チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

1. はじめに

近年、生成AIを活用したビジネス文書の作成やプレゼン資料の自動生成が注目を集めています。従来はデザインツールを使いこなしたり、複数の画像編集ソフトを組み合わせたりして完成させていた資料も、AIによって短時間でプロ並みのクオリティに仕上げられるようになりました。

企業やフリーランス、学生など、あらゆる立場の人にとって「わかりやすい資料づくり」は悩みのタネです。特にデザインの知識が少ない方や、時間が限られている場合は、AIの力を借りることで効率的に資料を作成できます。

そこで本記事では、プレゼンテーション資料作成の強い味方となる3つのAIツール「Gamma AI」「イルシル」「Napkin AI」を徹底解説します。各ツールの特徴から料金体系、実際の使いこなしのポイントまで、幅広くカバーしますので、ぜひツール選びの参考にしてください。

2. Gamma AIとは?

2.1 Gamma AIの基本概要

Gamma AIは、AIを活用してプレゼン資料やウェブサイトを数秒で生成できる革新的なツールです。テキストさえ用意しておけば、見やすくまとめられたスライドを瞬時に作成してくれるため、デザインやプレゼン組み立てに割く時間を大幅に削減できます。

  • 提供元: Gamma Tech, Inc. (2020年設立、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)
  • 対応言語: 日本語、英語など多数
  • 用途: プレゼン資料、簡易ウェブページ、ドキュメントの生成

多くのユーザーは「テキスト原稿さえ用意しておけば、あとはGamma AIが自動的に最適化してくれる」と評しています。また、デザイン作業が苦手な方でもプロが作成したようなレイアウトのスライドが完成する点が強みです。

2.2 自動生成機能の特徴

Gamma AIの最大の特徴は「AIによる資料の自動生成」です。たとえば、以下のような流れでプレゼン資料が完成します。

1. テキストを入力する: プレゼン内容の概要・セクションなどを簡潔に入力。

2. AIが解析: 文章の構成やキーワードをAIが解析し、どのようなスライド構成が最適かを判断。

3. スライドテンプレートの自動適用: 数十種類のテンプレートから自動的にレイアウトを選択し、文字や画像を配置。

4. 画像・グラフのAI生成: 必要に応じて挿入する画像やイラストをAIが生成。アイキャッチ効果の高いスライドが完成。

この工程はわずか数秒から数十秒程度で行われるため、大幅な時間削減につながります。さらに、ちょっとした修正や装飾は、エディタ機能を使って簡単に調整できます。

AI画像生成機能

Gamma AI内蔵のAI画像生成機能を使うと、指定したキーワードをもとにAIが独自の画像を生成してくれます。イラストやアイコンなどをゼロから探す必要がなく、著作権の心配をせずに使える点が魅力です。

テンプレートの豊富さ

約30種類以上のテンプレートが用意されており、ビジネスプレゼンから教育用スライド、サービス紹介用ページなど、さまざまな用途に対応しています。

2.3 インタラクティブなウェブページ作成機能

Gamma AIはプレゼン資料だけでなく、インタラクティブなウェブページを作成できる点でもユニークです。以下のような機能を持ち、単なるスライド表示以上のリッチな体験を提供します。

  • スライド要素のアニメーション化
  • リアルタイムQ&A機能の組み込み
  • 視聴者の反応(リアクション)を記録しやすいインターフェイス
  • スマートフォンやタブレットなど、さまざまなデバイスに最適化された表示

特にリモート会議やオンラインセミナーが増加した昨今、視聴者と双方向のコミュニケーションをとりやすいのは大きな利点といえます。

2.4 料金プランと使い分け

Gamma AIでは、以下のような料金プランが用意されています。

クレジット消費型の仕組みがあり、プレゼンテーション1回生成するごとに40クレジット、AI画像生成に10クレジットなどが必要です。無料プランで試用してみて、より高度な機能が欲しいと感じたら上位プランへのアップグレードを検討するのがいいでしょう。

3. イルシルとは?

3.1 イルシルの基本概要

イルシルは、2021年に日本で設立されたソフトウェア開発企業「株式会社イルシル」が提供する、AI搭載のスライド自動生成サービスです。日本語サポートが手厚く、使い勝手が非常にスムーズな点が魅力と言えます。

  • 提供元: 株式会社イルシル (日本企業)
  • 設立: 2021年3月15日
  • 特徴: 豊富な日本語テンプレート、クオリティの高いデザイン、AIによる自動最適化

特に日本語をメインに使用する方にとっては、言語の違和感がないプレゼンテーションを生成しやすい点がメリットです。

3.2 豊富なテンプレートの活用法

イルシルは1,000種類以上のテンプレートを用意しており、業界や用途別に整理されています。たとえば、以下のようなテーマ別テンプレートが存在します。

  • ビジネス・企画書向けテンプレート
  • 教育用資料テンプレート
  • セミナーや講演向けテンプレート
  • マーケティング資料・SNS用資料テンプレート

これだけの種類があれば、どんな目的にもマッチするデザインを見つけやすく、わざわざ1からレイアウトを考える必要がありません。また、テンプレートベースで作成した後は、フォントや画像を手動で差し替えるだけで、オリジナリティを加味したスライドに仕上げられます。

3.3 AIによるデザイン最適化の仕組み

イルシルのAIは、ユーザーが入力するテキストデータを解析し、最適なレイアウトや配色を自動で提案します。具体的には以下のような機能があります。

1. フォントサイズの自動調整

入力テキスト量に応じて、見出しや本文のフォントサイズを自動調整。

2. カラーパレットの自動生成

ブランドイメージやユーザーが入力するキーワードから、最適なカラースキームを提案。

4. 画像配置の最適化

文章量や配置バランスを考慮して、画像の大きさや位置を自動で調整。

これらの機能により、誰でも見栄えの良いスライドを時短で作成できるのが最大の魅力です。

4.4 活用事例と利用メリット

  • 新商品・サービスの提案資料: 短時間で資料の骨子を作り、デザインに時間を取られずに内容に注力できる。
  • 社内研修・マニュアル: テンプレートを使い回せるため、社内向けのレイアウトを統一しやすい。
  • オンラインセミナーやウェビナー: 日本語専用テンプレートが豊富なため、直感的にわかりやすい資料を迅速に構築。

国内企業が提供しているので、サポート対応も日本語中心。何か問題があっても相談しやすいため、初めてAIプレゼンツールを利用する方にも安心感があります。

5. Napkin AIとは?

5.1 Napkin AIの基本概要

Napkin AIは、テキストを入力するだけで高品質な図解やグラフを自動生成してくれるAIツールです。スタートアップのビジネスピッチや教育現場の説明資料などで「パッと見て内容がわかるビジュアル」を手軽に作れるのが特徴です。

  • 提供元: プラモッド・シャルマ & ジェローム・ショラー (シリコンバレー在住のAIエンジニア)
  • 開発チーム: AmazonやGoogleなど大手企業出身のAI・コンピュータビジョン専門家
  • 対応言語: 2024年9月から日本語対応

図解・イラストを強みとするため、プレゼンテーション資料の中でも特に視覚的訴求力を高めたいシーンでの利用が効果的です。

5.2 視覚的な図解・グラフ生成の強み

Napkin AIの最大の強みは「ビジネスストーリーを可視化」する点です。文章で説明すると複雑に見える内容も、適切な図解を取り入れることで一目瞭然になります。

フローチャート

マインドマップ

階層構造図

組織図

グラフ化(棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなど)

こういったビジュアルが、テキスト入力だけでほぼ自動生成されるため、大幅な作業効率アップにつながります。特に「アイデアをすばやく共有したい」「顧客や上司にシンプルに説明したい」という要望の多いビジネスシーンで重宝します。

5.3 スマートフォンでの利用方法

Napkin AIは、スマートフォンからも閲覧や簡易的な修正が可能です。電車の移動中や外出先など、PCを開けない状況でも内容チェックや小さな手直しができるのは便利です。ただし、本格的なグラフカスタマイズや詳細設定はPC版(デスクトップ版)で行うことを推奨しています。

  • スマホで可能: 図解の閲覧・簡単な修正
  • スマホではやや不向き: 複雑な図解の新規作成、詳細な編集

5.4 料金プランと今後の展開

Napkin AIは現在ベータ版として基本無料で提供されています。今後は機能ごとに有料化が進む予定で、プランの例としては以下が想定されています。

Napkin AIは特にビジュアルコミュニケーションの領域に強みを持つツールなので、プレゼン資料の見栄えを「もう一段上げたい」と考える場合に非常に有効です。

6. 3つのAIツールを比較してわかること

それでは、紹介した3つのツールを横並びで比較してみましょう。それぞれに得意領域があり、用途に応じて使い分けるのがおすすめです。

1. Gamma AI

強み: プレゼン資料の自動生成、インタラクティブなウェブページ作成

特徴: シンプルな操作で短時間に完成度の高い資料を作成できる。英語・日本語の多言語対応。

2. イルシル

強み: 日本国内企業が提供する日本語中心のスライド自動生成

特徴: 1,000種類以上の豊富なテンプレートと日本語向けサポート。細かいUIまで日本語対応しているので安心。

3. Napkin AI

強み: 簡単に図解やグラフを自動生成し、視覚的なストーリー伝達に特化

特徴: 複雑な情報を整理してわかりやすく見せるプレゼン補助ツールとして優秀。現在ベータ版は無料で試せる。

どのツールが一番良い?という問いに対しては、実際には「どんなプレゼン資料を作りたいか」「どんなビジュアルを求めているか」によって答えが変わります。以下に用途別のおすすめをまとめてみました。

  • 海外向けプレゼンやウェビナーに強いツールが欲しい: Gamma AI
  • 日本語ドキュメントを量産したい、サポートも日本語がいい: イルシル
  • 図解中心の説明資料を作りたい、わかりやすさを重視したい: Napkin AI

7. 各ツールを使いこなすポイント

7.1 目的に応じて選ぶ・使い分ける

資料作りには「短い時間で完成度を上げたい」「伝えたい情報を視覚化したい」「カスタマイズでブランディングをしたい」など、いろいろな目的があります。それぞれのツールは目的に特化している部分があるため、1つのツールで全てをまかなうよりも、複数ツールを使い分けるのが効率的なケースも多々あります。

たとえば、メインのスライドはイルシルやGamma AIで作成し、重要なチャートやビジュアル資料だけをNapkin AIで生成して挿入する、という使い方もおすすめです。

7.2 デザインのカスタマイズ

AIに任せっきりでも、ある程度の完成度は得られますが、やはり最終的には手動で微調整して仕上げるのが一番です。以下のポイントを意識すると、より洗練された資料になります。

カラーリング:

会社のコーポレートカラーに合わせたり、明度や彩度を微調整する。

フォント選択:

見出しフォントと本文フォントを統一感のある組み合わせにする。

画像選択:

AI生成した画像が意図と異なる場合は、別のキーワードを再入力したり手持ちの素材を使う。

7.3 有料プランにアップグレードすべきタイミング

無料プランでも試用は可能ですが、本格的にプレゼン資料を作り込む場合や、社内外で頻繁に利用する場合は有料プランを検討すると良いでしょう。以下のような状況に当てはまる方は、有料プランを視野に入れるのがおすすめです。

  • 作成するスライド枚数が多く、無料の上限にすぐ達してしまう。
  • AI画像を頻繁に生成し、クレジットを使い切ることが多い。
  • エクスポートに透かしが入ってしまうのが気になる。
  • ビジネスで活用したいので、万全のサポートを受けたい。

各ツールとも、ProプランやEnterpriseプランになるとサポート体制が充実するだけでなく、追加の機能やテンプレートが開放されるケースが多いです。クリエイティブな作業でストレスなく使うためにも、自分の使用頻度と必要機能を考慮してプランを選択しましょう。

8. まとめと今後の展望

3つのAIツール「Gamma AI」「イルシル」「Napkin AI」は、それぞれにユニークな特徴と強みを持っています。共通して言えるのは、資料作成の時間を大幅に短縮できると同時に、クオリティの高いアウトプットを生成してくれる点です。

今後、生成AIの性能はさらに向上すると予想されます。自然言語処理と画像生成の技術は日進月歩で進化しているため、近い将来には今以上にスライドやグラフの自動生成が高度化し、より複雑なプレゼン資料でも一瞬で作成できるようになるかもしれません。各社とも新しい機能拡充やプランの改訂を続々と発表しており、今後も要注目の分野となるでしょう。

9. よくある質問(FAQ)

Q1: プレゼン資料とウェブページ、どちらも作りたい場合はどれを選べばいい?

A1: どちらも作成するなら、ウェブページの自動生成機能を備えるGamma AIが便利です。特にインタラクティブな要素を追加したい場合、Gamma AIのQ&A機能やアニメーションは有用です。

Q2: デザインのこだわりが強く、細かいレイアウト調整がしたい。AI依存で問題ない?

A2: ベースをAIで作成し、最終的な微調整を手動で行うのがベストです。どのツールも簡単な編集機能を備えているので、基本的には補助ツールと考え、細部の仕上げは自分で行うのが理想的です。

Q3: 海外向けに英語スライドを多用するが、日本語資料も作りたい。どれがオールラウンドに使える?

A3: Gamma AIは日本語・英語ともに対応しており、全体的に汎用性が高いです。日本語サポートが手厚いイルシルは国内向け資料に最適、Napkin AIは図解中心なので、必要に応じて使い分けましょう。

Q4: Napkin AIで作成した図解を他のツールのスライドに埋め込める?

A4: 可能です。Napkin AIで出力した画像やグラフを、PNGやJPEGといった形式でダウンロードし、Gamma AIやイルシルのスライドに貼り付けることができます。

Q5: AIツールで生成したコンテンツの著作権はどうなるの?

A5: ツールやプランによって利用規約が異なります。基本的には商用利用が許可されるケースが多いですが、無料プランだと制限がある場合もあるので、利用前にサービスの利用規約を必ずチェックしましょう。

以上が、資料作成を効率化する3つのAIツール「Gamma AI」「イルシル」「Napkin AI」の解説です。各ツールの特性を理解し、あなたの目的に最適なものを選んでみてください。どれも無料プランやベータ版があるため、まずは気軽に試してみることをおすすめします。AIが作業を代行してくれる部分と、自分で微調整すべき部分を上手に切り分けることで、短時間で魅力的な資料を完成させられるはずです。

今後もAIの進化に伴い、新機能や新しい競合ツールが続々と登場するでしょう。最新情報をキャッチアップしつつ、効率的かつクオリティの高い資料作りを実現していきましょう。今では当たり前になりつつある「AIによる資料作成」は、ビジネススキルとして必須の知識になっていく可能性大です。ぜひ、この記事を参考に早めに使い始めてみてください。

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー15万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。

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