チャエン

株式会社デジライズ 代表取締役

チャエン

「強すぎて公開できないAIがあるらしい」——テレビやSNSでClaude Mythos(クロード・ミュトス)の名前を聞いて検索したら、出てくる記事はゼロデイ脆弱性、エクスプロイト、ベンチマーク……。そっと画面を閉じた方のための記事です。

私はこのAIを発表当日から追いかけて何本も記事を書いてきましたが、今回は専門用語を一切使わずに説明することだけを目的にします。読み終わる頃には、ニュースが何を騒いでいるのか、自分の言葉で人に説明できるようになっているはずです。


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Claude Mythosは何をするAIなのか

Claude Mythosは何をするAIなのか

Claude Mythos(クロード・ミュトス)は、ChatGPTで知られるOpenAIのライバル企業・Anthropic(アンソロピック)が2026年4月に発表したAIです。「ミュートス」「クロードミトス」と表記されることもありますが、すべて同じものを指します。

このAIがやることは、一言でいうとソフトウェアの欠陥探しです。

スマホのアプリも、銀行のシステムも、すべて人間が書いたプログラムで動いています。人間が作るものなので、どこかに必ず見落とし——セキュリティの「穴」があります。ニュースでは「脆弱性(ぜいじゃくせい)」という言葉で報じられるものです。この穴を悪意のある人に先に見つけられると、情報を盗まれたり、システムを乗っ取られたりします。

Claude Mythosは、この穴を人間の専門家より速く、大量に見つけてしまうAIです。実際に、27年間世界中の誰にも見つけられなかった欠陥を発見した実績があります。世界トップクラスの専門家が見落とし続けたものを、AIが見つけた——これが「すごい」と騒がれている理由です。

なぜ「強すぎて公開できない」と言われるのか

なぜ「強すぎて公開できない」と言われるのか

ここがこのAIの一番おもしろいところです。普通、企業は新製品を発表したら一人でも多くの人に使ってほしいはずです。ところがAnthropicは、Claude Mythosを一般公開していません

理由は、能力の「使い道」にあります。

セキュリティの穴を見つける能力は、それ自体に善悪がありません。システムを直す人が使えば守りの道具になり、攻撃したい人が使えば最強の攻撃ツールになります。包丁が料理にも犯罪にも使えるのと同じ構図です。

Claude Mythosは穴を見つける能力が高すぎるため、誰でも登録して使える状態にすると、世界中の攻撃者に最強の道具を配ることになってしまいます。だからAnthropicは「公開しない」という、AI業界では異例の判断をしました。

ChatGPTや通常のClaudeのように、アプリを入れれば誰でも使える——Claude Mythosはそういう存在ではない、と覚えておいてください。

いま誰が使えるのか

いま誰が使えるのか

では、お蔵入りになっているのかというと、そうではありません。Anthropicは「信頼できる組織にだけ、守りの目的に限定して貸し出す」という方法を取っています。この取り組みには「Project Glasswing(プロジェクト・グラスウィング)」という名前が付いています。

最初はAppleやMicrosoft、Googleといった巨大テック企業を中心とした約50の組織だけが対象でした。そして2026年6月、新たに約150の組織(15を超える国々)が加わり、合計でおよそ200の組織まで広がることが発表されました。新たに加わるのは、電力・水道・医療・通信といった、生活に直結するインフラを支える組織です。

つまり今は、「発電所や病院のシステムの穴を、攻撃者より先にAIが見つけて直す」という使い方が、世界中で静かに進んでいる段階です。

残念ながら、個人はまだ使えません。Anthropicは安全に使える仕組みづくりを進めながら、提供する範囲を少しずつ広げている最中です。

私たちの生活にはどう関係するのか

私たちの生活にはどう関係するのか

「自分は使えないなら関係ない」と思うかもしれませんが、実は逆です。

あなたが毎日使っている銀行のアプリ、病院の予約システム、電気や水道——これらを支えるシステムの欠陥が、これからAIによって先回りで見つけられ、修理されていきます。あなたが何かをする必要はなく、裏側で社会が少しずつ安全になっていく。これがClaude Mythosのニュースの本質です。

もう一つ、仕事への影響もあります。AIが「守る側」に使われ始めたということは、いずれ「攻める側」も同じレベルのAIを手にするということです。企業のセキュリティ対策やAIへの理解は、もう情報システム部門だけの話ではなくなりつつあります。あなたの職場でも「AIで何が変わるのか」を知っている人の価値は、確実に上がっていきます。

もっと詳しく知りたくなった方へ

もっと詳しく知りたくなった方へ

最後に、この記事の内容を3行でまとめます。

  • Claude Mythosは、ソフトウェアのセキュリティの穴を人間より速く見つけるAI
  • 能力が高すぎて悪用が怖いので、一般公開されていない
  • いまは世界の信頼できる組織だけが、守りの目的で使っている

ここまで読んで「実際にどれくらいすごいのか、数字や実績で知りたい」と思った方は、以下の記事で発見実績やAnthropicの狙いを詳しく解説しています。

Claude Mythos(クロード・ミュトス)とは?何がすごいのか・公開されない理由・最新動向をわかりやすく解説

Claude Mythos(クロード・ミュトス)とは?何がすごいのか・公開されない理由・最新動向をわかりやすく解説

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この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社デジライズ 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。