報告1件あたり約90%削減、年2,000時間超を捻出。各自でAIを使えていた会社が、それでも外部のプロに頼んだ理由

株式会社Kimete 様

株式会社Kimete

導入前の課題

  • 報告業務:日報や商談報告のもとになるのは担当者のメモか記憶で、まとまった時間が取れる夕方まで後回しになっていた
  • AI活用:社員それぞれが使いこなしてはいたが、やり方は各自の中で完結。うまくいった方法が組織に共有される形になっていなかった
  • 見積書の発行:バックオフィスへの依頼制で、担当者が退勤すると翌営業日まで止まり、商談のテンポそのものが落ちていた

導入後の効果

  • 報告業務:1件あたり約10分 → 約1分(約90%削減)。同社試算で年約2,100〜2,900時間、金額にして年およそ430万〜580万円にあたり、商談直後にその場で終わるようになったことで報告の件数そのものも増えた
  • AI活用:個人の工夫 → 全員が使う仕組みへ。入社3か月の社員にも定着し、支援期間の終了後は不具合の特定から修正・再公開までを自社で完結できるようになった
  • 見積書の発行:依頼して翌営業日待ち → 営業担当者がその場で発行。依頼という工程自体がなくなった

目次

    会社紹介

    株式会社Kimeteは、新卒採用を中心とした採用コンサルティングと人材アセスメントを手がける企業です。2018年5月に株式会社武蔵野の一事業として立ち上がり、経営の意思決定を速め、サービスの専門性を高めることを狙いに、2026年5月1日付で同社の子会社として分社化しました。取締役社長は、事業の立ち上げから責任者を担ってきた小嶺 淳(こみね あつし)氏です。

    掲げるスローガンは「ミスマッチをゼロにし、企業の価値を最大化する」。ツールを提供して終わりではなく、入社後の活躍まで支える存在でありたい。小嶺氏はそう語ります。

    株式会社Kimete 公式サイト
    株式会社Kimete 公式サイト(business.kimete.jp

    そのため同社のサービスは、採用のどこか一工程を切り出すのではなく、採用設計・母集団形成・選考/見極め・内定フォロー・入社/配置・育成/抜擢という6つの工程すべてを対象にしています。採用して終わりではなく、その人が組織で活躍するところまでを地続きで見る設計です。

    株式会社Kimeteが支援する採用・人事の6工程
    採用設計から育成・抜擢までを一貫して支援する(同社サービスページより)

    中核となるのが、心理統計学にもとづいて受検者の性格特性や仕事への動機を可視化する適性検査「マルコポーロ」です。採用の合否判断だけでなく、入社後の配置や抜擢の判断にもそのまま使えることが特徴です。あわせて、処理能力を15分で測定する「ミルメ」、候補者のネット上の情報を専門家が調査して採用リスクを可視化する「ネット探偵」を提供しています。

    適性検査 マルコポーロのサービス紹介
    適性検査「マルコポーロ」(同社サービスページより)

    ツールだけではありません。採用計画の立案から面接設計、内定後のフォローまで採用のプロが伴走し、自社だけで回せる採用の仕組みをゼロから立ち上げる「採用コンサルティング」。さらに、採用事例の共有会や現場視察を通じて、うまくいっている会社の仕組みを学べる会員制コミュニティ「Kimeteビレッジ」サービスの詳細は同社サイトにまとまっています。

    採用を「自社だけで回せる状態」にするところまで伴走する——この考え方は、後述する同社自身のAI活用のあり方とも重なります。新会社の立ち上げとAI活用の実装は、ほぼ同じ時期に並走することになりました。

    生成AI導入前の課題感

    同社が最初に挙げた課題は「報告」でした。日報や商談報告のもとになるのは担当者のメモか記憶で、まとまった時間が取れる夕方まで後回しになっていました。書き手によって粒度が異なり、タイミングにもばらつきがあったといいます。

    社内には商談の記録などの情報が蓄積されていましたが、それを使えるかどうかは個人の裁量に委ねられていました。「情報はあるんだけど、取り扱いが個人レベルなんです」。活用の度合いが人によって大きく異なる状態が続いていました。

    ただし同社は、AIをまったく使っていない会社ではありませんでした。むしろ社員それぞれが自分の業務でAIを試し、それなりに使いこなしていました。それでも成果が横に広がることはなかったのです。小嶺氏はその構造をこう振り返ります。

    外圧をかけないと、みんな自分のエリアでブラックボックス化するんです。自分ができていることを、相手もできているのかどうか、まったく分からない。だから、経営者が社内で形式化したいものに対しては、外の力はすごく有効だと思います。

    株式会社Kimete 取締役社長 小嶺 淳 氏

    使える人が増えても、やり方は各自の中に閉じたままでした。誰がどこまでできるのかが見えなくなり、うまくいった方法も共有されない。個人が上達することと、組織の仕組みになることは、別の話でした。この「個人の工夫を、全員が使える形にする」役割を担う相手として、同社は外部を選びました。

    生成AI活用の効果

    最も大きく変わったのは、その報告業務でした。1件あたり約10分かかっていた作成が、約1分に短縮されています。1件あたりでみれば約90%の削減です。1人1日3〜4回、およそ20名がこの作業を担っている同社の試算では、月180〜240時間、年に換算すると約2,100〜2,900時間規模の削減にあたります。社員30名ほどの会社にとって、報告業務だけで1人分を超える時間が戻ってきた計算になります。同社の人件費をもとに金額へ置き換えると、年およそ430万〜580万円にあたります。

    仕組みは2段構えです。商談の文字起こしを読み込ませると、社内の報告フォーマットに沿った文章が自動で組み上がる。それをそのまま貼り付けると、CRMに訪問実績として登録される。担当者が手を動かすのは、貼り付けて内容を確認するところだけです。

    登録の精度にも手を入れました。取引先名は「株式会社」の有無や全角・半角の違いだけで別の会社として登録されてしまいがちですが、その表記のゆれを吸収して既存の取引先と突き合わせ、重複しそうな場合は登録の前に確認を挟みます。報告者も自動で確定するようにしたことで、1件あたり約6工程が減りました

    現場からの「移動中にスマートフォンで完結させたい」という声を受けて、スマホ向けの簡易版も用意しています。商談が終わった数分後に報告が上がってくるのは、この形まで落とし込んだためです。

    報告1件あたりの作成時間取材時にうかがった体感値
    BEFORE
    約10分
    AFTER
    約1分
    約90%
    報告1件あたりの短縮率
    3〜4
    1人1日あたりの
    報告の発生回数
    180〜240時間
    月あたりの削減時間
    (同社試算・約20名分)
    年あたりの削減時間約2,100〜2,900時間(社員1人分を超える規模)

    ※ 数値は取材時にうかがった体感値と、それに基づく同社の試算です。実測値ではありません。月あたりの削減時間は「1件あたり約9分の短縮 × 1人1日3〜4回 × 約20名 × 月20営業日」を前提としています。年あたりの削減時間はこれを12倍したもので、前提が変われば幅も変わります。「社員1人分」は年間所定を1,920時間(8時間 × 240日)として換算しています。金額は、同社の人件費単価をもとにした概算です。

    導入前|報告を「溜め込む」1日
    • 商談を終える。報告のもとはメモか記憶だけ
    • 次の商談へ。書く時間は取れない
    • 夕方、まとまった時間をつくって数件分をまとめて書く
    • 書ききれない分は翌日へ。上がってこない報告も出る
    導入後|その場で終わる1日
    • 商談を終える
    • 数分後にはその場で報告ができあがっている
    • 次の商談へ。持ち越しはゼロ
    • 結果として報告の件数そのものが増えた
    導入後の効果について語る小嶺淳氏

    変化は時間だけではありませんでした。夕方にまとめて書いていたものが、商談が終わった数分後にはできあがります。小嶺氏はこの変化をこう表現します。

    『あれをやらないと』と思いながら一日を過ごす、あの脳の負荷がかなり軽減された。

    株式会社Kimete 取締役社長 小嶺 淳 氏

    やるべきことを夕方まで溜め込む前提の働き方が、その日のうちに片づく形へ変わりました

    想定していなかった効果もありました。報告の「件数」そのものが増えたのです。「この報告、今まで上がってこなかったな、というものが増えました」。入社して間もない社員にも、自然に定着しているといいます。

    見積書の発行では、ツールの費用ではなく業務フローそのものが見直されました。従来はバックオフィスへの依頼制で、担当者が退勤すると翌営業日まで発行が止まっていたのです。「そもそも、なぜ依頼しているのですか」という問いから設計を組み直した結果、依頼という工程自体が不要になり、営業担当者がその場で発行できるようになりました。社内だけでは着手しにくかった見直しだったと小嶺氏は振り返ります。

    見積書と同じ発想で組み直したものが、もうひとつあります。適性検査のトライアル受検の発行です。従来は、アカウントを確保し、名称を変更して登録し、発行したURLをチャットで連絡し、受検が終われば一覧に反映し、期限を毎日確認する——という工程が人の手で回っていました。いまは申込フォームを送信すると、過去に受検歴がないかの照合、空きアカウントの割り当て、一覧への記録、担当ルームへの通知までが自動で走ります

    新人教育の面でも変化がありました。これまで個々のやり取りに埋もれていた顧客対応の履歴と製品マニュアルを、AIが検索して答えられる形に整えています。「あの件はどうだったか」を、経験のある社員に聞かずに自分で引けるようになりました。小嶺氏によれば、実際に使っているのは若手社員だといいます。運用は同社に引き継いでおり、データの追加も自社で行える状態です。

    支援期間が終わったあと、同社は自らシステムの不具合を特定し、修正して再公開しています。最終ミーティングから3日後のことでした。利用者が一定数を超えると一覧を読み込みきれなくなるという不具合で、原因の切り分けから修正、再公開までを自社で完結させています。

    引き渡しの際に修正手順をまとめたドキュメントを添えてはいましたが、それが実際に使われるかどうかは分かりません。ベンダーに問い合わせなくても自分たちで手を入れられる——その状態が、契約が終わったあとに証明された形になりました。

    取材に応じる小嶺淳氏

    今後の展望

    社内で起きているもうひとつの変化を、小嶺氏は「発想の広がり」と表現します。AIを使うだけでなく、目の前の困りごとを仕組みの形にしてしまえばいい——そう考える社員が出てきたといいます。決まったツールを決まったとおりに使う段階から、自分たちで手段をつくる段階へ移りつつあります

    当初4か月を見込んでいた計画が3か月で着地したのも、同社側の反応の速さによるものでした。次のテーマとして挙がっているのは、業務基盤の整備です。分社化にともなって管理まわりの要件も変わっており、社内システムの見直しが引き続きの検討事項になっています。

    最後に、これからAI導入を考える企業への助言を尋ねました。小嶺氏はこう答えます。

    病気のときに、自分で診断はできませんよね。だからお医者さんに診てもらう。それと同じで、外から見てもらうことに意味があるんです。

    小嶺 淳 氏

    社員がAIを使えていなかったから外部を入れたのではありません。使えていたからこそ、それを個人の中に閉じたままにせず、全員が使える仕組みへ引き上げる相手が必要だった——同社の3か月は、そのための時間でした

    株式会社Kimete 小嶺淳氏と株式会社デジライズ 茶圓将裕
    株式会社デジライズ 代表取締役CEO 茶圓将裕(左)と、株式会社Kimete 取締役社長 小嶺 淳 氏(右)

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