
ChatGPTと並ぶ有力な生成AIであるClaudeに、新機能が登場しました。これまでスライドやドキュメントはリンク共有しかできませんでしたが、ついにExcel、PowerPoint、Word、PDF形式のファイルを直接生成・編集できるようになったのです。
この新機能は、営業資料作成からデータ分析レポートまで、ビジネスシーンでの活用幅を大幅に拡大します。本記事では、実際にClaude ファイル作成機能を使用し、営業資料や財務分析データを生成する様子を詳しくご紹介します。プロンプトの具体例も交えながら、実務での活用方法を解説していきます。
目次
Claudeとは?
AI界で独自のポジションを築いているのがAnthropic社が開発した「Claude(クロード)」です。ChatGPTやGeminiと並ぶ主要な生成AIでありながら、安全性と倫理性を重視した独特のアプローチで注目を集めています。
Claudeの概要
Claudeは、OpenAIの元幹部らによって2021年に設立されたAnthropic社が開発した大規模言語モデルです。現在は”Claude Opus 4.1″が最新モデルとして提供されています。
Claudeの主要な特徴
- Constitutional AI:独自の倫理フレームワークによる安全性重視の設計
- 長文処理能力:最大100万トークンの大容量コンテキストウィンドウ
- 自然な日本語対応:丁寧で論理的な文章生成に優れる
- 多様なファイル形式対応:PDF、画像、CSV等のアップロードと解析が可能
特に注目すべきは「Constitutional AI」と呼ばれる独自技術で、これは人間が定めた原則に基づいてAIが自分自身で倫理的な判断基準を学習し、有害な出力を自動的に回避する仕組みです。この技術により、企業環境での安心した利用が可能になっています。
ChatGPT、Geminiとの違いと独自の強み
主要な競合サービスとの比較において、Claudeは明確な差別化ポイントを持っています。
項目 | Claude | ChatGPT | Gemini |
---|---|---|---|
開発思想 | 安全性・倫理性重視 | 汎用性・利便性重視 | Google連携・最新情報重視 |
得意分野 | 長文分析・論理的思考 | 創作・対話・プログラミング | 検索・リアルタイム情報 |
文章品質 | 丁寧で構造化された表現 | 自然で親しみやすい | 簡潔で事実重視 |
Claudeの独自の強み
1. 高度な分析・推論能力
複雑な問題に対して段階的に思考を整理し、論理的な結論に導く能力に長けています。ビジネス分析や戦略立案など、深い思考が求められる場面で威力を発揮します。
2. 企業レベルのセキュリティ意識
Constitutional AIにより、機密情報の取り扱いや企業倫理に配慮した回答を自動的に生成します。コンプライアンスが重視される企業環境での利用に適しています。
3. 丁寧で品質の高い日本語
他のAIと比較して、より自然で丁寧な日本語表現を生成する能力に優れており、対外的な文書作成や顧客対応での活用に向いています。
企業向けプランと料金体系
Claudeは個人から大企業まで幅広いニーズに対応する料金体系を提供しています。
個人向けプラン
- Free(無料):基本的な対話機能、月間利用制限あり
- Pro(月額$20):優先アクセス、高性能モデル利用、使用量上限拡大
- Max(月額$100-$200):大容量利用、最新機能への早期アクセス
法人向けプラン
プラン | 月額料金 | 主要機能 | 対象規模 |
---|---|---|---|
Team | $25/ユーザー | チーム共有機能、管理ダッシュボード | 中小企業・部署単位 |
Enterprise | 要お問い合わせ | SSO、高度な管理機能、カスタマイズ | 大企業・全社導入 |
特にEnterpriseプランでは、以下の企業向け機能が提供されます
- シングルサインオン(SSO)統合
- 詳細な利用状況分析とレポート
- データ保護とプライバシー管理
- 専任サポートチームの提供
- カスタムモデルの開発支援
今回紹介するファイル作成機能は、これらのMax, Enterprise, Teamプランで提供が開始されており、特にTeam・Enterpriseプランでは組織レベルでの活用が期待されています。
Claudeに新登場「ファイル作成機能」とは?
Anthropic社のClaudeに追加された「ファイル作成機能」は、従来のテキストベースの対話型AIの利便性を進化させる画期的な機能です。ユーザーが自然言語で指示を出すだけで、プロフェッショナルなビジネス文書を瞬時に生成できるようになりました。
直接生成できる形式(PPTX/Excel/Word/PDF)
Claudeのファイル作成機能では、以下の主要ビジネスファイル形式に対応しています。
- Excel(.xlsx):数式付きの財務モデル、データ分析、チャート作成
- PowerPoint(.pptx):営業資料、企画提案書、研修資料
- Word(.docx):レポート、議事録、仕様書、契約書ドラフト
- PDF:最終版文書、配布用資料、アーカイブ文書
これまではリンク共有しかできず、セキュリティに問題があったため、ダウンロード可能な形式でのアウトプットにより実務で利用しやすくなりました。各ファイルには適切な書式設定、数式、グラフ、テーブルが組み込まれ、そのまま業務で使用できる品質を保持しています。
提供プラン(Max・Team・Enterprise→Proへ順次展開)
ファイル作成機能の提供状況は以下の通りです。
プラン | 提供状況 | 設定方法 |
---|---|---|
Enterprise | 提供開始済み | 組織管理者が機能を有効化 |
Team | 提供開始済み | デフォルトで有効(個人設定で調整) |
Max | 提供開始済み | 個人設定から有効化 |
Pro | 数週間内に提供予定 | 順次ロールアウト中 |
Enterprise プランでは、セキュリティ上の理由から組織レベルでの管理が必要となっており、管理者による事前の機能有効化が必須です。Team プランではデフォルトで有効化されているものの、個人レベルでの設定変更が可能です。
基本的な利用フロー(Experimental設定→保存→編集)
Claude ファイル作成機能を使用するための基本的なワークフローは以下の通りです。
Step 1:機能の有効化
- Claudeにログイン後、「設定」→「機能」→「実験的機能」に移動
- 「Upgraded file creation and analysis」を有効化
Step 2:ファイル生成の指示
- チャット画面で具体的なファイル作成指示を入力
- 必要に応じて参考データやテンプレートをアップロード
- Claudeがファイルを生成
Step 3:ファイルの取得と活用
- 生成されたファイルをダウンロード
- Microsoft 365環境での編集・共有
この一連のプロセスにより、従来数時間かかっていた資料作成作業を数分に短縮できます。
【実演】Claudeでファイルを生成してみた
実際にClaude ファイル作成機能を使用して、ビジネスでよく使われる3つの文書タイプを生成してみました。それぞれの生成結果を詳しくご紹介します。
投影資料(PowerPoint:PPTX)を数分で生成
Youtube撮影に使用するプレゼンテーション資料を作成してみました。今回は、AirPods Pro3についてのプレゼン資料で試しました。
生成結果の一部抜粋

Claudeは指示から約3分でPowerPointファイルを生成し、各スライドには適切な視覚的要素とメッセージが配置されていました。ManusやGensparkに比べてスッキリとした印象のスライドが完成しました。PowerPointやGoogleスライドに移す際も、全くずれがなく快適に使用できました。
※使用したプロンプトはこちらのフォームの回答特典として配布しております!
https://go.pardot.com/l/1097692/2025-03-09/kp1dw7
Claudeの使い方を調べてWord文書に整理→PDFで出力も可能
次に、Claudeの使用方法をまとめたマニュアル作成を依頼しました。

Word文書も、かなり見やすいレイアウトで生成されました。適切な見出し構造、番号付きリスト、表組み、そして図表挿入位置の明示まで含まれており、そのまま配布できる完成度でした。
さらに、これで作成したWordファイルをPDFとしてダウンロードすることもできます。今回は、以前に作成した議事録をPDFにしました。

外部に共有する際にとても重宝する機能になりそうです。
Excel①競合財務分析を自動で表・グラフに
続いて、米国テック企業の財務データを分析するExcelファイルの生成を試みました。

Claudeはリサーチ機能も優れており、複数タブにわたって、グラフにしてビジュアライズもされて出力されました。
Excel②ガントチャート
最後に、Claudeのチーム導入に関するタスクをガントチャートで出力させました。

色使いも自然で非常に見やすい形で出力されました。これはかなり使い勝手が良さそうです。
Claudeファイル作成機能の強み
Claude ファイル 作成機能が他のAIツールと一線を画す理由は、単なる文書生成を超えた包括的なソリューション提供能力にあります。
既存Office環境(Microsoft 365)への親和性
日本企業の多くがMicrosoft 365環境を導入している現状において、Claudeのファイル作成機能は極めて高い互換性を誇ります。
Office連携のメリット
- 生成ファイルがネイティブOffice形式(.xlsx、.pptx、.docx)
- 既存のワークフローにシームレスに統合
- チーム共有やバージョン管理が従来通り可能
従来のAIツールでは、HTMLやMarkdown形式での出力が主流でしたが、Claudeは最初からビジネス標準形式で出力するため、追加の変換作業が不要です。これにより、「AI生成→手動変換→社内共有」という面倒なプロセスを「AI生成→即座に活用」という簡潔なフローに短縮できます。
Google Driveへの直接保存でワークフローに組み込みやすい
Claudeのファイル作成機能では、生成したファイルを直接Google Driveに保存することが可能です。この機能により、リモートワークやハイブリッドワークが一般化した現代のビジネス環境において、場所を選ばずにファイルにアクセスし、即座にチームメンバーと共有できる環境が実現します。
定型資料やグラフ付きレポートまで作成可能
Claudeの真価は、単純な文書作成を超えた高度な分析・可視化機能にあります。
高度な機能例
- 複雑な財務モデリングとシナリオ分析
- 統計的データ分析とトレンド予測
- インタラクティブなダッシュボード作成
- 自動更新機能付きレポートテンプレート
- カスタマイズ可能なグラフ
- チャート生成
特に注目すべきは、単なるスタティックな文書ではなく、データ入力に応じて自動更新される文書を作成できる点です。これにより、月次レポートや定期的な分析資料を一度設定すれば、以降はデータ更新だけで最新の分析結果を得られます。
Claudeのセキュリティ|Manus/Gensparkと比較
企業でAIツールを導入する際、最も重要な検討事項の一つがセキュリティとデータ管理です。ここでは、資料作成AIとして人気なClaude、Manus、Gensparkの3つのAIサービスについて、セキュリティ面での特徴を客観的に比較します。
Claude(Anthropic)の安心ポイント
AnthropicのClaudeは、AI安全性研究に特化した企業が開発したことから、セキュリティ面で高い信頼性を誇っています。
主要なセキュリティ特徴
- Constitutional AI:安全性を重視した独自のAI開発手法を採用
- データ保持ポリシー:有料プランでは入力データを学習に使用しない明確な方針
- 暗号化通信:全ての通信で暗号化を実施
- アクセス制御:Enterprise プランでは組織レベルでの詳細な権限管理
- 監査ログ:Enterpriseで監査ログをエクスポート可(過去180日)
特にファイル作成機能においては、処理がサンドボックス環境で実行されるため、システムへの不正アクセスリスクが最小化されています。
Manusのデータ管理とリスク要因
AIエージェントManusについては、以下の特徴とリスク要因が指摘されています。
主要なセキュリティ特徴
- サーバー所在地:シンガポール
- 法的管轄:シンガポール法に基づく運営
- データ保持期間:明確な削除ポリシーが不透明
企業導入時の考慮点
項目 | リスク評価 | 対策 |
---|---|---|
データ主権 | 中程度 | 機密情報の入力制限 |
規制対応 | 高 | 法的要件の事前確認 |
透明性 | 中程度 | データ利用規約の詳細確認 |
Gensparkのデータ管理と課題
主要なセキュリティ特徴
- SOC2準拠:国際的なセキュリティ基準をクリア
- データ保存オプション:ユーザーが選択可能な保存設定
- 利用ログ管理:ダッシュボードでの透明な使用状況確認
- オプトアウト機能:学習データ利用からの完全除外が可能
セキュリティ比較表
サービス | 本社所在地 | 主要認証 | データ利用ポリシー | 企業適用度 |
---|---|---|---|---|
Claude | アメリカ | SOC2、GDPR準拠 | 有料版は非学習 | 高 |
Manus | シンガポール | 未確認 | 不透明な部分あり | 中 |
Genspark | アメリカ | 未確認 | オプトアウト可能 | 中 |
これらの比較から、企業の機密情報を扱う用途においては、Claude が相対的に安全性の高い選択肢と考えられます。ただし、各企業のセキュリティ要件や規制環境に応じて、適切な選択を行うことが重要です。
Claudeのファイル作成をあなたの業務で試してみよう
Claudeのファイル作成機能は、工夫次第で営業資料作成やデータ分析分野において十分に実用的に活用できることが分かってきました。とはいえ、実際に生成AIを業務で使う際には「どこに活用すべきか」「どうすれば安定して成果を出せるのか」という疑問はつきものです。
デジライズでは、最新の生成AIツールを企業ごとの課題やリソースに合わせて最適に活用できるようご支援しています。AI人材のいない企業様でも安心して導入を進められるよう、一貫して伴走いたします。
まずは情報収集からでも歓迎です。ご興味のある方は、以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。
参照
https://www.anthropic.com/news/create-files
https://mainfunc.ai/privacy
https://manus.im/privacy