2024.11.11
イベント・セミナー
SOCIAL INNOVATION WEEK 2024に代表チャエンが登壇。
はじめに
2024年11月10日、SOCIAL INNOVATION WEEK 2024の一環として、渋谷GMO Yoursフクラスにて「AI発信&活用対談」が開催されました。総フォロワー40万を誇るMichikusa株式会社代表取締役CEOのusutaku氏と、株式会社デジライズCEOのチャエン氏をお迎えし、AI活用の最前線から今後の展望まで、幅広いテーマでお話を伺いました。
モデレーターは、GMO教えてAI株式会社代表取締役の山城氏が務めました。午後5時からの最終セッションながら、会場は熱気に包まれていました。
AIとの出会いとキャリアの転換点
山城氏: お二人がAIと出会ったきっかけについて伺えますでしょうか。
usutaku氏: 私の場合、2022年8月にMidjourneyに触れたのが最初でした。姉が美術系で、「AIでお絵描きができる」という話を聞いて興味を持ちました。しかし、本格的な転機となったのは2022年11月のChatGPT体験です。
当時Amazonで働いていた私は、業務でVBAコードを書く必要があり、なかなかうまくいかずに困っていました。ChatGPT 3.5に試しに相談してみたところ、さらっとコードを出力してくれて驚きました。「これはやばいんじゃないか」と気づき、当時在籍していた会社の東大出身のエンジニアの友人と話し合い、「これは授業もやばくなるんじゃないか」という結論に至り、すぐに会社を立ち上げることを決意しました。
チャエン氏: 私は元々テック好きで、大学生時代からブロックチェーンに没頭し、「チャエンコイン」を作って配布するなど、新しい技術には常に関心を持っていました。Web3の授業なども行っていましたが、ChatGPTに触れた時、これまで以上の革命的な変化を感じました。特に「これで仕事がなくなるかもしれない」と直感し、全力でAIに取り組むことを決意しました。
SNSでの影響力構築の実態
山城氏: SNSでの発信を始められたきっかけについて、詳しくお聞かせください。
usutaku氏: 私は最初、開発がメインでした。2023年初頭は、ChatGPT APIを使った脱出ゲームのプラットフォーム「GPT-game.net」の開発に注力していました。当時はまだXのアルゴリズムが今ほど整備されておらず、フォロワー数も伸び悩んでいました。
転機となったのは、質の高いプロンプト集の作成でした。当時出回っていた低品質なプロンプト集を見て、「これでバズるなら自分にもできる」と考え、2日間かけて500個の質の高いプロンプトを作成しました。これが大きな反響を呼び、約1000件の「いいね」を獲得。その後、反応のあった方々に積極的にコンタクトを取り、35件ほどの相談案件につながりました。
その後、Instagramでの展開も始めました。実は当初、Instagramは「詐欺的な投稿が多い」という印象があり、躊躇していました。「ChatGPTを使えば月収100万円」といった誇大な投稿や、「AIを使って攻略します」といった怪しい投稿が目立っていたためです。しかし、約1年のX(旧Twitter)での活動を経て、自分なりの発信スタイルを確立できました。
現在のInstagramでは、コミカルな演出を交えた動画コンテンツを毎日投稿しています。企画、撮影、編集を全て1人で行い、時には歌も入れています。7本目の投稿で大きな反響があり、そこから1ヶ月で10万人、3ヶ月で15万人、現在は17万人のフォロワーを獲得できました。
チャエン氏: 私の場合、Web3やブロックチェーン関連で既に3万ほどのフォロワーベースがありました。ChatGPTについての投稿を始めた当初は、GoogleスライドやDocs連携など、実用的な活用方法を中心に発信していました。当時はAIブームの初期で、なんでも投稿すれば100万回以上の表示を獲得できるような、いわばボーナスタイムでした。
現在注目のAIツールと活用実態
山城氏: お二人が現在注目されているAIツールや、実際の活用方法について詳しくお聞かせください。
チャエン氏: 私が注目しているのは「Replit」のエージェント機能です。テキストからアプリケーションを作成できる機能で、非常に可能性を感じています。
日常業務では「Claude」を多用しています。特に議事録作成では、TLDVで文字起こしをした後、Claudeに入力して図解化し、クライアントに送付しています。新規事業の検討時には、録画をClaudeに入力して整理し、営業の商談後は議事録や見積もり作成にも活用しています。テキスト系のコード生成やコードレビュー系の作業で重宝しています。
実は、かなりのツールに課金していて、20個以上のAIツールを使い分けています。検索関連では、特にPerplexityを重用しています。ブラウザのホーム画面にウィジェットを置いて、ワンクリックで音声入力検索ができるように設定しています。
usutaku氏: 私は最近「Snow」という音楽制作AIに注目しています。実は最近アパートメントバーを購入し、DJとしても活動を始めました。Snowで作った曲をAIでマッシュアップして楽しんでいます。時にはエクセルの研修内容を曲にして演奏したりもしています。
検索系のツールについては、基本的にはPerplexity、Arc Search、GPT Search、Jin Researchなどを使い分けています。特にワークフローとしては、まず検索はArc Searchで行い、特定のページに行きたい場合はワンクリックでGoogleに切り替え、Googleマップとの連携が必要な場合はさらに切り替えるという形で使い分けています。
発信者としての心構えとブランディング
山城氏: 多くのフォロワーを抱える発信者として、炎上対策やブランディングについてどのようにお考えですか?
usutaku氏: 私は幸い、これまで炎上したことはありません。その理由の一つとして、最新情報の発信を控えめにしていることが挙げられます。新しい情報は誤情報が生まれやすく、特に情報源が2社程度しかない場合は慎重になっています。
代わりに、実際に業務で使用しているAIツールについて、「これは使える」「これは使えない」といった実践的な発信を心がけています。情報は数週間遅れて発信することが多く、その分、確実性の高い情報を提供できています。また、間違いがあった場合は素直に認めることも重要だと考えています。
チャエン氏: SNSでは、フォロワー数を伸ばす時期に様々な手法を試す必要がありますが、一定数のフォロワーを獲得した後は、より本質的な発信に注力しています。私は全ての運用を自分で行っており、これは投稿の質を保つために重要だと考えています。
グローバル展開と日本市場の特性
usutaku氏: 海外展開については、特定の業界の深い課題に特化したAIソリューションを提供することが重要だと考えています。私の経験から、非常にニッチな分野でも、徹底的に特化することで成功できる例を見てきました。
チャエン氏: 日本市場についても、興味深い示唆をいただきました。シリコンバレーの著名な研究者から「日本はご飯が美味しく、物価も安いが、AIの導入度の低さに驚いた」という話を聞きました。これは課題でもありチャンスでもあります。
また、日本独自の強みを活かすアプローチとして、「おもてなし」の概念をAIに組み込んだ営業支援システムの開発を検討しています。さらに、日本の漫画やアニメといったコンテンツと組み合わせたAIサービスにも大きな可能性があります。例えば、集英社と組んで本格的なキャラクターとの対話を実現できれば、世界市場でも競争力を持てるのではないでしょうか。
ただし、必ずしもグローバル展開にこだわる必要はないとも考えています。日本のGDPは十分な規模があり、本気で事業展開すれば国内だけでも大きな成功を収めることは可能です。
AIと人間の共生:これからの時代に求められること
usutaku氏: 私は「積極的非効率」という考え方を大切にしています。普段の業務はAIで効率化する一方で、人間にしかできない創造的な活動や趣味に時間を使うことが重要です。最近は釣りや海外旅行、DJなど、様々な活動を楽しんでいます。これらの「非効率」な活動こそが、最も人間らしい活動だと考えています。
実際、インフルエンサーの中にも相当尖った個性の持ち主が多く、それが影響力を持つ要因の一つとなっています。AIが発展する中で、このような人間らしい個性の価値は、むしろ高まっていくのではないでしょうか。
まとめ
本セッションでは、AI時代における発信と活用について、第一線で活躍するお二人から具体的な実践例と洞察を得ることができました。技術の進化に伴い、効率化や自動化が進む一方で、人間らしい創造性や個性の価値が再認識されています。渋谷から発信されたこの対談は、テクノロジーと人間の理想的な共生の形を示唆する、示唆に富んだものとなりました。