチームで使う「競合分析レポート自動生成ツール」を作って、チーム全員に共有する、といった使い方ができます。

AIが自動でノード構成を作る仕組み(クイズアプリの例)

実際にOpalのギャラリーには、「Book Recs」「Quiz Generator」など、すぐに使えるサンプルアプリが用意されています。これらをリミックス(カスタマイズ)することで、さらに学習を加速できます。

例えば公式のクイズアプリを見ると

  1. 動画URLを入力
  2. 文字起こしを取得
  3. Gemini 2.5 Proで質問を生成
  4. 選択肢と正解を整形
  5. 見やすいフォーマットで出力

この5ステップが、全て自動的に最適化されたプロンプトとモデル設定で実装されているのです。

Opalでできること一覧(AIアセット連携の全貌)

Google製AIのフル活用(Gemini, Imagen, Veo, 音声AIなど)

Opalの真の強みは、Googleの全AIエコシステムに直接アクセスできるという点です。API設定なしで以下のモデルを利用できます。

利用可能なAIモデル

AIモデル用途特徴
Gemini 2.5 Flashテキスト生成・分析高速・低コスト
Gemini 2.5 Pro高度な推論複雑なタスク向け
Imagen 4 / 4 Fast / 4 Ultra画像生成高品質な画像作成
Veo 3.1 / Veo 3.1 Fast動画生成AIによる動画制作
Text-to-Speech音声合成自然な音声生成

特にGemini 2.5 Flashは、最新のマルチモーダルモデルで、テキストだけでなく画像や音声も理解できます。使用できる上限はPro/Ultra等の各プランの枠に依存します。

API設定不要で複数AIを統合利用できる強み

通常、DifyやN8nで複数のAIサービスを使おうとすると、以下のような複雑な手順が必要でした。

  1. OpenAI、Anthropic、GoogleなどのAPIキーを取得
  2. 各サービスで課金設定
  3. APIキーをツールに設定
  4. 利用量の管理

でもOpalなら、Googleアカウントにログインするだけで全てのAIが使えるんです。これにより、導入時の障壁は大きく下がるでしょう。

スライド・ドキュメント・ウェブサイトまで生成可能

Opalは単なるテキスト生成ツールではありません。以下のような多くの形式でのアウトプットが可能です。

  • Googleスライド: プレゼンテーション資料
  • Googleドキュメント: レポート・提案書
  • HTML/CSS: シンプルなWebページ
  • 画像: Imagenによる画像生成
  • 動画: Veoによる短尺動画

実際、ギャラリーには「Slide Creator」というアプリがあり、トピックを入力するだけで、構成から画像挿入まで全自動でスライドを作成してくれます。

Opalの実践デモ:自然言語でスライドを自動生成してみた

概要:テーマを入力するだけでプレゼン資料が完成

ここからは、私が実際にOpalで作成したスライド自動生成アプリのデモをご紹介します。このデモの最大のポイントは、自然言語でアプリそのものを作れるという点です。

まずOpalの「Create New」から、以下のように日本語で指示を出しました

入力した指示文

ユーザーがいろんな情報を入力して、ウェブ検索とかしつつ、Googleスライドを作る、そんなアプリを作って

たったこれだけです。プログラミングもノードの配置も不要。この一文を入力してすぐに、Opalが自動的にワークフローを設計してくれました

自動生成されたワークフローの構造

Opalが作成したアプリのワークフロー構成は以下の通りです。

[User Input: プレゼンテーマ入力]
    ↓
[Deep Research: 収集した情報を深く分析]
    ↓
[Generate Presentation: スライドを自動生成]
    ↓
[Save to Google Slides: Google Slideに保存]

驚くべきことに、Opalは私の指示から「Deep Research(深い調査)」機能まで自動的に組み込んでくれました。これにより、単なる情報の羅列ではなく、しっかりとリサーチされた内容のスライドが生成される仕組みになっています。

実際にスライドを生成:「Googleの最新生成AI」をテーマに

完成したアプリに、実際に「Googleの最新生成AI」というテーマを入力してみました。すると、先ほどのプロセスを実行し、以下のようなスライドを生成してくれました。

処理時間は約1〜2分程度。待っている間、画面上でリアルタイムに「現在どのステップを処理中か」が表示されるため、安心して待つことができます。

生成されたスライドの品質

正直なところ、デザインのクオリティはビジネスでは全く使えないレベルです。凝ったデザインや企業ブランディングを反映したビジュアルではありません。しかし、内容は最新情報をしっかりと反映しており、モデル名や機能説明も正確でした。

他ツールとの比較(Opal / Dify / n8n / Agent Builder)

ワークフロー型AIツールは現在、群雄割拠の状態です。しかし、これらのツールはそれぞれ異なる立ち位置にあります。

ツールの専門性と使いやすさの段階構造

ワークフロー型AIツールは、専門性のレベルで3つの階層に分かれます。

【専門性の階層】

レベルツール対象者できること
上級Dify / n8nエンジニア・開発者RAG構築、データベース連携、400以上の外部API連携、セルフホスト
中級Agent Builderプロンプト経験者GPT-4o/o1による高度な推論、コード実行、カスタムGPT拡張
初級Opal非エンジニア・初心者自然言語でAIアプリ作成、Google AI統合、API設定不要

機能面でいうと、「Opalが1としたら、Difyは100ぐらいできる」というイメージを持っていただけたら良いと思います。一方で、使いやすさでは完全に逆転します。Opalは日本語で指示するだけ、Difyは技術知識と細かい設定が必要です。

各ツールの特徴

Dify:オープンソースのLLMアプリ開発プラットフォーム。RAG機能、エージェント構築、複雑なナレッジベースに強い。本格的なプロダクション開発向け。

n8n:400以上の外部サービスと連携できる自動化ツール。Slack/Notion/Google Workspaceなど既存ツール間の連携が得意。スケジュール実行やWebhook対応。

Agent Builder:OpenAIの新ツール(2025年10月発表)。GPT-5の高度な推論を活用。プロンプト設計が中心で、ChatGPTユーザーなら馴染みやすい。

Opal:完全ノーコード。自然言語で指示するだけでワークフローを自動生成。GoogleのGemini、Imagen、Veoを統合。初心者でもすぐ使える。

置き換えではなく使い分け

「Opalが登場してもDifyやn8nはなくならない」というのが重要なポイントです。それぞれのツールは全く異なるニーズに応えているため、競合ではなく使い分けの関係です。

  • アイデア検証:OpalやAgent Builderで素早くプロトタイプ
  • 本格開発:Difyやn8nで実装

Opalは「AI活用の入り口」として、これまでハードルが高かった人たちにAIアプリ開発の扉を開く役割を担っています。

セキュリティとデータ取り扱い:導入前に知るべきポイント

Opalで入力したデータの扱い(公式見解)

企業導入で最も重要なのがデータのプライバシーです。Googleの公式FAQに明記されている内容を確認しましょう。

Opalのデータ利用ポリシー

項目公式見解
AI学習への利用利用されない
プロンプトと出力トレーニングに使用されない
人間によるレビューある
データ保存期間最大18ヶ月(Google Labsの標準ポリシー)
削除方法履歴機能をオフにするか、ライブラリから削除可能

重要な注意事項(公式より)

“Please don’t enter confidential information in your conversations or interactions or any data you wouldn’t want a reviewer to see”

つまり、機密情報はOpalに入力しないでくださいというのがGoogleの公式推奨です。

適用されるプライバシーポリシー

Opalには以下のポリシーが適用されます。

  1. Googleプライバシーポリシー – Google全サービス共通
  2. Google利用規約 – サービス利用の基本条件
  3. Google Labs FXプライバシー通知 – 実験的ツールのデータ取り扱い

共有機能のアクセス制御

Opalで作成したアプリを共有する際は、適切なセキュリティ設定をしましょう。

  • 特定のGoogleアカウントのみ: 社内メンバー限定で共有
  • リンクを知っている全員: パブリック公開(注意が必要)

現時点では、エンタープライズ向けの高度なアクセス管理機能(監査ログ、詳細な権限設定など)はありません。Google Workspace環境との統合が進めば、より厳密な管理が可能になるでしょう。

まとめ:Opalは誰におすすめ?

私自身、DifyもN8nも使ってきましたが、「アイデアから形にするまでのスピード」では、Opalが圧倒的だと感じました。特に、会議中に「こんなツールあったらいいよね」という話が出たときに、その場で3分程度で作って見せられるのは、本当に革命的です。

Googleは今後も機能拡張を続けると発表しており、特にデバッグ機能の強化やパフォーマンス改善が進んでいます。AI開発の第一歩として、ぜひOpalを試してみてください。

デジライズでは、生成AIの導入支援を行っています。個別のミーティングで業務内容をヒアリングし、現場で本当に使えるAI活用法を一緒に考えるところからスタートします。導入後の研修や活用支援まで一貫して伴走いたしますので、AI担当者がいない企業様でもご安心ください。

まずは情報収集からでも歓迎です。
導入の流れや支援内容をまとめた資料をこちらからご覧いただけます

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。