チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

2025年12月18日、Googleから「Gemini 3 Flash」がリリースされました。Gemini 3 Flashは、Gemini 3 Pro並みの推論能力を、3倍の処理速度で、しかも低コストで実現しています。

この記事では、Gemini 3 Flashの基本機能から料金、Proとの使い分けなど、網羅的に説明しております。最後まで読めば、Gemini 3 をうまく使えるようになるでしょう。


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Gemini 3 Flashとは?

何が変わった?「速い」と「賢い」の両立

Gemini 3 Flashは、Googleが開発したGemini 3モデルファミリーの最新モデルです。その最大の特徴は「最先端の知能を、圧倒的なスピードと手頃なコストで提供する」という点にあります。

従来のAIモデルでは、「速度」と「推論品質」はトレードオフの関係にありました。速いモデルは精度が犠牲になり、賢いモデルは遅くてコストがかかる。この壁を、Gemini 3 Flashは突破しています。

具体的には、主要なベンチマークで以下のような成果を示しています。

ベンチマークGemini 3 Flash特徴
GPQA Diamond90.4%博士号レベルの推論能力
MMMU Pro81.2%Gemini 3 Proと同等のマルチモーダル性能
SWE-bench Verified78%エージェントコーディング能力(Gemini 3 Proを上回る)
Humanity’s Last Exam33.7%(ツール未使用)高度な知識・推論テスト

出典:DeepMind

注目すべきは、SWE-bench(ソフトウェアエンジニアリングのベンチマーク)で78%という高スコアを達成し、これはGemini 3 Proをも上回っている点です。開発者にとって、エージェントによるコーディング作業の効率化が大きく期待できます。

さらに、Artificial Analysisによる測定では、Gemini 2.5 Proを上回る性能を維持しながら、3倍の処理速度を実現。日常的なタスクでは、Gemini 2.5 Proより平均30%少ないトークン消費量でより高いパフォーマンスを発揮するとGoogleは発表しています。

どんな用途に向く?

Gemini 3 Flashが特に力を発揮する用途を整理しましょう。

高頻度タスクの処理

  • 大量のドキュメント要約
  • 繰り返し行われる質問への回答
  • リアルタイムでの情報抽出

軽量エージェント・自動化ワークフロー

  • コードの反復的な開発・デバッグ
  • マルチステップの複雑なタスク実行
  • A/Bテストの自動実行

マルチモーダル処理

  • 動画・画像の分析と理解
  • 視覚的なQ&A
  • データ抽出と構造化

反復的な開発プロセスに最適化されているため、コーディングエージェントの構築や、高頻度なワークフローでの推論に向いています。

どこで使える?(アプリ / AI Mode / API / Vertex)

Gemini 3 Flashを使う方法は複数あります。あなたの立場や目的に応じて、最適な導線を選びましょう。

Geminiアプリ

最も手軽に使えるのがGeminiアプリです。デスクトップ版(gemini.google.com)、モバイルアプリの両方で利用可能です。

Gemini 3 Flashはアプリのデフォルトモデルとして設定されており、すべてのGeminiユーザーが無料で利用できます。日々のタスクの質が向上するのはもちろん、動画や画像を読み込ませて数秒で実用的な計画を立てるといった使い方も可能です。

Google検索 AI Mode

Gemini 3 Flashは、Google検索の「AI Mode」におけるデフォルトモデルとしても順次展開されています。検索クエリのニュアンスを汲み取り、ウェブ上のリアルタイム情報やローカル情報を引用しながら、包括的な回答を提示します。

調査と実行を同時に行えるため、複雑な目標(旅行計画、難解な概念の学習など)に取り組む際に真価を発揮します。

開発者:AI Studio / Gemini API

開発者の方は、Google AI Studioから直接アクセスできます。また、以下の開発者向けツールからもアクセス可能です。

  • Gemini CLI: コマンドラインから直接利用
  • Android Studio: アプリ開発に統合
  • Google Antigravity: 新しいエージェント開発プラットフォーム

企業:Vertex AI

企業向けには、Vertex AIおよびGemini Enterpriseを通じて提供されています。

Vertex AIを選ぶ理由は主に以下の通りです。

  • エンタープライズグレードのセキュリティ・コンプライアンス
  • IAM(Identity and Access Management)による権限管理
  • VPC-SC(Virtual Private Cloud Service Controls)によるデータ保護
  • 監査ログの取得・管理

特に、SOC 1/2/3、ISO 27001/27017/27018/27701/42001などの認証を取得しており、FedRAMP High認証も取得済みです。HIPAA準拠のワークロードにも対応しています。

料金・仕様まとめ

API料金

Gemini 3 Flashの料金体系は以下の通りです。

項目料金
入力(テキスト)100万トークンあたり $0.50
出力(テキスト)100万トークンあたり $3.00
音声入力100万トークンあたり $1.00(据え置き)

これはGemini 3 Proと比較すると約4分の1のコストです。参考までに、Gemini 3 Proは入力$2 / 出力$12(200kトークン以下)、200kトークン超の場合は入力$4/出力$18となっています。

コンテキスト上限・出力上限・モデルID

項目スペック
モデルIDgemini-3-flash-preview
入力コンテキストウィンドウ100万トークン
出力上限64,000トークン
ナレッジカットオフ2025年1月

100万トークンのコンテキストウィンドウは、書籍1冊分以上のテキストを一度に処理できる容量です。長い文書や複数の資料を横断的に分析するタスクに対応できます。

thinking_levelとは(速さ・品質・コストの調整ノブ)

Gemini 3では、新たに thinking_level というパラメータが導入されています。これは、モデルがレスポンスを生成する前の内部推論プロセスの最大深度を制御するものです。

thinking_level用途特徴
minimal簡単な指示、チャットVertex AIのみで利用可能。
low簡単な指示、チャット、高スループットレイテンシとコストを最小限に抑える
medium(現在未サポート)
high(デフォルト)複雑な推論タスク推論の深さを最大化。応答に時間がかかる場合も

thinking_levelが指定されていない場合、デフォルトでhighになります。単純なタスクで速さを優先したい場合はlowを指定することで、応答速度とコストを最適化できます。

from google import genai
from google.genai import types

client = genai.Client()

response = client.models.generate_content(
    model="gemini-3-flash-preview",
    contents="今日の天気は?",
    config=types.GenerateContentConfig(
        thinking_config=types.ThinkingConfig(thinking_level="low")
    ),
)

重要な注意点: 同じリクエストでthinking_levelと以前のthinking_budgetパラメータの両方を使用することはできません。400エラーが返されます。


【比較検証】FlashとProでWebサイト制作をさせてみた

ここからは、実際にGemini 3 FlashとGemini 3 Proを使って同じタスクをさせ、その挙動と成果物を比較した検証結果をお見せします。

使用プロンプト(固定)

比較を公平にするため、以下の超簡単なプロンプトを両モデルに送信しました。

「おしゃれなwebサイトを作って」

生成結果の比較

▼比較動画の様子

左画面が「Gemini 3 Flash」、右画面が「Gemini 3 Pro」です。

Flashは入力直後からコード生成を開始し、猛烈なスピードで記述が進みます。一方、Proは思考プロセス(Thinking)が挟まるため、初動に時間がかかりました。

評価軸Gemini 3 FlashGemini 3 Pro
生成されたサイト「STUDIO.X」
シンプルで洗練されたデザインエージェンシー風のサイト。
「木漏れ日 (KOMOREBI)」
コーヒーロースターのサイト。雰囲気があり、日本語のフォント選びや画像選定がおしゃれ。
デザイン品質実用的でモダンな構成。「普通にありそう」なレベルで、ビジネス用途として十分なクオリティ。Flashよりもおしゃれ」という評価。日本的な情緒(和モダン)を理解した、凝ったデザインが出力された。
初動と速度爆速。 約30秒程度でプレビューまで完了。遅い。 Flashが完成した時点でもまだコード生成中だった。
ベンチマークとのギャップ今回の「おしゃれ」という曖昧な指示においては、Proの方がデザイン性が高かった。出力結果の美的センスや日本語のニュアンス理解においてはProに軍配が上がった。

速度比較・所感

項目Gemini 3 FlashGemini 3 Pro
完了までの体感圧倒的に速い
200行近いコードを一瞬で書き上げる。待ち時間をほぼ感じさせない。
じっくり待つ必要がある
思考プロセス+生成時間で、Flashの数倍の時間がかかる印象。

所感

Gemini 3 Flashの「待ち時間を感じさせない速度」が際立っていました。Flashが完成してプレビューが表示されている段階で、Proはまだ一生懸命コードを書いている状態でした。

一方で、成果物のテイスト(おしゃれさ)に関しては、Proの方が情緒的なサイトを生成しており、「単純なコーディング能力(Flashが高い)」と「センス・文脈理解(Proが高い)」の違いが浮き彫りになりました。

結論:どっちを選ぶ?(タスク別の使い分け)

タスクおすすめモデル理由
プロトタイプ作成・構造作りGemini 3 Flashとにかく速い。アイデアを即座に形にしたい場合や、ベースとなるコードを大量に書きたい場合に最適。
デザイン・世界観の構築Gemini 3 Pro時間はかかるが、曖昧なニュアンス(「おしゃれ」「和風」など)を汲み取った、質の高いアウトプットが期待できる。
日常的な業務・ツール作成Gemini 3 Flashコストパフォーマンスと応答速度が圧倒的なため、普段使いやスライド生成などのタスクに最適。

Geminiのセキュリティ

ここでは、Geminiを安全に扱う方法を詳しく解説します。

使い方によって”データの扱い”がまったく違う

Geminiを安心して使うために、最初に押さえておくべきことがあります。それは、どこでGeminiを使うかによって、あなたが入力したデータの扱われ方がまったく違うという点です。

「Geminiに入力した内容は、AIの学習に使われるの?」「Googleの社員に見られることはあるの?」──こうした不安を持つ方は多いと思います。結論から言えば、使い方を選べば、学習にも使われず、人に見られることもありません

使い方AIの学習に使われる?人に見られる可能性は?
Google Workspace経由使われないない(安全上の理由を除く)
Gemini API(有料版)使われないない
Gemini API(無料版)/ AI Studio使われる可能性ありある
個人向けGeminiアプリ設定による設定による

法人で業務利用するなら、Google Workspace経由有料版のAPIを選ぶのが鉄則です。

個人向けGeminiアプリの場合

gemini.google.comやスマホアプリで使う「個人向けGeminiアプリ」では、設定によってデータの扱いが変わります

デフォルトでは「Geminiアプリのアクティビティ」がオンになっており、入力内容や回答が保存されます。保存されたデータはGoogleのサービス改善に使われることがあり、その過程で人間が内容を確認する場合もあります。

設定でオフにすると、新しい会話は最大72時間だけ保存され、その後削除されます。ただし、一部機能が使えなくなることもあるので、プライバシーと利便性のバランスを考えて選んでください。業務利用なら、次に説明するWorkspace経由がおすすめです。

Google Workspace経由の場合(法人におすすめ)

法人利用で最も安心なのが、Google Workspace経由でGeminiを使う方法です。

Workspace経由でGeminiを使うと、入力した内容や生成された回答がAIの学習に使われることはありません。セキュリティ上の問題がない限り、Googleの社員が内容を確認することもありません。会話が終わると保持されないので、「入力した機密情報がどこかに残り続けるのでは…」という心配も不要です。

なぜWorkspaceが「使いやすい」のか

Workspaceが特に使いやすい理由は、今ある仕組みにそのまま載せられるからです。

  • 管理者はいつもの管理画面からGeminiの設定ができる(新しいツール不要)
  • 「この部署は使える/使えない」の設定も、普段のユーザー管理と同じ感覚
  • GmailやGoogleドキュメントなど、アプリごとに機能のオン/オフが可能
  • すでに設定している「機密情報の外部送信ブロック」ルールがGeminiにも自動適用
  • 「ダウンロード禁止」「コピー禁止」に設定したファイルは、Geminiからもアクセス不可

つまり、新しいセキュリティの仕組みを一から作る必要がないのです。

Gemini API(開発者向け)の場合

自社サービスにGeminiを組み込みたい開発者向けには、Gemini APIがあります。ここで重要なのは、有料版と無料版でデータの扱いがまったく違うという点です。

有料版APIを使う場合

有料版では、入力したプロンプトや生成された回答が、Googleの製品改善やAIの学習に使われることはありません。人間が内容を確認することもありません。不正利用を防ぐための最低限のログは残りますが、それ以外の目的でデータが使われることはないと利用規約で明記されています。業務で本格的にAPIを使うなら、有料版一択です。

無料版API / AI Studioを使う場合

一方、無料版やAI Studioでは状況が異なります。入力した内容と生成された回答がGoogleの製品改善に使われる可能性があり、品質向上のためにGoogleの担当者が内容を読んで確認することもあります。また、不正利用を監視するため、プロンプトや回答は1日間保存されます。

「ちょっと試してみたい」という段階なら無料版でも構いませんが、顧客データや社内の機密情報を扱う業務では、絶対に無料版を使わないでください

社内ルールで決めておくべきこと

どの使い方を選んでも、「何を入力していいか/ダメか」のルールは社内で決めておく必要があります。

最低限決めておきたいのは、Geminiに入力してはいけない情報のリストです。お客様の個人情報、契約上守秘義務のある情報、社内でまだ公開されていない経営情報などは、基本的に入力禁止にすべきでしょう。

また、Geminiが生成した内容をそのまま外部に出す前には、必ず人間がチェックする手順を設けてください。AIは時として事実と異なる内容を生成することがあります。「Geminiが言ったから正しい」ではなく、「Geminiの出力を参考に、人間が最終判断する」というスタンスが大切です。

ツール導入だけでは使われない:社内定着の設計(研修につなぐ)

最後に、多くの企業が見落としがちな「定着」の問題を取り上げます。

よくある失敗(導入したのに使われない)

典型的なパターンはこうです。経営層の号令でAIツールを導入し、全社アナウンスを出す。初月はログイン数が伸びるものの、2〜3ヶ月後には利用率が激減。最終的に「うちの社員はAIを使いこなせない」という結論に至る──。

でも、本当の原因は社員の能力ではありません。何に使えばいいか具体的にわからない使っていいこと/ダメなことの線引きが曖昧成功体験がなく効果を実感できない既存の業務フローに組み込まれていない。こうした環境側の問題がほとんどです。

最小ロードマップ(PoC→ガイドライン→研修→KPI)

定着までの最短ルートを、4つのステップで設計します。

ステップ内容期間目安
1. PoC先行チーム(5〜10名)で有効性を検証。成功事例3〜5件と課題リストを作成2〜4週間
2. ガイドライン使っていいこと/禁止事項、ユースケース集、プロンプトのテンプレート集を整備1〜2週間
3. 研修全社向け基礎研修+部署別応用研修。ハンズオンで「成功体験」を作る1〜2週間
4. KPI設計利用率、工数削減効果、品質向上効果を定点観測。改善サイクルを回す継続

いきなり全社展開するのではなく、小さく始めて成功パターンを作り、それを横展開するのがコツです。

とはいえ、「ガイドラインの作り方がわからない」「研修を内製できるリソースがない」「そもそも何から手をつければいいか…」という声もよく聞きます。そうした場合は、外部の専門家を活用するのも一つの手です。

デジライズでは、生成AIの導入研修を行っています。個別のミーティングで業務内容をヒアリングし、現場で本当に使えるAI活用法を一緒に考えるところからスタートします。実際に使えるように、AIの専門家が伴走いたしますので、AI担当者がいない企業様でもご安心ください。

まずは情報収集からでも歓迎です。
導入の流れや支援内容をまとめた資料をこちらからご覧いただけます

まとめ:今日から何をやるべきか

Gemini 3 Flashは、「速さ」と「賢さ」を両立した、実用性の高いAIモデルです。Gemini 3 Pro並みの推論能力を、3倍の速度と低コストで利用できるため、日常業務から開発まで幅広い用途に対応できます。

ただし、どんなに優秀なツールも、セキュリティ設計と社内定着の仕組みがなければ宝の持ち腐れです。法人利用ならWorkspace経由か有料版APIを選び、PoCから段階的に展開していく。この基本を押さえれば、Gemini 3 Flashはあなたの組織の強力な武器になるはずです。

参考URL(一次情報)

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。