チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

「メールの振り分けや返信に毎日追われて、本来の仕事に集中できない…」
「定型業務が多すぎて、もっとクリエイティブなことに時間を使いたい…」

こんな悩みを抱えている方に朗報です。2025年12月、Googleが「Google Workspace Studio」を正式リリースしました。これは単なる自動化ツールではありません。Gemini 3のAI機能を搭載し、自然言語で指示するだけで業務を自動化する「AIエージェント」を、誰でもノーコードで作成できる革新的なプラットフォームなんです。

この記事では、「Workspace Studioって何?」という初心者の方から、「すぐに社内で導入したい!」という担当者の方まで、誰もがWorkspace Studioをマスターできるよう、その全てを徹底的に解説します。機能の概要はもちろん、部門別の活用事例30選や、実際にエージェントを作成する手順まで、一気に網羅していきますよ!


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Google Workspace Studioとは?Flowsからの正式版まで

Google Workspace Studioとは、一言でいうと、「Gemini 3を搭載したノーコードのAIエージェント構築プラットフォーム」です。Gmail、Drive、Sheets、Chatなど、普段使っているGoogle Workspaceアプリを連携させて、業務を自動化するエージェントを誰でも簡単に作成できます。

Google Workspace Studio の概要とできること

Workspace Studioの最大の特徴は、「Gemini 3 × Workspaceアプリ連携」による高度な自動化です。従来の自動化ツールは、厳格なルールや条件分岐をプログラミング的に設定する必要がありました。しかしWorkspace Studioでは、AIが文脈を理解し、柔軟に判断しながら作業を進めてくれます

例えば、「緊急度の高いメールが来たら、内容を要約してChatで通知して」という指示を自然言語で書くだけで、AIがメールの内容を分析し、緊急かどうかを判断し、適切な要約を生成して通知してくれるんです。

「緊急度の高いメールが来たら、内容を要約してChatで通知して」と入力して完成したエージェント

Workspace Studioで実現できることをまとめると、以下のようになります。

  • メール処理の自動化: 自動分類・返信ドラフト作成・重要メールの通知
  • フォームデータの処理: 送信データの自動処理・担当者アサイン・承認フロー
  • ドキュメント処理: PDFからの情報抽出・スプレッドシートへの転記
  • レポート自動化: 定期レポートの自動生成・配信
  • 外部連携: Salesforce、Asana、HubSpotなどとの連携

Google Workspace Flows からの進化ポイント

「Workspace Flows」という名前を聞いたことがある方もいるかもしれません。これは、Studioの前身となるアルファ版として提供されていたサービスです。2025年12月3日、このFlowsが正式版として「Google Workspace Studio」にリブランディングされ、一般提供が開始されました。

Workspace Flows Alpha版を利用していた顧客が、過去30日間で2,000万件以上のタスクをエージェントで処理したという実績があります。ステータスレポートの自動生成から、法的通知のトリアージ、旅行リクエスト管理まで、様々な業務で実用されています。

対象プラン・料金・利用前提条件

「どのプランで使えるの?追加料金は?」これは導入を検討する上で最も気になるポイントですよね。嬉しいことに、Workspace Studioは追加料金なしで、対応するWorkspaceプランに含まれています

利用可能なGoogle Workspaceエディションは以下の通りです。

  • Business: Starter / Standard / Plus
  • Enterprise: Starter / Standard / Plus
  • Education: Fundamentals / Standard / Plus / Teaching and Learning アドオン
  • Google AI: Pro for Education / Ultra for Business

利用を開始するには、以下の前提条件を満たす必要があります。

  1. デバイス要件:エージェントの作成にはPCのブラウザが必要(作成後は任意のデバイスで実行可能)
  2. Geminiの有効化: 管理者がGeminiを有効にしている必要がある
  3. 年齢制限: 学校アカウントで18歳未満の場合、AI機能は利用不可

対応言語と日本語利用時の注意点

Workspace Studioを日本語環境で使う際の注意点も押さえておきましょう。現時点での言語対応状況は以下の通りです。

  • UI言語: 英語
  • プロンプト言語: 日本語でも可能。
  • 処理対象: 日本語のメールやドキュメントは問題なく処理可能

AIによるエージェント自動生成機能(「やりたいことを文章で書くだけ」でエージェントを作成する機能)は、日本語でも可能ですが、作成されたプロンプトが英語になる場合があります。処理対象となるメールやドキュメントは日本語で問題ありません。UIの日本語化は今後のアップデートで対応される見込みです。

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正直、ここまで来るとは思っていませんでした。 これまで「画像生成AIは文字が苦手」「日本語は崩れる」と言われてきましたが、その常識が今日、完全に過去のものになりました。 Googleが2025年11月20日(現地時間)に…

Google Workspace Studioで何が自動化できるのか

では、具体的にWorkspace Studioでどんな自動化ができるのか、その仕組みを詳しく見ていきましょう。エージェントは大きく分けて「スターター(トリガー)」「ステップ」の2つの要素で構成されています。

スターター(トリガー)の種類

スターターとは、エージェントが動き出すきっかけとなるイベントのことです。「毎週金曜17時」のようなスケジュール、または「新しいメールを受信した」「フォームが送信された」といったイベントをトリガーにできます。

Workspace Studioで利用可能なスターターは以下の表の通りです。

スターター分類スターター名(Trigger)内容 / 動作
GmailWhen an email arrives指定条件のメール受信をトリガーに開始
When a label is addedラベル付与をトリガーに開始
When an email is starredスター付与で開始
Google ChatWhen a Chat message is posted特定スペース/DMへの投稿時に開始
When a user mentions the agentメンションをトリガーに開始
Google DriveWhen a file is created新規ファイル作成を検知
When a file is updatedファイル更新を検知
When a file is movedフォルダ移動を検知
Google FormsWhen a form response is submitted回答送信で開始
Google SheetsWhen a row is added新規行追加で開始
When a row is updated行更新で開始
Google CalendarWhen an event is createdイベント作成で開始
When an event starts / ends開始・終了をトリガー
Time-based(時刻指定)Every day / hour / week指定時刻・頻度で実行
Manual(手動)When the agent is run manually手動実行ボタンで起動
WebhookWhen a webhook event is received外部サービスからのWebhook受信
External integrationse.g., Salesforce / Asana triggers連携サービスのイベントを起点に実行

ステップと Gemini の役割

スターターでエージェントが起動したら、次は「ステップ」として定義されたタスクを順番に実行していきます。ステップには、通常のアクション(メール送信、ドキュメント作成など)に加えて、Geminiを活用したAIステップがあります。これがWorkspace Studioの真骨頂です。

主なAIステップの種類を見てみましょう。

  • Ask Gemini(Geminiに聞く): 入力データに対してGeminiが分析・要約・生成を行う。メールの要約、ドキュメントの分析、返信文のドラフト作成など
  • Decide(判断する): Geminiが条件を評価してTrue/Falseを返す。「緊急か?」「ネガティブなトーンか?」などの判断
  • Check if(条件チェック): 値の比較による条件分岐。AI不要の単純な条件分岐に使用

この「Decide」ステップが特に強力で、従来なら複雑なルール設定が必要だった判断を、「このメールは緊急ですか?」という自然な問いかけだけでAIに任せられます。

テンプレートと自然言語からのエージェント作成

「いきなり自分でエージェントを作るのは難しそう…」という方もご安心ください。Workspace Studioには数十種類のテンプレートが用意されており、すぐに使い始められます。

代表的なテンプレートをいくつか紹介します。

  • 未読メールの日次サマリー: 毎朝、前日の未読メールをGeminiが要約してChatで通知
  • 重要な人からのメール通知: 特定の送信者からメールが来たら即座に通知
  • アクションアイテム付きメールのラベル付け: 対応が必要なメールを自動でラベリング
  • 会議後のサマリー送信: 会議終了後に要約とアクションアイテムをメール送信
  • ニュースヘッドラインの日次要約: 指定したニュースソースの要約を毎日配信

さらに、テンプレートを使わなくても、やりたいことを自然言語で書くだけでGemini 3がエージェントを自動生成してくれます。例えば、「質問を含むメールを受信したら、そのメールに『要返信』ラベルを付けて、Chatで通知して」と入力するだけで、必要なステップを自動で構築してくれるんです。

Apps Script・外部ツールとの連携イメージ

Workspace Studioの拡張性も見逃せません。プリビルトのステップでは実現できない高度な処理は、 Google Apps Script(GAS) を使ってカスタムステップを作成できます。

また、外部サービスとの連携も充実しています。現在対応している主なサービスは以下の通りです。

  • CRM: Salesforce、HubSpot
  • プロジェクト管理: Asana、Jira、monday.com
  • マーケティング: Mailchimp
  • コミュニケーション: Slack

外部連携はWorkspace Marketplaceからインテグレーションをインストールするだけで利用可能です。ただし、一部のサービス(Salesforce、mondayなど)は、連携のためにヘルパーアプリのインストールが必要な場合があります。

導入前に押さえたい設計の考え方

Workspace Studioを使いこなすには、単にツールの操作方法を覚えるだけでなく、「どう設計するか」という視点が重要です。ここでは、効果的なエージェント設計のための考え方を解説します。

「人が動く」から「状態が動く」へ:状態管理ワークフローの発想

従来の業務フローは「人が次のステップを判断して動く」という設計でした。Workspace Studioでは、この発想を「状態が変わったらエージェントが動く」に切り替えることがポイントです。

例えば、経費申請のフローを考えてみましょう。従来は「申請者が申請→承認者が確認→経理が処理」という人ベースの流れでした。Studioでは「申請ステータス:申請中→承認済み→処理完了」という状態の変化をトリガーにして、それぞれのステップで必要なアクションを自動実行します。

この「状態管理」の発想で設計すると、以下のメリットがあります。

  • 進捗の可視化: 今どのステータスにあるか一目で分かる
  • 例外処理の明確化: 差し戻しや保留などの例外パターンも状態として定義
  • スケーラビリティ: 新しい承認ステップの追加も状態を増やすだけ

人間の判断と Gemini の判断の切り分け

「AIに何を任せて、何を人間が判断すべきか」これはAI活用の永遠のテーマです。Workspace Studioでの設計においても、この切り分けを明確にすることが成功の鍵となります。

Geminiに任せやすい領域

  • 分類・仕分け: メールのカテゴリ分け、優先度判定、センチメント分析
  • 要約・抽出: 長文の要約、請求書からの金額抽出、アクションアイテムの抽出
  • ドラフト生成: 返信文の下書き、レポートの雛形、通知メッセージ

人間が判断すべき領域

  • 最終承認: 金額の大きい決裁、人事に関する判断
  • 例外処理: イレギュラーなケース、ルールに当てはまらない状況
  • 顧客対応の最終確認: 重要顧客への返信、クレーム対応

設計のベストプラクティスとしては、「AIがドラフトを作成し、人間が確認・承認する」というパターンが多くのシーンで有効です。

セキュリティ・ガバナンス設計のポイント

企業でWorkspace Studioを導入する際、セキュリティとガバナンスは最も重要な検討事項です。安心して利用するために、以下のポイントを押さえておきましょう。

データ保護に関するGoogleのコミットメント

  • 顧客データは顧客の所有物
  • データは広告目的に使用されない
  • Studioで処理されるデータ(プロンプト、エージェントがアクセスするデータ)は、顧客ドメイン外でGoogleの一般AIモデルのトレーニングに使用されない
  • エンタープライズグレードのセキュリティ・プライバシー管理が適用
  • アクセス制御が尊重される(Studioは起動ユーザーがアクセス権を持つデータのみにアクセス可能)
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組織内での権限設計のポイント

  • エージェント作成権限: 誰がエージェントを作成できるか(全員/特定グループ)
  • 共有ポリシー: エージェントの共有範囲(個人/チーム/組織全体)
  • 外部連携の管理: どの外部サービスとの連携を許可するか
  • 監査ログ: エージェントの実行履歴の記録と確認

管理者は、Google管理コンソールの 「生成AI」→「Gemini for Workspace」 からStudioの機能を有効化・制御できます。組織単位やグループ単位での細かな権限設定も可能です。

ツール別 Google Workspace Studio 活用事例30選

ここからは、Workspace Studioの具体的な活用事例を Google環境で完結するもの を中心に30個紹介します。すぐに試せるものばかりなので、「自社でどう使えるか」のヒントを見つけてください。

Gmail活用:メール処理の自動化(10事例)

まずは最も身近なGmailを活用した事例から。毎日大量のメールに追われている方は、ここから始めるのがおすすめです。

  • 事例1: 未読メールの日次サマリー【公式テンプレート】 – 毎朝決まった時刻に、前日の未読メールをGeminiが要約してGoogle Chatで通知。1日の始まりに「今日対応すべきメール」を把握できます。
  • 事例2: 重要な人からのメール即時通知【公式テンプレート】 – 上司やクライアントなど、特定の送信者からメールが届いたらGoogle Chatで即座に通知。大事なメールを見逃しません。
  • 事例3: アクションアイテム付きメールの自動ラベル付け【公式テンプレート】 – Geminiがメール内容を分析し、「対応が必要」と判断したメールに自動でラベルを付与。後で対応すべきメールが一目瞭然に。
  • 事例4: フォローアップ用メールにスターを付ける【公式テンプレート】 – 返信や追加対応が必要なメールを自動でスター付け。フォローアップ漏れを防止します。
  • 事例5: メール内容の自動分類とラベリング – 受信メールをGeminiが「問い合わせ」「見積依頼」「クレーム」「情報共有」などに自動分類し、対応するラベルを付与。
  • 事例6: 緊急メールの優先通知 – メール本文をGeminiが分析し、「緊急」「至急」などの対応が必要と判断した場合のみGoogle Chatで通知。重要度でフィルタリング。
  • 事例7: 週次メールダイジェストの自動生成 – 毎週金曜日に、その週に受信した重要メールのダイジェストをGeminiが自動生成してGoogle Docsに保存。週報作成の下準備に。
  • 事例8: 特定キーワードを含むメールの抽出と通知 – 「契約」「締切」「請求」など、特定のキーワードを含むメールを検知してChatで通知。見落としがちな重要メールをキャッチ。
  • 事例9: メールからのタスク自動抽出 – メール本文からアクションアイテム(「○○を送付してください」「△△を確認してください」など)をGeminiが抽出し、Google Tasksに自動登録。
  • 事例10: 返信ドラフトの自動生成 – 定型的な問い合わせメールに対して、Geminiが返信ドラフトを自動生成してGmailの下書きに保存。確認して送信するだけ。

Forms × Sheets活用:データ収集と処理の自動化(6事例)

Google FormsとSheetsを組み合わせた自動化は、アンケートや申請業務で大活躍します。

  • 事例11: フォーム送信時の自動返信メール生成 – Googleフォームが送信されたら、回答内容に応じた返信メールをGeminiが自動生成。問い合わせフォームの一次対応を自動化。
  • 事例12: フォーム回答の自動要約と担当者通知 – フォーム送信をトリガーに、回答内容をGeminiが要約してGoogle Chatの担当スペースに通知。長文回答も一目で把握。
  • 事例13: アンケート結果の自動分析レポート – 定期的にSheetsのアンケート回答をGeminiが分析し、傾向やインサイトをまとめてGoogle Docsにレポート生成。
  • 事例14: 申請フォームの内容チェックと不備通知 – 申請フォームの回答をGeminiがチェックし、必要情報が不足している場合は申請者にメールで不備を通知。
  • 事例15: フォーム回答のカテゴリ別自動振り分け – 問い合わせフォームの内容をGeminiが「技術的質問」「料金について」「その他」などに分類し、Sheetsの該当シートに振り分け。
  • 事例16: 日次・週次でのフォーム回答サマリー配信 – 毎日または毎週、フォームの回答状況をGeminiがサマリー化してチームのChatスペースに配信。

Drive × Docs活用:ドキュメント処理の自動化(6事例)

Google DriveとDocsを活用した、ドキュメント処理の自動化事例です。

  • 事例17: ファイルアップロード通知と内容要約 – 特定フォルダにファイルがアップロードされたら、Geminiが内容を要約してGoogle Chatで通知。共有ドライブの新着を見逃さない。
  • 事例18: ドキュメント更新時の変更点サマリー – Google Docsが更新されたら、変更点をGeminiが要約して関係者にメール通知。長いドキュメントの変更把握を効率化。
  • 事例19: 議事録ドキュメントからアクションアイテム抽出 – 会議議事録がDriveに保存されたら、Geminiがアクションアイテムを抽出してGoogle Tasksに登録、関係者にChat通知。
  • 事例20: PDFアップロード → 内容抽出 → Sheets転記 – DriveにPDF(請求書、申請書など)がアップロードされたら、Geminiが必要情報を抽出してSheetsの管理表に自動転記。
  • 事例21: 複数ドキュメントの横断要約レポート生成 – 指定フォルダ内の複数ドキュメントをGeminiが横断的に分析し、要約レポートをDocsで自動生成。情報の集約に便利。
  • 事例22: ドキュメントの定期バックアップリマインダー – 重要ドキュメントの最終更新から一定期間が経過したら、更新・確認を促すリマインダーをChatで送信。

Calendar活用:スケジュール連動の自動化(4事例)

Google Calendarと連携した、スケジュールベースの自動化です。

  • 事例23: 会議前の準備リマインダーと関連資料通知 – 会議開始30分前に、会議の議題に関連するDrive内のファイルをGeminiがピックアップしてChatで通知。
  • 事例24: 会議後のフォローアップタスク自動生成 – 会議終了後、カレンダーの会議メモを元にフォローアップタスクをGoogle Tasksに自動登録。
  • 事例25: 週次スケジュールサマリーの自動配信 – 毎週月曜朝に、その週の予定をGeminiが要約してChatまたはメールで配信。1週間の見通しを立てやすく。
  • 事例26: 予定のダブルブッキングアラート – 新しい予定が追加された際、既存予定との重複をチェックしてアラート通知。スケジュール管理ミスを防止。

Sheets活用:データ分析と通知の自動化(4事例)

Google Sheetsのデータを活用した分析・通知の自動化です。

  • 事例27: Sheetsデータの定期レポート自動生成 – 毎週または毎月、Sheetsのデータを集計・分析してレポートをDocsで自動生成。定例レポート作成を効率化。
  • 事例28: 特定条件のデータ更新時にアラート通知 – Sheetsで特定の条件を満たすデータが追加・更新されたら(例:金額が一定以上)、Chatで即座に通知。
  • 事例29: 売上・KPIデータの日次サマリー配信 – 毎朝、Sheetsの売上やKPIデータをGeminiがサマリー化してチームChatに配信。数字の把握を習慣化。
  • 事例30: データの異常値検知とアラート – SheetsのデータをGeminiが分析し、通常と異なる傾向(急激な増減など)を検知したらアラート通知。

【発展編】外部ツール連携事例

Google環境で完結する事例をマスターしたら、外部ツールとの連携にも挑戦してみましょう。Workspace Marketplaceからインテグレーションをインストールすることで、以下のような連携が可能です。

  • Salesforce連携: Gmailの商談関連メールを検知してSalesforceのレコードを自動更新
  • Asana連携: メールやChatからタスクを抽出してAsanaに自動登録
  • Slack連携: Gmailの重要メール通知をSlackチャンネルにも配信

ただし、外部連携にはサブスクリプションやヘルパーアプリのインストールが必要な場合があるため、まずはGoogle環境内で自動化に挑戦してみることをおすすめします。

実際に作ってみたエージェント3選【初心者向け】

ここでは、実際にWorkspace Studioでエージェントを作成する流れを、 初心者でも5分で作れるシンプルな3事例 で解説します。いずれも2〜3ステップで完結するので、「自分にもできそう!」と思えるはずです。

事例1: 未読メールの日次サマリー【公式テンプレートで即完成】

ユースケース: 毎朝9時に、前日の未読メールをAIが要約してGoogle Chatで通知。1日の始まりに「今日対応すべきメール」を把握する。

エージェントの構成(3ステップ)

  • スターター: スケジュール – 毎日午前9時
  • ステップ1: Ask Gemini – 未読メールの内容を要約
  • ステップ2: Google Chat – 自分宛にサマリーを送信

作成手順

  1. Workspace Studio(studio.workspace.google.com)にアクセス
  2. テンプレート「Get a daily summary of unread emails」を選択
  3. 実行時刻を設定(デフォルトは平日朝)
  4. 「Turn on」をクリックして有効化

【完成したエージェント】

これだけで完成です!翌朝から、Chatに未読メールのサマリーが届くようになります。最初の1つ目のエージェントとして最適です。

「Notify me in chat」のMessage欄に、「おはようございます。昨日の未読メールの要約です。一日の準備にお役立てください。」のような文章を入れると、よりわかりやすくなるでしょう。

事例2: 経費・領収書メールの自動ラベル付け

ユースケース: 受信したメールをGeminiが分析し、「領収書」「請求書」「経費精算」などの経理関連メールを検知したら、自動で「経費」ラベルを付与する。

エージェントの構成(2ステップ)

  • スターター: Gmail – 新規メール受信時
  • ステップ1: Decide – 「このメールは領収書・請求書・経費精算に関する内容ですか?」
  • ステップ2: Gmail – 条件に合致したらラベル「経費」を付与

作成手順

  1. 「Create」から新規エージェントを作成
  2. スターターで「Gmail」→「New email received」を選択
  3. 「Decide」ステップを追加し、プロンプトに「このメールは領収書、請求書、または経費精算に関する内容ですか?」と入力
  4. 「Gmail」ステップを追加し、「Add label」で「経費」ラベルを指定
  5. 「Turn on」で有効化

【完成したエージェント】

月末の経費精算時に「経費」ラベルでフィルタすれば、関連メールが一覧で確認できます。経理担当者はもちろん、営業担当の経費管理にも便利です。

事例3: フォーム送信をChat通知+Gemで返信メール下書き作成【問い合わせ対応の高速化】

ユースケース: 問い合わせフォームが送信されたら、回答内容をGeminiが要約。さらに、FAQや会社情報を学習させたカスタムGemが返信メールを生成し、要約と返信をGoogle Chatで即時通知。

エージェントの構成(4ステップ)

  • スターター: Google Forms – フォーム送信時
  • ステップ1: Ask Gemini – 回答内容を要約
  • ステップ2: カスタムGem – FAQや会社情報を参照して返信メッセージを生成
  • ステップ3: Google Chat – 指定スペースに通知

作成手順

  1. 事前準備:Geminiでカスタム「Gem」を作成し、FAQ・返信テンプレート・会社情報・署名などを設定しておく
  2. 「Create」から新規エージェントを作成
  3. スターターで「Google Forms」→ 対象のフォームを選択
  4. 「Ask Gemini」ステップを追加し、プロンプトに「以下のフォーム回答を3行以内で要約してください」と入力。
  5. 「+Variables」からGeminiに入力したいフォームの項目を選択する。
  6. 「Ask Gem」ステップを追加し、作成したカスタムGemを選択。プロンプトに「以下の問い合わせに対する返信文を作成してください」と入力
  7. 「+Variables」からGemに入力したいフォームの項目を選択する。
  8. 「Google Chat」ステップを追加し、通知先のスペースを選択。「Message」欄でGeminiとGemの出力を選択する。
  9. 「Turn on」で有効化

【完成したエージェント】

Gemを使うメリット

カスタムGemにFAQや返信パターンを事前設定しておくことで、「よくある質問」には正確な回答を、「返信トーン」は会社の方針に合わせた文体を、毎回一貫した品質で生成できます。Chatで通知を受け取ったら、内容を確認してコピペ、送信するだけ。ゼロから返信を書く手間がなくなります。

Google Workspace Studio導入ステップと社内定着のコツ

Workspace Studioの機能や事例を理解したところで、次は「実際にどう導入するか」を具体的に見ていきましょう。

管理者が行うべき初期設定

Workspace Studioを組織で利用開始するには、管理者による初期設定が必要です。

ステップ1: リリーストラックの確認

Google管理コンソールで、組織のリリーストラック(Rapid Release / Scheduled Release)を確認します。Workspace Studioは2025年12月3日から段階的にロールアウトされているため、Scheduled Releaseの組織は少し遅れて利用可能になる場合があります。

ステップ2: Gemini / Studio機能の有効化

管理コンソールの 「生成AI」→「Gemini for Workspace」 にアクセスし、Workspace Studioを有効化します。組織単位やグループ単位での有効化も可能です。

ステップ3: Alpha機能の有効化(オプション)

最新のAlpha機能をテストしたい場合は、「Alpha features」パネルからGemini Alphaを有効化できます。

パイロットプロジェクトの選び方

いきなり全社展開するのではなく、まずはパイロットプロジェクトから始めることをお勧めします。成功するパイロットの選び方は以下の通りです。

理想的なパイロットの条件

  1. 定型的: ルールが明確で、例外パターンが少ない
  2. 繰り返し発生: 日次・週次など定期的に発生する業務
  3. 失敗しても影響が小さい: 本番業務に直接影響しない、またはリカバリーが容易
  4. 効果が測定しやすい: 時間短縮や処理件数など、定量的に効果を測定できる

おすすめのパイロット候補(本記事の30事例から)

  • 事例1: 未読メールの日次サマリー – リスクゼロで効果を体感できる
  • 事例3: アクションアイテム付きメールのラベル付け – 公式テンプレートですぐ始められる
  • 事例11: フォーム送信時の自動返信メール生成 – 問い合わせ対応の効率化を実感

エージェントの公開・共有と運用ルール

エージェントが完成したら、チームや組織への展開を検討します。その際に決めておくべき運用ルールをまとめます。

共有ポリシーの設計

  • 個人用: 作成者のみが使用(テスト段階)
  • チーム共有: 特定のグループに共有(部門展開段階)
  • 組織公開: 組織全体に公開(全社展開段階)

実行ログの確認と改善サイクル

Workspace Studioでは、各エージェントの実行履歴を確認できます。定期的に以下をチェックしましょう。

  • エラーが発生している実行がないか
  • 想定通りの結果が出ているか
  • 処理時間に問題がないか

デジライズでは、生成AIの導入研修を行っています。個別のミーティングで業務内容をヒアリングし、現場で本当に使えるAI活用法を一緒に考えるところからスタートします。実際に使えるように、AIの専門家が伴走いたしますので、AI担当者がいない企業様でもご安心ください。

まずは情報収集からでも歓迎です。導入の流れや支援内容をまとめた資料をこちらからご覧いただけます。

まとめ:Studioは「第二の業務インフラ」になり得るか

今回は、Googleの次世代AIエージェント構築プラットフォーム「Google Workspace Studio」について、その基本から応用まで徹底的に解説しました。

Workspace Studioは、単なる自動化ツールではありません。Gemini 3のAI能力を活用し、「考えて判断する」自動化を実現する、まさに次世代の業務プラットフォームです。しかも、Gmail、Sheets、Drive、Chat、Calendar、Formsなど、普段使っているGoogleサービスだけで完結するのが最大の強み。外部ツールの導入なしに、今日からすぐに始められます。

しかも、これだけの機能がWorkspaceプランに含まれているのですから、試さない手はありません。まずは公式テンプレートの「未読メールの日次サマリー」から始めてみてください。5分で設定できて、翌朝には効果を実感できますよ!

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。