チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

1. はじめに:ChatGPTの衝撃的な実力と社会的評価

1-1. ChatGPTがアメリカの司法試験トップ10%合格レベル

ChatGPTはOpenAIが開発した大規模言語モデル(LLM)であり、その応用範囲はビジネスから教育、個人利用まで多岐にわたります。最近では、「ChatGPTがアメリカの司法試験のトップ10%で合格するレベルにある」という驚くべき情報が話題になりました。司法試験といえば、法律知識や論理構成力が厳しく問われる難関試験です。それを、ChatGPTのバージョンによっては人間と同等、もしくはそれ以上の能力で解答できるという事実は衝撃的です。

このようにChatGPTをはじめとする大規模言語モデルの進化は目覚ましく、すでに多くの専門家が「AIと共存する時代はすでに到来している」と指摘しています。従来の業務効率化ツールをはるかに上回る可能性を秘めたChatGPTには、私たちの仕事やライフスタイルを大きく変える力があるのです。

1-2. 孫会長が語る「ChatGPT未使用=人生を悔い改めた方がいい」というインパクト

ソフトバンクグループの孫正義会長が、「ChatGPTを使わないのは人生を悔い改めた方がいい」という大胆な発言をしたことも各種メディアで取り上げられています。ITや通信の世界で常に最先端を走ってきた彼が、ここまで強い表現でChatGPTの活用を推奨するのは、そのインパクトとビジネス的価値を肌で感じているからに他なりません。

2. 生成AIと検索エンジンの違い

2-1. 生成AI(ChatGPT)は意見を引き出す

「生成AI」と呼ばれる技術は、膨大なデータを学習し、自然言語で回答や提案、文章生成などを行うものです。ChatGPTの場合、ユーザーが入力したテキスト(プロンプト)に対して、まるで会話しているかのように文章やアイデアを生成してくれます。特徴的なのは、既存の情報をただ参照するだけでなく、新たなアウトプットを「提案」できる点です。

例えば「Webマーケティング戦略を考えてほしい」「製品のネーミングアイデアを出してほしい」といったような、主観的・創造的な相談でも十分に回答が期待できます。要するに、ChatGPTからは“オピニオン(意見)”を得ることが得意分野となります。

2-2. 検索エンジンはファクト重視

一方で、GoogleやBingなどの検索エンジンは、インターネットに存在する無数のウェブページから“ファクト(事実)”を探すのが得意です。「○○の最新ニュースは?」「この分野の統計データは?」など、客観的根拠が必要な質問に対して強みがあります。ただし、検索エンジンでは自分自身で情報を精査して、まとめたり理解したりする手間がかかる場合があります。

そのため、情報収集自体は検索エンジンで行い、その後の整理や戦略案作成などはChatGPTに任せる、という使い分けをすることで、効率性が格段にアップすると言われています。「いつでもどこでも詳しい“相棒”が得られる」という感覚を味わえるのが、ChatGPTの最大の利点と言えるでしょう。

3. ChatGPTの利用シーン

3-1. 瞬時に情報を整理し、答えを導く

ChatGPTの特長の一つが、大量のテキストを瞬時に整理し要約してくれることです。

例えば、「ある領域についてざっくりまとめたい」「社内会議の議題を整理して見解を出したい」など、膨大なテキストを前に「もう読むだけで精一杯」というときに、ChatGPTは強い味方になります。

  • プロンプト例

    「ChatGPTってどんなものですか? 分かりやすくまとめてください」

このように指示すれば、ChatGPTは一般的な概要や特徴を、短い文章または箇条書きで提案してくれます。慣れてきたら、さらに「です・ます調で」「専門用語を使わずに」など追加の要望(プロンプト)を出すことで、より自分の意図に合った文章に仕上げてくれるでしょう。

3-2. 面倒な作業を効率化(メール作成・議事録作成など)

日常業務で意外と時間を取られるのが、メール文面や会議の議事録作成などの“単純事務”です。ChatGPTは短い指示ですぐに下書きを作ってくれるため、わざわざゼロから文章を考えなくても済みます。

  • メール返信の例

    1. 宛先:田中様(クライアント)
    2. 目的:先日実施した生成AIの研修の請求書を送る
    3. 2週間以内の振込依頼などの要点

上記のような情報をChatGPTに渡すと、定型文に沿った丁寧な文章を即座に生成してくれます。あとは自分で細部を確認し、誤字脱字などを調整すれば完成。作成時間が大幅に短縮されます。

議事録作成の例

会議の音声やチャットログをある程度整理し、ChatGPTに「この内容を要約して議事録を作ってください」と頼めば、箇条書きや見出し付きのわかりやすい文面を自動生成してくれます。手間をかけずに後日検索しやすい形で情報を残せるのは大きなメリットです。

4. 経営者やリーダーに有益なChatGPTの使い方

4-1. 時間短縮とコスト削減の可能性

企業の経営者やリーダー層がChatGPTを導入する最大のメリットは、生産性の向上による時間短縮とコスト削減です。特に、人の作業において「考える時間」「まとめる時間」「コミュニケーションの時間」は大きなウエイトを占めます。ChatGPTを活用することで、

  • 文書作成の自動化:契約書や提案書の下書きなどを高速で作成
  • 情報整理の効率化:分厚い資料をインプットし、一瞬で要約
  • アイデア出しのサポート:新規事業やマーケティング施策のブレインストーミング

といった場面で、驚くほどの時短効果を得られるケースがあります。これによって社員や経営者のリソースをより戦略的な業務に振り向けることが可能となり、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。

4-2. 社内での導入事例(ナレッジ共有やFAQシステムとして)

ChatGPTを社内システムとして導入する例も増えています。従来はイントラネットや社内Wikiに膨大な情報が蓄積されていても、社員がすぐに検索できなかったり、情報の更新が追いつかなかったりという問題がありました。ChatGPTをベースにした「社内用FAQシステム」を構築すれば、社員が疑問点を自然言語で入力するだけで、関連する情報を瞬時に見つけて回答を提示します。さらに、ChatGPTが過去に学習した情報をアップデートし続けることで、新しいナレッジの共有もスムーズに行えます。

5. ChatGPTの主な機能紹介

5-1. 画像生成機能(DALL-E 3)

OpenAIはテキスト生成だけでなく、DALL-E(ダリ)という画像生成モデルも提供しています。最新バージョンであるDALL-E 3は、より自然で高品質な画像を生成できるのが特長です。

利用例

「未来的なデザインのロボットを描いてほしい」「日本庭園とSF要素が融合した絵を作ってほしい」

など、テキストでイメージを伝えると、それに合った画像を自動生成してくれます。

まだ日本国内での利用に制限がある場合もありますが、今後のアップデートにより一般ユーザーでも使いやすくなるでしょう。

5-2. データ分析(大量のデータをわかりやすく集計)

ChatGPTはテキストだけでなく、表形式のデータやアンケート結果などをまとめるのにも適しています。例えばExcelやスプレッドシートのデータを提示し、「このアンケート結果の傾向を教えて」「顧客満足度の低い部分と改善策を提案してほしい」という指示を出すと、ChatGPTが段階的に分析を実施。要点を抽出してまとめてくれます。さらにフォーマットを指定すれば、表形式のレポートも瞬時に生成可能です。

5-3. GPTs(カスタムAIアシスタント)

OpenAIが新たに発表した「GPTs」は、カスタムAIアシスタントを誰でも簡単に作れる仕組みです。企業や個人が独自の目的に合わせ、特化型のChatGPTを構築し運用できるようになります。顧客サポート、ECサイトのレコメンドエンジン、人事・総務などの内部管理ツールなど、用途は多岐にわたります。

ノーコードで構築できるため、IT専門知識がなくても比較的スムーズに導入可能です。社内の既存システムと連携させれば、より高度な自動化や業務効率化を実現できるでしょう。

5-4. 音声会話機能

最近のアップデートで注目を集めているのが、音声会話機能です。ChatGPTとユーザーが音声ベースで対話し、質問や議論ができるというもの。例えばスマホアプリを通じて「音声で」ChatGPTに話しかけ、リアルタイムで音声応答を受け取る、といった体験が可能になります。忙しい中でも手を使わずにAIに相談できるため、新たな利用シーンが広がると期待されています。

5-5. SearchGPT

OpenAIが発表している機能の一つに「SearchGPT」があります。これは、ChatGPTの大規模言語モデルとウェブ検索を連携させることで、より正確かつ最新の情報を収集・提示する仕組みと考えられています。ChatGPTは学習データに基づいて返答する性質上、新しいニュースやリアルタイムの情報には弱い面がありました。しかしSearchGPTを活用することで、従来の検索エンジンの強みを取り入れ、さらに幅広い領域の最新情報にも対応できるようになるのです。

6. ChatGPT利用時の注意点

6-1. 著作権について

ChatGPTの仕組み上、過去に学習した大量の文章データをもとに回答が生成されます。そのため、著作権がある文章をそっくり引用してしまう可能性はゼロではありません。ただし、OpenAIの規約によると、ユーザーが生成したアウトプットの著作権はユーザー自身にあると明記されています。

公式サイト抜粋(訳)

「コンテンツの所有権。お客様とOpenAIの間では、適用法で認められる範囲において、お客様は(a) 入力に対する所有権を保持し、(b) 出力を所有します。当社は、出力に対する当社のすべての権利、権原、および利益をお客様に譲渡します。」

とはいえ、安全策として、他者の著作物を意図的にコピー・転載する場合や、AI生成コンテンツを商用利用する際には、出典を明記するなどの配慮が必要です。

6-2. ハルシネーション(誤情報生成)のリスク

ChatGPTが最も注意を要するのが“ハルシネーション”と呼ばれる現象です。これは、AIが存在しない情報や誤情報をさも本当のように回答してしまうことで、確信度の高い文章生成にもかかわらず事実と異なる内容を含んでいることがあります。特に、専門的な分野や最新の統計、法令などはChatGPTの回答を鵜呑みにせず、必ず信頼できる情報源で裏付けを取るようにしましょう。

6-3. データ学習・入力情報の保管

1. アカウント漏洩リスク

万が一アカウントが流出するとチャット履歴が第三者に見られてしまう恐れがあります。ChatGPTには「履歴オフ設定」や「2段階認証」が用意されていますので、早めの導入をおすすめします。

2. 入力データが学習されるリスク

無料版での初期設定では、入力したデータがAIの学習に利用される場合があります。有料プラン(ChatGPT Plus、またはEnterpriseなど)では、デフォルトで学習オフになっているケースがありますが、念のために設定状況を確認し、機密情報の取り扱いには十分気をつけましょう。

3. 入力情報の保存

ChatGPT上に入力したテキストやファイルは、基本的に一時的に保存されます。しかし長期保存される保証はなく、後から参照したい重要情報は別途バックアップを取る方が安全です。また、機密情報を扱う場合は、そもそも社外秘データをアップロードしない運用ルールを設けるなどの対策が必要になります。

7. AI技術が普及した社会:これからの展望とまとめ

ChatGPTをはじめとする生成AI技術は、私たちが「仕事や生活をどう変えていくか」という問いに大きなインパクトを与えています。すでに多くの職種で導入が進んでおり、従来は人が行っていた作業の一部がAIによって効率化されています。こうした流れは今後さらに加速し、

  • 新たなサービスや製品の創出
  • 働き方の柔軟化、テレワークの推進
  • 人材のスキルセットの再定義

といった形で社会全体に波及していくでしょう。

一方で、「AIの誤回答リスク」や「個人情報の取り扱い」「著作権問題」など、技術がもたらす新たな課題も浮き彫りになっています。企業や個人がこれらに対策を講じながらAIを上手に活用し、リスクと恩恵をバランスよく享受していくことが重要です。

この記事の著者 / 編集者

チャエン

株式会社DigiRise 代表取締役

チャエン

法⼈向けのAI研修、及び企業向けChatGPTを開発する株式会社デジライズをはじめ、他数社の代表取締役。一般社団法人生成AI活用普及協会評議員を務めながら、GMO AI & Web3株式会社など他数社の顧問も兼任。NewsPicksプロピッカーも兼任。Twitterはフォロワー15万⼈。⽇本初AIツール検索サイト「AI Database」やAIとの英会話ができる「AI英会話」など複数のAIサービスも開発。ABEMAやTBSテレビなどメディア出演も多数。

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