チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

近年、ChatGPTなどの生成AIの登場・普及が世界的に話題となっているように、AIは人々の暮らしや仕事をより便利に・効率的にするツールとして大きな注目を集めています。

企業のさまざまな部門で、業務効率化や顧客体験の向上、意思決定の精度向上など、多くの用途でAIが活用されています。

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デジライズでは、AI活用を検討している企業の皆様に向けて、AI活用事例や導入のポイントをわかりやすくご紹介します。

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1. はじめに:OpenAIの驚きの買収劇とその背景

2025年5月21日、AIテクノロジー界に激震が走りました。ChatGPTで知られるOpenAIが、元アップルのデザイン責任者ジョニー・アイブが設立したハードウェアスタートアップ「io」を約65億ドル(約9300億円)で買収すると発表したのです。この驚くべき買収は、AI企業が単なるソフトウェア開発だけでなく、物理的なデバイスの世界にも本格参入する重要な転換点となりました。

OpenAIのCEOサム・アルトマンは、この買収によって「AIの時代にふさわしい新しい製品ファミリー」を生み出す意向を明らかにしています。特筆すべきは、ioが設立されてからわずか1年という短期間でこの大型買収が実現した点です。サム・アルトマンとジョニー・アイブが描く未来像とは何か、そして彼らの計画がテクノロジー業界にどのような変革をもたらすのか、徹底的に掘り下げていきましょう。

2. 「io」とは何か?ジョニー・アイブと彼のビジョン

「io」は2024年に設立されたハードウェアスタートアップで、アップルで30年近く働き、iPhone、iPod、Macなど数々の革新的デザインを生み出してきたジョニー・アイブによって創設されました。彼はアップルを2019年に退社した後、デザインスタジオ「LoveFrom」を設立し、さらに2024年にはioを立ち上げたのです。

ioの共同創設者には、アップル出身の優秀な人材が集結しています。スコット・キャノン(Scott Cannon)はMacとiPadの開発チームをリードし、エバンス・ハンキー(Evans Hankey)はアイブがアップルを去った後にその役割を引き継いだ人物です。また、タン・タン(Tang Tan)は長年iPhoneのデザインをリードしてきたエキスパートです。

ジョニー・アイブは自らの新しい挑戦について、「私がこの30年間で学んだすべてのことがこの瞬間に導いてくれた」と述べています。彼はioを通じて、「人間性を高める素晴らしい製品」の開発を目指していたことを明らかにしました。

アイブはインタビューの中で、iPhoneに対しても一定の懸念を示しています。「これらのものがもたらしたものに対して、私は大いに責任を感じている」と述べ、常に接続されたポケットのコンピュータであるスマホがもたらす不安や気晴らしについて言及しています。このような反省が、新たなデバイスのビジョンにつながっているようです。

3. サム・アルトマンとジョニー・アイブの関係性

Sam & Jony introduce io

サム・アルトマンとジョニー・アイブの関係は、約2年前から始まりました。ジョニー・アイブは、21歳の双子の息子の一人チャーリーがChatGPTに熱中している姿を見て興味を持ち、アルトマンと連絡を取ったといいます。その後、二人は友人関係を築き、AIテクノロジーの可能性について議論を重ねていったのです。

アイブは、AIの可能性に魅了されて2024年にioを設立し、AIに適したハードウェア製品の概念化に取り組み始めました。2025年初頭までには、彼とアルトマンは新世代のデバイスの開発に向けてパートナーシップを結びたいという願望を明確にしていました。

アルトマンは「素晴らしいツールを作るには、テクノロジー、デザイン、人間と世界の理解が交差する部分での作業が必要です。ジョニーと彼のチームのようにこれを行える人はいません。彼らがプロセスのあらゆる側面に注ぐケアの量は並外れています」と述べています。

一方、アイブも「サムとOpenAIおよびioのチームのビジョンと価値観は、まれなインスピレーションです」と語り、この協力関係への期待を示しています。

二人の共同声明には、次のような言葉も記されています。「コンピュータは今、見て、考えて、理解しています。しかし、この前例のない能力にもかかわらず、私たちの経験は従来の製品とインターフェースによって形作られたままです」。この言葉からは、従来のテクノロジー体験を根本から変えようとする野心が見て取れます。

4. 買収の詳細:9300億円の大型投資の内訳

今回の買収は、OpenAIにとって最大規模のものであり、全額株式による取引で総額約65億ドル(約9300億円)と評価されています。ニューヨーク・タイムズの報道によると、OpenAIはすでに2024年末の時点でioの株式の23%を所有しており、今回の買収で残りの株式を約50億ドルで取得することになります。これに加えて、約14億ドルの現金も支払われるとされています。

買収によって、ジョニー・アイブと彼のデザインスタジオLoveFromは独立を保ちながらも、OpenAIとioの両方に対して深いデザインと創造的責任を担うことになります。一方、ioの共同創業者であるスコット・キャノン、エバンス・ハンキー、タン・タンはOpenAIの従業員となり、製品担当副社長のピーター・ウェリンダー(Peter Welinder)に報告しながらioの部門を監督することになります。

買収により、約55人のハードウェアエンジニア、ソフトウェア開発者、製造の専門家がOpenAIに加わることになるとされています。この人材獲得は、OpenAIがハードウェア領域で実績のある人材を確保する重要な戦略となっています。

Futurismの報道によると、ioの主要投資家には、スウェーデンのテック起業家セバスチャン・シェミアトコフスキ(Sebastian Siemiatkowski)の家族投資会社や、元グーグルデザイナーのルーク・ロブレフスキ(Luke Wroblewski)が含まれていたとされ、OpenAI買収前のioへの投資に関しては一部インサイダー情報に基づいた投資ではないかとの疑念も示されています。

5. 次世代AI端末の可能性:何が開発されるのか?

ioとOpenAIが開発する次世代デバイスは、具体的にどのようなものになるのでしょうか。アルトマンとアイブは、2026年までに詳細を共有したいとしながらも、現時点ではその詳細について多くを語っていません。しかし、これまでの報道や関係者の発言から、いくつかの特徴が見えてきています。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アルトマンはOpenAIの社内説明会で以下のような特徴を持つデバイスを開発していることを明かしています:

  1. ポケットサイズで携帯可能 – デスクに置くことも可能
  2. 画面がない – 従来のスマートフォンとは大きく異なる設計
  3. 周囲の環境を認識 – AIによる状況理解能力を持つ
  4. コンテキストを理解 – ユーザーの生活や環境を常に認識
  5. 目立たない存在感 – 日常生活に自然に溶け込む設計

アルトマンはこのデバイスを「MacBook ProとiPhoneの次にデスクに置く第3の主要デバイス」と表現しています。また、彼は「新しいものを1億台出荷するのに、これまでのどの企業よりも早く出荷できるようにする」という野心的な計画も明らかにしています。

著名なアップルアナリストであるミンチー・クオ(Ming-Chi Kuo)は、ioの製品が首にかけて身につけられるほど小型でエレガントなデバイスになると予想しています。「iPod Shuffleのように小型でエレガント」という表現を用いており、身に着けるタイプのウェアラブルデバイスになる可能性を示唆しています。

しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、アイブはウェアラブルデバイスのアイデアに懐疑的であり、このプロジェクトの一部としてそれを採用する可能性は低いとされています。アルトマンも「メガネではない」と述べ、既存のスマートグラスとは異なるアプローチを取ることを示唆しています。

6. 画面なしデバイスの将来性

サム・アルトマンとジョニー・アイブが開発中のデバイスの最も興味深い特徴の一つは、画面を持たない設計です。これは私たちが慣れ親しんだスマートフォンやタブレットとは根本的に異なるアプローチであり、AIテクノロジーがどのように私たちの日常生活に溶け込むかを再定義しようとする試みです。

アルトマンは、現代人がスクリーンに費やす時間の多さに批判的な見方を示しています。「現在の技術との関係に満足していない。ニューヨークの混雑した通りで押し合いへし合いされているような感じ、あるいはラスベガスで通知やまばゆい光に攻撃されているような感じがする」と彼は述べています。このビジョンでは、AIが騒音の中から意味を見出す手助けをすることが目標とされています。

画面なしデバイスの具体的なインターフェースとしては、音声認識やカメラを通じた環境認識が中心になると予想されています。ユーザーは音声コマンドでデバイスに指示を出し、AIがそれに応じて適切な情報を提供したり、タスクを実行したりする形になるでしょう。

しかし、画面なしデバイスには前例があります。2024年2月に発売されたHumane AI Pinは、画面を持たないAIデバイスとして大きな期待を集めましたが、商業的に失敗しました。CNETのような専門メディアは「既に私たちのポケットにあるものを無視した」と批判しています。

CCS Insightのチーフアナリスト、ベン・ウッドは「Humane AIのような製品に対する懐疑論があるのは当然のことです。それは技術愛好家の想像力をとらえましたが、結局は過度の約束と実行不足の典型例となりました」と述べています。

アイブ自身もBloombergのインタビューでHumane PinやRabbit R1などのAIハードウェア製品を「非常に貧弱な製品」と評し、「製品に表現された新しい思考法の欠如がある」と批判しています。

では、OpenAIとioはどのようにしてこの課題を乗り越えるのでしょうか。それは、AIテクノロジーの進化と、ジョニー・アイブの30年にわたるユーザー体験設計の専門知識の融合にかかっています。GPT-5以降の高度なAIモデルは、より自然な会話と状況理解を可能にし、画面に依存しないインターフェースをより実用的なものにする可能性があります。

7. スマートフォンの未来への挑戦

アルトマンとアイブのビジョンは、2007年にiPhoneが登場して以来、人々の代表的な個人デバイスとなってきたスマートフォンの時代を超えたところにあります。彼らが成功すれば—これは非常に大きな「もし」ですが—「アンビエントコンピューティング」として知られる新しい時代を促進する可能性があります。

アンビエントコンピューティングとは、スマートフォンでタイピングや写真撮影をする代わりに、ペンダントやメガネなどの未来のデバイスがAIを使用してリアルタイムで世界を処理し、質問に答え、画像や音を分析するというビジョンです。これは、シームレスな方法で行われ、私たちの生活に溶け込むものです。

アルトマンは以前、このようなビジョンを追求するHumaneという会社に投資していました。しかし、その製品がフロップした後、スタートアップは長く続きませんでした。

「20年間、次の大きなものを待っていました」とアルトマンは述べています。「私たちは、長い間使ってきた従来の製品を超えるものを人々に提供したいのです。」

ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、アイブはiPhoneに対する一定の不満を表明し、それがアルトマンとチームを組むきっかけになったと述べています。「これらのものがもたらしたものに対して、私は多くの責任を負っている」と彼は言い、ポケットにあるコンピュータと常に接続されていることで生じる不安や気晴らしを指しています。

このビジョンは、「Appleが依然としてAIを把握できていない」という批判が高まる中で浮上してきました。Bloombergのレポートによれば、Apple IntelligenceとSiriのAI戦略は「非常に間違っている」とされています。

Apple、Google、Meta、Microsoftなどの大手テック企業はすべてAIハードウェアの開発に取り組んでいますが、OpenAIとioのアプローチは、人間がテクノロジーとどのように相互作用するかについての根本的な再考を示唆しています。

8. 業界へのインパクト:アップルとグーグルへの影響

OpenAIによるioの買収は、テクノロジー業界の勢力図を大きく変える可能性を秘めています。特にアップルとグーグルのような大手企業にとって、この動きは無視できない影響をもたらすでしょう。

まず、アップルへの影響を考えてみましょう。iPhoneの生みの親であるジョニー・アイブがアップルを離れ、OpenAIと組んで次世代デバイスを開発するということは、アップルの革新性に対する直接的な挑戦です。アップルは長年、ハードウェアとソフトウェアの優れた統合で知られてきましたが、AIの進化に対応する速度では批判を受けています。Apple Intelligenceの開発は進んでいるものの、ChatGPTのような汎用AIの統合においてはOpenAIに遅れを取っています。

アップルは2026年末に独自のスマートグラスをリリースする計画だと報じられていますが、それがグーグルのAndroid XRメガネや他の競合製品のAI能力に匹敵するかどうかは不明です。

グーグルにとっても、OpenAIの動きは脅威となります。グーグルは検索エンジンとしての支配的地位とAndroidを通じたモバイル市場でのシェアを誇りますが、AIの台頭により、情報へのアクセス方法が根本的に変わりつつあります。ユーザーがブラウザで検索する代わりに、AIアシスタントに直接質問するようになれば、グーグルの広告収入モデルに影響が出る可能性があります。

AI-Supremacyの記事によれば、「OpenAIが規模を拡大するにつれて、グーグル、アップル、メタ、マイクロソフトの時価総額を減少させる可能性がある」と指摘されています。また、「アップルとグーグルの両方に挑戦している」OpenAIの軌道についても言及されています。

業界アナリストのトーマン・フッソン(Thoman Husson)は、「スマートフォン(およびハードウェア)は規模と範囲に関するボリュームプレイである」と指摘し、「アップルはこのマラソンレースに勝つのに最適な位置にあると思う」と述べています。しかし、ジョニー・アイブとサム・アルトマンの組み合わせのポテンシャルは計り知れないものがあります。

9. 製品発売までのタイムライン

OpenAIとioの次世代AIデバイスは、いつ市場に登場するのでしょうか。サム・アルトマンは2026年後半までにこの製品をリリースしたいという野心を持っています。この目標は、AIと物理デバイスの融合においてリーダーシップを確立するための重要なマイルストーンとなります。

アナリストのミンチー・クオによると、量産は2027年に予定されているとのことです。これは、さらなるリークやレンダリング、そして憶測のための十分な時間を提供することになります。

このタイムラインは、競合他社が同様のデバイスを模倣しようとする前に市場に参入したいというOpenAIの願望を反映しています。実際、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、アルトマンとアイブは競合他社が彼らの製品を一般に公開される前にコピーしようとするという懸念から、最初のデバイスに関する情報を厳重に秘密にしています。

また、製品開発のタイムラインに影響を与える可能性のある要素として、OpenAIの収益とコスト構造があります。ニューヨーク・タイムズによれば、OpenAIは2025年に約37億ドル、2026年に約116億ドルの売上を予想しています。また、WindsurfというAIプログラミングツールの買収のために約30億ドルを投じる交渉もしているとされています。

AIモデルの開発と運用にはアイが膨大なコストがかかり、OpenAIは収益を増やすためのプレッシャーを受けています。アルトマンは、ioを買収するための資金調達について質問されたとき、「私たちは大丈夫です。心配してくれてありがとう」と答えています。

10. 消費者にとってのメリットと新たなテクノロジーエクスペリエンス

OpenAIとioが開発中のAIデバイスは、消費者にとってどのようなメリットをもたらす可能性があるのでしょうか?現時点では詳細は不明ですが、いくつかの可能性を探ってみましょう。

1. スクリーンタイムの削減: アルトマンとアイブは共に、現代人がスクリーンに費やす時間の多さに懸念を示しています。新デバイスは、スマートフォンの画面を絶えず見る必要性を減らし、より自然な方法でデジタル情報にアクセスできるようにする可能性があります。

2. コンテキスト認識のアシスタンス: このデバイスは、ユーザーの環境と状況を常に認識し、関連情報を予測して提供できる可能性があります。例えば、会議に入るとその会議の内容を把握し、必要な情報を自動的に準備するなどが考えられます。

3. シームレスなAI統合: 最新のAIモデル(恐らくGPT-5以降)に直接アクセスでき、複雑なタスクや質問に即座に対応できるようになるでしょう。

4. プライバシーの向上: 画面をのぞき込む必要がないため、公共の場での情報アクセスにおけるプライバシーが向上する可能性があります。

5. デジタルウェルビーイングの促進: アイブの言葉を借りれば、iPhoneのような従来のデバイスがもたらした「意図しない結果」を修正し、テクノロジーとの健全な関係を築くのに役立つかもしれません。

アルトマンは「人間性を高める素晴らしい製品」を作ることを目標としていると述べています。これは単なるテクノロジーの進化を超えて、私たちの生活の質を向上させるためのツールとしてのテクノロジーというビジョンを示しています。

ジョニー・アイブは「30年前にアメリカに移住したときのことを思い出します。デザイナーとして、人間性を向上させる素晴らしい製品を作るために尽力する人々と協力するため、シリコンバレーのわくわくするような無邪気な楽観主義に引かれました」と述べています。彼はこの新しい挑戦を通じて、テクノロジーの楽観的なビジョンを取り戻そうとしているのかもしれません。

11. OpenAIの今後の展望

ioの買収は、OpenAIにとってより大きな戦略の一部であるように見えます。AI-Supremacyの記事によれば、OpenAIはAIハードウェアデバイスの開発だけでなく、ソーシャルメディア製品の開発にも取り組んでいるとされています。これは、AIインターフェース企業としての現在の地位から、より包括的なテクノロジー企業への進化を示唆しています。

アルトマンはioの買収がOpenAIの価値を1兆ドル増加させる可能性があると示唆しています。これは、物理的なデバイスを通じてAIの採用を加速させるという彼の信念を反映しています。

OpenAIの財務見通しについても注目されています。同社は2025年に約37億ドル、2026年に約116億ドルの売上を予想しており、2029年までに収益性を達成することを目指しています。これらの目標を達成するためには、ChatGPTのようなソフトウェア製品だけでなく、ハードウェアも含めた複数の収益源が必要になるでしょう。

また、OpenAIは現在の非営利から営利企業への構造変化も模索しています。2015年に非営利組織として設立されたAI研究所は、投資家から資金を調達しやすくするために、営利企業として再構築しようとしています。ニューヨーク・タイムズによれば、年末までに再構築しなければ、ソフトバンクの投資額が半減する可能性があるとのことです。

さらに、OpenAIはWindsurfというAIプログラミングツールを約30億ドルで買収する交渉も行っているとされています。これらの大型買収は、OpenAIが単なるAI研究所から総合テクノロジー企業へと急速に進化していることを示しています。

OpenAIのハードウェア製品が発売されれば、アップル、グーグル、メタなどの大手テック企業との直接競争が始まることになります。AI-Supremacyの記事は「OpenAIはハードウェアの実際の経験なしで、アップル、メタ、グーグルからのAIデバイスと真正面から競争することになる」と指摘しています。

12. まとめ:テクノロジー業界の大転換点

OpenAIによるioの買収は、AIとハードウェアの融合における新しい時代の始まりを告げる重要な出来事です。サム・アルトマンとジョニー・アイブという二人の業界の巨人が力を合わせ、私たちがテクノロジーとどのように関わるかを根本から再考しようとしています。

彼らが目指しているのは、単なる新しいガジェットではありません。彼らのビジョンは、2007年のiPhone発売以来の最も重要なテクノロジーの転換点となる可能性があります。画面に依存しない、より自然でシームレスなテクノロジーインターフェースは、私たちのデジタル生活の質を根本的に変える可能性を秘めています。

しかし、課題も大きいです。Humane AI PinやRabbit R1などの前例が示すように、革新的なAIハードウェアの開発と商業的成功の間には大きな隔たりがあります。OpenAIにはソフトウェア開発の専門知識はありますが、ハードウェア製造の経験はほとんどありません。また、消費者が画面のないデバイスを受け入れるかどうかも不明です。

それでも、ジョニー・アイブの卓越したデザインセンスとOpenAIの最先端AI技術の組み合わせは、これまでにない可能性を秘めています。CCS Insightのアナリスト、ベン・ウッドが述べるように、「市場を破壊する製品を提供してきたジョニー・アイブの素晴らしい実績を考えると、彼に反対するのは愚かでしょう」。

アルトマンとアイブが共に描く未来が実現するのか、それとも単なる野心的な夢で終わるのか。答えは2026年から2027年にかけて明らかになるでしょう。

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。

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