チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

GoogleのAI搭載ノートツール「NotebookLM」に新たに追加された動画解説(Video Overviews)機能が、日本語を含む80言語に対応しました。これにより、アップロードした資料を基に、AIが自動でスライド付きのナレーション動画を生成できるようになりました。

しかし、実際のビジネス現場で安定的に活用するには、いくつかの重要なポイントと注意点があります。本記事では、NotebookLM動画解説機能の詳細な使い方から、実務で成果を出すためのコツ、エンタープライズ運用時の制約まで、実践的な観点で徹底解説します。

NotebookLMとは?

Googleが提供するノート型AIツール

NotebookLMは、AI搭載の研究・学習支援ツールです。従来の汎用AIチャットボットとは異なり、ユーザーが提供したソース資料に特化した質問応答を行うことで、より正確で文脈に沿った回答が提供されます。

NotebookLMの特徴

  • Google DocsやPDF、YouTube動画など多様なソース形式に対応
  • アップロードした資料のみを参照元とするため、事実に基づいた回答を生成
  • 商用利用可能(一部制限あり)
  • 無料でも利用可能

これまでの機能(要約・質問応答・マインドマップなど)

NotebookLMは、動画解説機能追加以前から以下の強力な機能を提供していました。

機能名概要ビジネス活用例
自動要約長文資料の要点を簡潔にまとめる会議資料の事前レビュー
質問応答ソース資料に基づいた具体的な回答社内FAQ作成支援
マインドマップ生成情報の関連性を視覚化プレゼン構成の検討
音声概要内容をポッドキャスト風に音声化移動中の情報インプット

NotebookLMの解説記事はこちら

今回追加された動画解説(Video Overviews)機能の位置づけ

動画解説機能では、これまでのテキスト・音声ベースの情報整理から一歩進んで、視覚的なプレゼンテーション形式での情報伝達を可能になりました。特に以下のような場面で威力を発揮します。

  • 複雑な概念の視覚的説明:図表を交えた分かりやすい解説
  • 社内共有用コンテンツ作成:研修材料やプレゼン資料の自動生成
  • 情報のアクセシビリティ向上:異なる学習スタイルに対応

NotebookLM「動画解説」機能の概要

資料をもとにAIがスライド+ナレーション付き動画を自動生成

NotebookLMの動画解説機能は、以下の3段階のプロセスで動画を生成します。

1. ソース分析フェーズ

  • アップロードされた資料の内容を分析
  • 重要ポイントの抽出と構造化
  • 適切なスライド分割の判断

2. スライド生成フェーズ

  • 視覚的に分かりやすいスライドレイアウトを自動作成
  • テキスト情報の適切な配置とフォント調整
  • 必要に応じて図表や箇条書きを挿入

3. ナレーション合成フェーズ

  • 自然な話し方でのナレーション音声を生成
  • 適切なポーズや強調の配置
  • スライド切り替えタイミングの最適化

日本語を含む80言語以上に対応したアップデート

アップデートにより、動画解説機能は80言語以上での動画生成が可能になりました。日本語対応の主な改善点は以下のとおりです。

対応言語の拡充アジア太平洋地域・日本語
・韓国語
・中国語(簡体字・繁体字)など
ヨーロッパ地域・ドイツ語
・フランス語
・スペイン語など
その他地域・アラビア語
・ヒンディー語など
日本語特有の改善ナレーション敬語、丁寧語の適切な使い分けが可能な自然な日本語ナレーション
読み上げ精度漢字、ひらがな、カタカナの読み上げ精度の向上
表現日本のビジネス慣習に配慮した表現

出力方法(Studioのカスタマイズ→生成→MP4ダウンロード)

動画解説機能の具体的な操作手順

Step 1: Studioパネルからの生成開始

  1. NotebookLMのノートブック画面で「Studio」タブを選択
  2. 鉛筆マークから、プロンプトでカスタマイズ
  3. 「生成」を押して10~15分ほど待つ

Step 2: MP4ファイルのダウンロード

  • 生成完了後、内容確認
  • 「ダウンロード」ボタンでローカル保存

動画解説機能制約

現在のNotebookLM動画解説機能には以下の重要な制約があります。

制約項目詳細ビジネス影響
モバイル非対応スマートフォン・タブレットでは生成不可外出先での利用制限
共有制限Workspaceでは外部共有に制限社外向けコンテンツ作成時の課題
生成時間複雑な資料では5-10分程度要するリアルタイムでの活用困難
カスタマイズ限界デザインテンプレートの変更不可ブランディング要件との不一致

動画生成のコツ

実際の業務でNotebookLM動画解説機能を安定的に活用するためには、以下の4つのポイントを押さえることが重要です。

  • プレゼンの順番通りにソースも整える
  • ソースの質を高める
  • 難易度・対象読者を明確化する
  • 再生成→レビュー→採用のワークフローを回す

プレゼンの順番通りにソースも整える

AIが人間の意図通りの動画構成を生成するには、ソース資料の構成順序最終的な動画の流れを一致させることが最も重要です。複数の資料を読み込ませるのではなく、1つの統合された資料として整理することで、論理的な流れを保った動画生成が可能になります。

ソースの質を高める

動画の精度と有用性は、入力するソース資料の品質に直接依存します。間違った情報の除去、不要な詳細の削除、重要ポイントの構造化により、AIが適切にコンテンツを理解し、意図したスライドを生成できます。

ソース品質向上の3原則

1. 情報の正確性確保

動画は資料を参照して作成されるので、資料が間違っていれば、当然間違った情報の動画が生成されます。必ず正確な情報であることを確認することが大切です。

  • 事実確認済みのデータのみ使用
  • 引用元・出典の明記
  • 数値データの最新性確認

2. 不要情報の徹底排除

  • 冗長な説明文:同じ内容を異なる表現で繰り返す部分
  • 過剰な詳細度:5分動画に30分相当の情報量
  • 脱線トピック:メインテーマから外れる話題

3. 構造化と強調の活用

強調手法使用場面スライド反映効果
太字(Bold)キーワード・重要用語タイトルや見出しに採用
箇条書き複数項目の列挙スライド内リストとして表示
番号付きリスト手順・プロセス説明ステップ表示で視覚化
見出し構造セクション分けスライド切り替えポイント

難易度・対象読者を明確化する(例:「小学生向け」「専門家向け」)

動画の専門用語レベル説明の詳しさを適切に調整するため、対象読者を具体的に指定することが大事です。

対象読者レベル説明スタイル用語使用実例
一般向け平易で具体例多用専門用語は説明付き「AIが自動で動画を作る仕組み」
ビジネス向け簡潔で実用性重視業界用語は適度に使用「ROI向上のためのDX推進策」
専門家向け技術的で詳細専門用語を積極活用「LLMアーキテクチャの最適化手法」

効果的なカスタマイズのプロンプト例

「中小企業のITに疎い経営者向けに、クラウド移行の投資対効果を説明する動画を作成してください。
技術的な詳細よりも、コスト削減効果と業務効率化のメリットを重点的に解説してください。」

再生成→レビュー→採用のワークフローを回す

NotebookLMの動画生成は確率的な処理のため、複数回の生成と比較検討が重要です。

効果的なワークフロー

1. 初回生成(ベースライン作成)
   ↓
2. 内容レビュー(3つの評価軸)
   - 論理構成の適切性
   - 重要ポイントの網羅性  
   - ナレーションの自然さ
   ↓
3. 改善点の特定と対策
   ↓
4. プロンプト調整または再生成
   ↓
5. 品質基準クリアまで反復

実際に試してみた

NotebookLMの動画生成精度を検証するため、同一の内容で資料を調整した比較実験を実施しました。今回は、営業分野におけるAI活用というテーマで、生成された動画の精度を検証しています。

ケース① 情報源のみを入れた場合

  • ソース:「ソースを探す」機能で得られた情報
  • カスタマイズ:特になし

結果

評価項目スコア詳細
構成の一貫性指定していないので、自分の意図した通りではない。
重要度の判定⭐⭐入れたい情報が一部入ってない
実用性情報を入れるだけでは、実用性はない。

ケース② スライド構成を情報源に含めた場合

  • ソース:作りたい構成の順番どおりに内容を記載していく。
  • 指示内容
# 指示
あなたは営業とAIの専門家です。スライド構成案に基づいて、スライド・動画を作成してください。話す内容はスライド構成案に則ってください。
対象:営業部の新入社員
口調:です・ます調で統一

結果

完全にスライド数を調整することはできませんでしたが、7~8割は構成の指示通りのスライドを生成することができました。今回はメリットを3つにわけて生成するように書いていましたが、しっかりとメリット1つごとに1つのスライドを使って説明させることができました。

アップロードした資料の中身(一部)
完成した該当箇所に対応するスライド
評価項目スコア詳細
構成の一貫性⭐⭐⭐⭐指定通りの構成だが、完璧ではない
重要度の判定⭐⭐⭐太字や「」などをスライドに記載
実用性⭐⭐社内向けで他の資料生成ツールなどと組み合わせて使用できる可能性あり。

ビジネス活用の可能性

NotebookLMの動画解説機能は有望な技術ですが、現時点では工夫と適切な期待値設定が不可欠です。以下の紹介するような簡単な使い方から始めて、徐々に活用範囲を拡大していくアプローチが現実的でしょう。

社内教育(研修・マニュアル化)

NotebookLMの動画解説機能は、10分以内の短時間コンテンツに適しており、社内教育分野で実用的な効果を発揮できます。

効果的な活用シーン

コンテンツ種類活用効果
新機能説明システム更新時の迅速な周知
基本操作ガイド操作手順の視覚的説明
コンプライアンス重要ポイントの確実な伝達
商品知識習得営業向け製品概要の共有

実装時の重要なのは、1動画に対して1トピックに収めることです。複雑な内容は分割して複数動画にすることで、1動画で複数のテーマに触れて要点がわからない、といったことを防げます。

リサーチ・研究分野での活用

NotebookLMの多言語対応機能により、英語で書かれた論文や資料を日本語の解説動画に変換できることは、研究・開発部門にとって大きなメリットとなります。

まとめ|動画解説機能を実務で活かすために

NotebookLMの動画解説機能は、工夫次第で社内教育やリサーチ分野において十分に実用的に活用できることが分かってきました。とはいえ、実際に生成AIを業務で使う際には「どこに活用すべきか」「どうすれば安定して成果を出せるのか」という疑問はつきものです。

生成AIを活用した業務効率化には、GeminiやChatGPTをはじめ、多様なツールやアプローチがあります。
しかし実際には、
「どのツールを選ぶべきか」
「自社業務のどこに活用すれば効果的なのか」
「安定して成果を出すためにどう運用すればよいのか」
といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

デジライズでは、最新の生成AIツールを企業ごとの課題やリソースに合わせて最適に活用できるようご支援しています。AI人材のいない企業様でも安心して導入を進められるよう、一貫して伴走いたします。

まずは情報収集からでも歓迎です。ご興味のある方は、以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。

参照

NotebookLMヘルプ, https://support.google.com/notebooklm/answer/16454555?hl=en

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。