チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

2025年12月16日、OpenAIが最新の画像生成モデル「GPT Image 1.5」をリリースしました。ChatGPT内では「ChatGPT Images」として提供されており、従来モデルから 最大4倍の高速化、そして精密な部分編集が可能になっています。

この記事では、私チャエンが実際に使い倒した検証結果を交えながら、GPT Image 1.5の新機能からセキュリティまで、すべてを解説します。

この記事を読めば、あなたの業務に画像生成AIを導入すべきか、導入するならどう設計すべきかが明確になります。


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GPT Image 1.5(ChatGPT Images)で何が変わったか

具体的に何が変わったのか。4つの大きな進化ポイントを解説します。

精密編集(変えるところだけ変える)

これが今回最大の進化と言っていいでしょう。従来の画像生成AIは「ちょっとだけ修正したい」という要望に弱く、修正指示を出すと画像全体が別物になってしまうことが頻繁にありました。

GPT Image 1.5では、照明・構図・人物の外見を維持したまま、指定した部分だけを変更できるようになっています。OpenAI公式の表現を借りれば、「変更を依頼した部分だけを変え、それ以外の要素は一貫性を保つ」ことが可能になりました。

実務的に言うと、「この広告画像の背景だけ変えて」「この人物の服装だけ変えて」といった細かい修正が、画像全体を崩さずにできるようになったということです。これは広告クリエイティブのABテストなどで非常に重宝します。

一貫性(人物・照明・構図・ロゴ保持)

連続編集での「ドリフト」(徐々に元画像から離れていく現象)が大幅に改善されました。これにより、一度作成したキャラクターやブランド素材を、複数のシーンで一貫して使用できるようになっています。

特にOpenAIが強調しているのがブランドロゴの保持です。マーケティングやブランドワークで「ロゴを維持したまま背景を変える」「ロゴ入り素材のバリエーションを作る」といった作業が、従来より格段に安定してできるようになりました。

テキストレンダリング(日本語を含む”読める文字”)

画像生成AIの長年の弱点だった「文字が読めない問題」が、かなり改善されています。GPT Image 1.5では、より密度の高い小さな文字も処理できるようになりました。

ただし、私の検証では日本語のテキストレンダリングは英語に比べるとまだ精度が落ちることがありました。ポスターやバナーに日本語を入れる場合は、生成後に画像編集ソフトで文字を差し替えることも視野に入れておいた方がいいでしょう。

速度・UI刷新(Imagesタブ、プリセット、並列生成)

生成速度は 従来の最大4倍 に高速化されています。これは単純に待ち時間が減るだけでなく、「試行錯誤のサイクルを速く回せる」という実務上の大きなメリットをもたらします。

また、ChatGPTのサイドバーに 専用のImagesタブ が新設されました。ここには「トレンドのプロンプト」や「プリセットフィルター」が用意されており、プロンプトを一から考えなくても、インスピレーションを得ながら画像生成ができる「クリエイティブスタジオ」のような体験になっています。

さらに、新しい画像を生成キューに入れている間にも別の作業ができる 並列生成 にも対応しています。

利用できるプラン・対応環境・提供状況

どのプランで使えるか

GPT Image 1.5(ChatGPT Images)は、2025年12月16日時点で以下のプランで利用可能です。

プラン利用可否備考
Free✅ 利用可能利用制限あり(一定回数/時間の上限)
Go✅ 利用可能Freeより上限緩和
Plus✅ 利用可能月額$20、十分な利用枠
Pro✅ 利用可能月額$200、ほぼ無制限に近い利用
Edu✅ 利用可能教育機関向け
Business🔜 後日提供法人向け、管理機能付き
Enterprise🔜 後日提供大企業向け、セキュリティ強化

注意点として、Business/Enterpriseプランへの提供は「後日」とされています。法人で本格導入を検討している場合、現時点ではPlus/Proプランでの検証にとどめ、Business/Enterprise対応を待つのが安全です。

Web / iOS / Android(アプリ更新要否、デスクトップ可否など)

GPT Image 1.5はWeb版、iOS版、Android版のすべてで利用可能です。ロールアウトが完了したアカウントでは新モデルが適用されます。

新設された「Images」タブはサイドバーからアクセスできます。モバイルアプリでも同様のUIが提供されているため、出先でのクイックな画像生成にも対応できます。対して、デスクトップアプリでは利用不可とされています。

画像ライブラリ(保存先・再利用導線)

生成した画像は ChatGPT内の画像ライブラリ に保存されます。過去に生成した画像を呼び出して再編集したり、ダウンロードして他の用途に使ったりすることが可能です。

また、一度アップロードした自分の画像(例:自社ロゴや製品写真)を、複数の生成で再利用する導線も用意されています。毎回カメラロールからアップロードし直す手間が省けるのは、実務では地味に嬉しいポイントです。

使い方(ChatGPT側)— 最短で”業務品質”に寄せる

ここからは、実際にChatGPT Imagesを使って業務品質の画像を作るための実践的なノウハウを紹介します。

基本手順(生成→編集→反復)

GPT Image 1.5の基本的なワークフローは以下の3ステップです。

ステップ1:初回生成 — まずはざっくりとしたプロンプトで画像を生成します。完璧を目指さず、方向性の確認が目的です。

ステップ2:部分編集 — 生成された画像に対して「この部分を変更して」と具体的に指示します。画像をクリックして選択ツールを使えば、特定領域だけを指定することも可能です。

ステップ3:反復改善 — 編集を繰り返して理想に近づけます。GPT Image 1.5は連続編集でも一貫性を保つため、このサイクルを速く回せるのが強みです。

よくある失敗とリカバリ(文字・顔・合成の崩れ)

文字の崩れ — 日本語は、基本的にはうまく生成できますが、一部のみ崩れるということがよくあります。対策として、重要な文字は画像生成後に画像編集ソフトで上書きするか、英語で生成してから翻訳テキストを重ねる方法があります。

顔の崩れ・ドリフト — 連続編集で顔の特徴が変わってしまう場合は、編集指示に「人物の顔の特徴は絶対に維持」と明記します。それでも崩れる場合は、崩れる前の画像に戻って別のアプローチを試しましょう。

合成の不自然さ — 異なる要素を組み合わせた際に境界が不自然になることがあります。「境界を自然に馴染ませて」「影を追加して一体感を出して」といった追加指示が有効です。

APIで使う(開発・自動化したい人向け)

業務で本格的に活用するなら、APIでの利用も視野に入るでしょう。開発者向けの情報をまとめます。

画像APIの仕様(入力形式・上限・複数画像編集など)

GPT Image 1.5は OpenAI API で「gpt-image-1.5」というモデル名で提供されています。主な仕様は以下の通りです。

対応エンドポイント

  • /images/generations — テキストプロンプトからの新規生成
  • /images/edits — 既存画像の編集(マスクによる部分編集も可能)
  • /images/variations — 既存画像のバリエーション生成(DALL·E 2のみ)

n パラメータを指定することで、1リクエストで複数画像を同時生成することも可能です。

料金(トークン課金・概算の出し方・コスト最適化の勘所)

GPT Image 1.5の料金体系は トークンベース です。テキスト入力トークンと画像出力トークンで別々に課金されます。

概算料金(正方形画像の場合)

  • 低品質:約$0.01/枚
  • 中品質:約$0.04/枚
  • 高品質:約$0.17/枚

重要なポイントとして、GPT Image 1.5はGPT Image 1より20%安くなっています。 同じ予算でより多くの画像を生成・反復できるようになったということです。

コスト最適化のコツ

  1. 試作段階では低〜中品質で高速に回し、最終出力のみ高品質にする
  2. バッチ処理で複数画像をまとめて生成する
  3. 不要な再生成を減らすため、プロンプトを事前に練り込む

活用事例(ECカタログ量産/広告AB案/ブランド素材保持)

ECカタログ量産

1枚の商品写真から、背景違い(白背景、ライフスタイル背景、季節背景)やアングル違いのバリエーションを自動生成。数百SKUを扱うECサイトでは、撮影コストを大幅に削減できます。

広告ABテスト

ベースとなるクリエイティブから、コピー違い・色違い・レイアウト違いのバリエーションを高速生成。従来は1案ごとにデザイナーが手作業で作っていたものを自動化できます。

ブランド素材の一貫性保持

ロゴやブランドカラーを維持したまま、様々なシーンでの使用例を生成。ブランドガイドラインに沿った素材のバリエーション展開が容易になります。

検証(Nano banana Proと比較)

ここからは、私が実際に検証した結果を共有します。

検証内容

Nano banana Proと同じプロンプト、同じ参照画像でサムネイルを生成しました。

タイトルは「Claude CodeのAI主導サイバー攻撃から学ぶ:企業が見直すべき生成AIセキュリティ戦略」

結果

ChatGPT

Nano banana Pro

所感

日本語精度

ほとんど変わりませんが、ChatGPTの方は「戦略」の「戦」の字が少し崩れています。ただ、このような細かいミスは何度か生成すれば直ります。そのため、細かい文字を入れる必要のない画像に関しては、日本語文字の精度は問題がないように感じました。

人物の一貫性

ChatGPTのモデルでは、髪形や服装など似てはいるものの、違う人物が生成されてしまっています。それに対し、Nano banana Proでは完璧に生成されました。

総評

この他にもいろんなスタイルを試してみましたが、現時点ではNano banana Proの方が人物の一貫性や日本語の精度において優位であると感じました。ただ、新たに登場したImages機能により、プロンプトを書かずに様々なアートスタイルを試せるようになったため、気軽に画像生成を楽しめるようになったと言えます。

導入の注意点(ガバナンス)

画像生成AIを導入する際、最も重要なのがガバナンスの設計です。技術的な性能だけでなく、法的リスクや運用ルールを整備しないと、後々大きな問題になりかねません。

著作権・肖像権・商標(NG例とレビュー観点)

著作権のポイント

  • AI生成画像が既存の著作物に「類似性」「依拠性」がある場合、著作権侵害となる可能性があります。
  • 文化庁の「AIと著作権に関する考え方」によれば、AI生成物であっても既存著作物との類似性が認められれば侵害となります。
  • 特定のアーティストの作風を意図的に模倣するプロンプトは避けるべきです。

肖像権・パブリシティ権のポイント

  • 実在の人物に似た画像を商用利用すると、肖像権侵害のリスクがあります。
  • OpenAIのUsage Policiesでは、「本人の同意なく他者の肖像を使用すること」を禁止しています。
  • 有名人の顔を模倣した画像は、たとえAI生成であっても法的リスクがあります。

商標のポイント

  • 既存のブランドロゴや商標に似た画像を生成・使用すると商標権侵害となる可能性があります。
  • 自社ロゴを使用する場合も、変形や意図しない変更がないかチェックが必要です。

レビュー時のチェックポイント

  1. 既存の著作物・商標との類似性がないか
  2. 実在の人物に酷似していないか
  3. 他社のブランド要素が混入していないか
  4. 不適切なコンテンツ(暴力・差別表現等)が含まれていないか

機密情報・データ取り扱い(素材管理、ログ、権限)

素材管理のルール

  • 機密情報を含む画像(未発表製品、内部資料等)をAIに入力する際は、データの取り扱いポリシーを確認
  • OpenAI APIでは「顧客データをモデルトレーニングに使用しない」としていますが、Business/Enterpriseプランでは追加のセキュリティ保証があります
  • 機密度の高い素材は、オンプレミス環境での画像編集ソフト使用を検討

ログ管理

  • 誰が、いつ、どんなプロンプトで、何を生成したかを記録
  • 問題発生時のトレーサビリティ確保
  • 定期的な監査のための証跡保全

権限設計

  • 生成できる人、承認できる人、公開できる人を明確に分離
  • 特にSNS投稿や広告出稿に使用する場合は、複数人による承認フローを設計

デジライズでは、生成AIの導入研修を行っています。個別のミーティングで業務内容をヒアリングし、現場で本当に使えるAI活用法を一緒に考えるところからスタートします。実際に使えるように、AIの専門家が伴走いたしますので、AI担当者がいない企業様でもご安心ください。

まずは情報収集からでも歓迎です。導入の流れや支援内容をまとめた資料をこちらからご覧いただけます。

まとめ

GPT Image 1.5(ChatGPT Images)は、「業務で使える画像生成AI」として大きく進化しました。特に 精密編集一貫性の保持高速化 の3点は、実務での使い勝手を大きく向上させています。

また、Images機能によって、プロンプトを組まずに誰でも簡単にスタイルを真似できるようになったため、試してみる価値はあるでしょう。

参考

OpenAI「The new ChatGPT Images is here」

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー16万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。