チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

「AIの回答、なんか表面的で物足りない…」
「複雑な問題だと的外れな答えが返ってくる…」

こんな悩みを抱えている方、多いのではないでしょうか。特に企業でAI活用を進めようとしている方にとって、モデル選びは頭の痛い問題ですよね。

そんな中、Googleから登場したのが「Gemini 3 Deep Think」です。これは「複数の仮説を同時に検討し、最も筋の良い答えを導き出す」という、まさに人間の熟考プロセスをAIで再現した推論特化モデルなんです。

この記事では、私チャエンがGemini 3 Deep Thinkを実際に使い込んで感じたこと、そしてベンチマークの数字が実務でどう活きるのかを、企業導入の視点から徹底的に解説します。


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Gemini 3 Deep Thinkとは?特徴・料金・制約を整理

出典:公式サイト

一言でいうと「落としどころの上手いAI」

最初に結論からお伝えします。Gemini 3 Deep Thinkは、「落としどころの上手いAI」 です。

どういうことかというと、複数の選択肢や条件がある複雑な問題に対して、単に「正解」を出すのではなく、「このケースならこれ、でもこういう条件ならこっち」という、実務で本当に使える「センスのいい答え」を返してくれるんです。

従来のAIモデルは「答えを出す」ことには長けていましたが、ビジネスの現場で求められるのは「複数の選択肢を比較検討して、最も妥当な落としどころを見つける」能力。Deep Thinkはまさにここに特化しています。

私がDeep Thinkを使って最も印象的だったのは、この「答えのセンスの良さ」でした。例えば、「生成AIでこれから起業するならどの領域が良い?」という質問を投げたところ、Deep Thinkはこんな回答を返してきました。

単に「AIで起業するならこの分野がおすすめです」と答えるのではなく、市場の変遷を踏まえた上で「なぜその戦略が有効なのか」という文脈まで提示してくれる。これがDeep Thinkの真骨頂です。

他のモデルだと「AIが普及すると効率化が進みます」といった一般論で終わりがちな質問でも、Deep Thinkは具体的な戦略と、その背景にある市場構造の分析を含んだ回答を返してくれるんです。

Gemini 3ファミリーの全体像とDeep Thinkの位置づけ

11月にGoogleが発表したGemini 3は、「リーズニング(推論)」「エージェント機能」「Vibe Coding(自然言語でのアプリ開発)」に焦点を当てたメジャーアップデートです。

Gemini 3ファミリーの中で、Deep Thinkは「最も深く考える」モードとして位置づけられています。

モデル特徴用途
Gemini (高速)標準モデル。バランスの取れた性能日常的な質問、コンテンツ生成
Gemini 3 Pro (思考)推論モード。思考プロセスを可視化複雑な質問、論理的分析
Gemini 3 Deep Think最高度の推論モード数学・科学・複雑な意思決定

Gemini 3 が「すぐに答える」モードだとすれば、Deep Thinkは「時間をかけて深く考える」モード。回答までに数分かかることもありますが、その分だけ質の高いアウトプットが得られます。

推論特化の技術的背景(並列推論とは)

Deep Thinkの強みは、並列推論(Parallel Reasoning)という技術にあります。

従来のAIモデルは、一つの思考ルートを順番にたどって答えを導き出していました。一方、Deep Thinkは複数の仮説やアプローチを同時に展開し、比較・統合しながら最終的な解答を導く仕組みになっています。

これは人間が難問を解く時のプロセスに似ています。「この方法だとどうなるか?」「別のアプローチならどうか?」と複数の選択肢を頭の中で検討し、最も筋の良い答えを選ぶ。Deep ThinkはこれをAIで実現しているんです。

Googleの公式発表によると、この並列推論の仕組みにより、Gemini 2.5 Deep Thinkは国際数学オリンピックで金メダル水準のスコアを達成し、国際大学対抗プログラミングコンテスト世界大会でも高い成績を収めています。

利用条件と料金

Gemini 3 Deep Thinkを利用するには、Google AI Ultraプランへの加入が必要です。

プラン月額料金Deep Think利用
Google AI Ultra36,400円利用可能 (〇)
無料0円利用不可 (×)
Google AI Pro2,900円利用不可 (×)

Google AI Ultraは月額約36,400円(249.99ドル)と、決して安くはありません。ただし、以下の付帯サービスが含まれています。

  • 30TBのクラウドストレージ(単体で月額約2万1,000円相当)
  • YouTube Premium(月額約1,400円相当)
  • Veo 3による動画生成
  • NotebookLMの最高利用枠
  • Project Mariner(AIエージェント)の先行アクセス

なお、初回3ヶ月間は50%オフの月額約18,000円で利用できるプロモーションも用意されています。

利用制限について

Deep Thinkモードには1日あたりの10プロンプト、コンテキスト 192k トークンという制限があります。上限に達した場合は、リセットされるまで待つ必要があります。

Deep Thinkが真価を発揮する領域

Gemini 3 Deep Thinkは、以下のような領域で真価を発揮します。

企画・戦略立案

「A案とB案、どちらを採用すべきか」「この市場に参入すべきか否か」といった、複数の選択肢を比較検討する必要がある場面。Deep Thinkは各オプションのメリット・デメリットを多角的に分析し、意思決定の材料を提供してくれます。

営業戦略・提案設計

「この顧客に対してどんな提案が刺さるか」「価格交渉でどこまで譲歩すべきか」といった、複数の変数を考慮したシナリオ設計。従来のAIでは「一般論」で終わりがちだった領域で、具体的かつ実践的な提案を返してくれます。

開発・アーキテクチャ設計

「このシステム構成でスケーラビリティは確保できるか」「技術的負債を最小限に抑えるアプローチは?」といった、複数の技術的選択肢を比較するレビュー業務。数学的・論理的な推論が必要な領域でDeep Thinkの強みが活きます。

ベンチマークの意味を”ビジネス言語”に翻訳する

主要ベンチマークの意味

出典:公式サイト

Gemini 3 Deep Thinkが注目を集めている理由の一つが、驚異的なベンチマークスコアです。でも、「Humanity’s Last Exam 41.0%」と言われても、正直ピンとこないですよね。

ここでは、各ベンチマークが「どんな能力を測っているのか」「それがビジネスでどう活きるのか」を翻訳していきます。

  • Humanity’s Last Exam(HLE):41.0% – これは「人類最後の試験」と呼ばれる、AI研究者が「人間でも解けないような超難問」を集めたベンチマークです。数学、物理、生物学、経済学など多分野にわたる専門的な問題で構成されています。
  • ARC-AGI-2:45.1% – ARC-AGIは「Abstract Reasoning Corpus(抽象推論コーパス)」の略で、パターン認識と抽象的な推論能力を測るテストです。「今まで見たことのない問題に対して、どれだけ柔軟に対応できるか」を測ります。
  • GPQA Diamond:93.8% – 大学院レベルの質疑応答能力を測るベンチマーク。専門家でも難しいと感じる高度な問題への回答精度を測定します。

ベンチマークと業務の対応表

ベンチマーク測定能力対応する業務
Humanity’s Last Exam専門知識、複合的思考戦略立案、市場分析、M&A評価
ARC-AGI-2未知の問題への対応力危機対応、新規事業企画、問題の根本原因分析
GPQA Diamond専門領域の正確性デューデリジェンス、技術調査、法務レビュー
SWE-benchコーディング能力開発支援、コードレビュー、システム設計

数字では語れない制約

ベンチマークで高スコアを出しているDeep Thinkですが、実務で使う上では以下の制約も理解しておく必要があります。

  • レイテンシ(応答時間) – Deep Thinkは「深く考える」モードであるため、回答が返ってくるまでに数分かかることがあります。リアルタイムでの応答が求められるカスタマーサポートや、高頻度での利用が必要な業務には向いていません。
  • コスト – Google AI Ultraプランは月額36,400円。個人利用というよりは、企業での戦略的活用を前提とした価格設計になっています。
  • 利用目的の選別 – Deep Thinkは「複雑な推論が必要なタスク」に特化しています。シンプルな質問や、大量のルーティンワークには、通常のGemini 3 Proを使う方が効率的です。

Claude / GPT との用途別使い分け

モデルのキャラクター整理

ここからは、Gemini 3 Deep Thinkと他の主要AIモデルの使い分けについて解説します。私が日々使い込んでいる中で感じた「各モデルのキャラクター」を整理してみました。

Gemini 3 Deep Think

  • キャラクター: 熟慮する戦略家
  • 強み: 複数の選択肢を比較検討、多角的な視点からの分析
  • 弱み: 応答に時間がかかる、シンプルなタスクにはオーバースペック

Claude(Anthropic)

  • キャラクター: 丁寧で論理的な実務家
  • 強み: コーディング品質、日本語の自然さ
  • 弱み: 画像・動画生成には非対応

GPT-5.1(ChatGPT)

  • キャラクター: マルチな万能選手
  • 強み: 汎用性の高さ、画像生成、エコシステムの広さ
  • 弱み: 特化領域では専門モデルに劣る場合も

タスク別 推奨モデル早見表

タスク推奨モデル理由
Web上の最新情報調査ChatGPTサイトを巡回して情報収集
長文ドキュメントの要約Claude100万トークン対応、構造化が得意
複数シナリオの比較検討Deep Think並列推論で多角的に分析
コード生成・デバッグClaude Code, ChatGPT Codexバグが少なく品質が高い
戦略オプションの評価Deep Think, ChatGPT 5.1 Pro「落としどころ」を見つける力
提案書のドラフト作成Claude日本語の自然さ、構成力
数学的・論理的問題Deep Think, ChatGPT 5.1 Proベンチマークで圧倒的な強み
画像生成GeminiNano banana Proによる高品質画像生成
動画生成Gemini(Veo3), ChatGPT(Sora2)Veo 3, Sora2による高品質動画生成

部門別:Gemini 3 Deep Thinkの企業ユースケース

営業・マーケ:提案シナリオ生成、価格条件シミュレーション

営業・マーケティング部門では、以下のようなユースケースでDeep Thinkが活躍します。

  • 提案シナリオの多面的検討 – 大型案件の提案で、「A社向けにはこの訴求軸」「でもB社なら別の切り口が刺さるかも」という検討をDeep Thinkに投げると、各シナリオのメリット・デメリット、想定される顧客の反応、リスク要因までを整理してくれます。
  • 価格交渉シミュレーション – 「10%値引きした場合の利益率への影響」「競合が同様の値引きをしてきた場合の対抗策」など、複数の変数を考慮した価格戦略の検討に向いています。
  • 市場セグメントの優先順位付け – 「3つのターゲットセグメントのうち、どこに注力すべきか」という意思決定で、各セグメントの市場規模、競争環境、自社の強みとの適合度を多角的に分析できます。

企画・経営:戦略オプション比較、仮説反証、長期計画策定

経営企画や事業企画部門は、Deep Thinkの「複数選択肢の比較検討」能力が最も活きる領域です。

  • 戦略オプションの評価 – 「新規事業として、A領域への進出とB領域への進出、どちらが妥当か」という問いに対して、市場環境、自社リソース、リスク要因、シナジー効果など、複数の軸からの評価を提供してくれます。
  • 仮説の反証・検証 – 「我々の仮説が正しいとすると、こういう結果になるはず。でも現実はこうなっている。なぜか?」というクリティカルシンキングのプロセスをDeep Thinkにサポートさせることで、思考の盲点を発見できます。
  • 長期計画のシナリオプランニング – 「3年後の市場環境が楽観シナリオ・悲観シナリオ・中間シナリオの場合、それぞれどう対応すべきか」という複数シナリオの同時検討に向いています。

開発・IT:アーキテクチャ比較、PoCテーマ選定

開発・IT部門では、技術的な意思決定のサポートにDeep Thinkが有効です。

  • アーキテクチャの比較検討 – 「マイクロサービスアーキテクチャとモノリシックアーキテクチャ、この案件ではどちらが適切か」という技術選定で、スケーラビリティ、運用負荷、開発工数、将来の拡張性など、複数の観点からの比較分析を提供してくれます。
  • 技術的負債の評価 – 「このレガシーシステムをリプレイスすべきか、段階的に改修すべきか」という判断で、コスト、リスク、移行期間、ビジネスインパクトなどを総合的に評価できます。
  • PoCテーマの優先順位付け – 「5つのPoC候補のうち、どれから着手すべきか」という意思決定で、技術的実現可能性、ビジネスインパクト、必要リソースなどを比較検討できます。

高度推論モデルを安全に使うためのガバナンス設計

リスクカテゴリの整理

Deep Thinkのような高度な推論能力を持つAIモデルは、その能力ゆえに悪用された場合のリスクも高いという側面があります。企業として導入する際は、以下のリスクカテゴリを理解しておく必要があります。

1. 情報漏洩リスク

機密情報をAIに入力することで、意図せず情報が外部に漏洩するリスク。特に、API経由での利用やサードパーティツールとの連携時には注意が必要です。

2. 出力の悪用リスク

AIが生成した分析結果や提案を、競合への攻撃や不正行為に転用されるリスク。特に、高度な推論能力を持つDeep Thinkは、詳細な分析を出力できるため注意が必要です。

3. 判断の依存リスク

AIの出力を鵜呑みにして、重要な意思決定を人間のレビューなしに行ってしまうリスク。AIはあくまで「支援ツール」であり、最終判断は人間が行うべきです。

4. バイアス・公平性リスク

AIの出力に含まれるバイアスが、意思決定に影響を与えるリスク。特に、人事評価や顧客対応など、公平性が求められる領域では注意が必要です。

禁止すべきプロンプトのカテゴリ

企業でAIを利用する際には、以下のカテゴリに該当するプロンプトを禁止するルールを設けることを推奨します。

絶対に禁止すべきもの

  • 個人情報(氏名、住所、電話番号など)を含むプロンプト
  • 顧客の非公開情報を含むプロンプト
  • 営業秘密や機密技術情報を含むプロンプト
  • 競合他社への攻撃や不正行為に関する相談

原則禁止(例外は上長承認制)

  • 未公開の財務情報に関する分析依頼
  • 人事評価や採用判断に関する相談
  • 法的リスクを伴う意思決定への助言依頼
  • セキュリティに関する詳細な相談

企業研修で押さえるべきポイント

AI活用を全社展開する際は、「ツールの使い方を教える」だけでは不十分です。僕がこれまで多くの企業研修に携わってきた中で痛感しているのは、「使い方」よりも「使いどころ」と「使ってはいけない場面」の理解が重要だということ。

以下の4つのテーマを研修に盛り込むことを強く推奨します。

テーマ目的押さえるべき内容
AIリテラシーの基礎過度な期待・過度な不安を解消AIにできること・できないこと、ハルシネーションの仕組み、プロンプトの基本
セキュリティ・コンプライアンス情報漏洩・法的リスクの防止入力禁止情報の種類、社内ルール、インシデント報告フロー
業務別活用方法実務での即戦力化部門別ユースケース、モデルの使い分け、出力の検証方法
継続学習の仕組み陳腐化の防止AI技術の追従方法、社内ナレッジ共有、フィードバックループ

よくある失敗は、「全員にアカウントを配って操作動画を見せて終わり」というパターン。これだと大半の社員は「よく分からないから使わない」で終わります。「自分の業務のどこで使えば効果が出るか」を具体的にイメージできる状態まで持っていくことが重要です。


デジライズでは、こうした観点を踏まえた実践型のAI研修プログラムを提供しています。

「ツールの使い方」ではなく「業務での活かし方」にフォーカスし、御社の業務内容をヒアリングした上で、現場で本当に使えるAI活用法を一緒に設計します。AIの専門家が伴走するため、AI担当者がいない企業様でもご安心ください。

「まずは話を聞いてみたい」という段階でも大歓迎です。以下のリンクから、お気軽にお問い合わせください。

まとめ:Deep Thinkは”考える力”を求める業務に最適

今回は、Googleの最新AIモデル「Gemini 3 Deep Think」について、その特徴から企業での活用方法まで徹底的に解説しました。「どんな時にDeep Thinkを使い、どんな時に他のモデルを使うか」の使い分けが、企業でのAI活用を成功させるカギです。

AI技術は日々進化しています。今後も新しいモデルや機能がリリースされていくでしょう。大切なのは、特定のツールに依存するのではなく、「自社の業務にとって最適な選択は何か」 を常に考え続けることです。

この記事が、皆さんのAI活用の一助となれば幸いです。

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。