AIの力で社員の可能性を引き出し、地域経済の未来を切り拓く
株式会社 柏野経営 様
導入前の課題
- AIの台頭により、士業の補助的業務がなくなるリスクへの危機感
- 社員の将来の可能性を広げ、テクノロジーの力で仕事のあり方を変えたい
- 都市部と地方、大企業と中小零細企業の間のAI活用格差の是正
導入後の効果
- 会議の議事録作成やメール文案の作成など、様々な業務でAIを活用し効率化
- 補助金申請業務の自動化により、顧客との対話に注力できる時間を創出
- AIを活用し、提供価値そのものを高められることを実践
目次
会社紹介
石川県金沢市で士業とコンサルティングを手がける株式会社柏野経営は、AIの力を借りて社員一人一人の可能性を最大限に引き出し、地域の中小企業の経営課題解決に貢献することを目指しています。
柏野経営の歴史は古く、40年前に現社長の柏野真吾氏の父親が税理士事務所として創業しました。真吾氏と兄が事業を引き継ぎ、18年前からはコンサルティング事業にも乗り出しています。事業承継やM&Aなど、顧客の経営課題解決に寄り添ってきた柏野経営。近年は、人事評価制度の構築支援など、経営資源の中でも特に「ヒト」の分野でのサポートを強化しています。
真吾氏は「うちの強みは、財務・会計の知見を基盤に、事業計画の策定から実行支援までワンストップで提供できること」と語ります。税理士としての専門性と、コンサルタントとしての戦略的思考を融合させ、クライアントの成長を後押ししてきた柏野経営。社員数は20名ほどの小規模事務所ながら、地元企業から厚い信頼を寄せられています。
「ただ、環境変化のスピードが増す中で、我々自身も変わり続けなければならない」。真吾氏はそう危機感を口にします。AIの台頭により、士業の世界にも大きな変革の波が押し寄せているのです。
課題感
代表取締役の柏野真吾氏がAIに注目したのは、情報格差の是正という社会的使命感からでした。都市部と地方、大企業と中小零細企業の間には、AIやITの活用に大きな格差が存在します。しかし、インターネットが普及し、クラウドサービスが当たり前になった現代、AIの力を借りれば、その垣根を越えて誰もが対等にイノベーションを起こせる時代が到来すると、柏野氏は考えています。
「2015年に発表された、『今後なくなる職業』の衝撃は大きかった」と真吾氏は振り返ります。データ入力や士業の補助的業務が、将来はAIに代替されるというのです。柏野経営の社員の8割は士業ではないため、彼らの仕事がなくなるリスクは無視できません。「国に守られている士業は生き残れるかもしれないが、補助者の仕事から順になくなっていくだろう」と危機感を募らせた柏野氏。社員の仕事と未来を守るため、AIを味方につけることを決意しました。
「AIは脅威ではなく、むしろチャンスだ。学べば誰もが横一線でAIを活用できる側に回れる」。そう語る柏野氏は、ChatGPTのような生成AI「法人リスキリング」と、企業向けチャットボット「AI Works」の導入を決めました。社員の将来の可能性を広げ、テクノロジーの力で仕事のあり方が変わることを体感してもらうことが、その目的です。
生成AI活用の効果
導入後、柏野氏自身が率先してAIを活用し始めました。会議の議事録作成やメール文案の作成、営業資料のサマリー、講演会のアイデア出しなど、用途は実に幅広いものでした。
社員の間でもAIの活用が徐々に浸透していきます。社内文書の作成やメールの下書き、懇親会の司会原稿作りなど、それぞれの業務の中で、AIのサポートを得ながら効率を上げる動きが出てきたのです。
「補助金の申請業務は、AI活用の恰好の題材だ」と、真吾氏は目を輝かせます。これまでは社員が手作業で行っていた申請書類の作成。それがAIにより自動化されれば、大幅な時間短縮が可能になります。「浮いた時間で、お客様の未来像を語り合える。それがコンサルタントとしての付加価値になる」と真吾氏は語ります。
AIを使いこなすことで、業務の効率化だけでなく、提供価値そのものを高められる。柏野経営は、まさにその実践に乗り出したのです。
今後の展望
士業の変革を進めるために、まずは社内の意識改革が必要だと考えた柏野氏。AIを活用することで、周辺業務を自動化し、浮いた時間で顧客との対話に注力する。その先に、より付加価値の高いコンサルティングサービスが生まれると信じています。
例えば、社内規定やFAQ、営業資料などをAIに学習させ、チャットボットが顧客の問い合わせに自動で応答する。それだけでも補助者の負担は大きく軽減できるはずです。さらに、創業から現在に至るお客様の歴史など、同社が長年蓄積してきた膨大な情報をAIに学習させれば、より洞察に満ちたアドバイスが可能になるでしょう。
「AIを使えば、自分たちの成長も加速する」と柏野氏。従来のように先輩社員から教わるのを待つのではなく、AIに質問しながら主体的に学ぶ。それにより「教わる力」ではなく「学ぶ力」が身につくというのです。
変化の中心には、いつも危機感と使命感があるのかもしれません。「会計事務所は顧客の情報を最も持っている。その情報をAIに学習させ、付加価値に変えることが使命だ」。
士業の枠を越え、テクノロジーの力で地域の未来をデザインする。株式会社柏野経営の挑戦は、まだ始まったばかりです。社内のAI活用を牽引するだけでなく、真吾氏は地域の同業他社とも手を携え、業界の変革を進めていく考えです。
「金沢から、日本の士業の未来を切り拓く。そんな大それたことを目指しているんです」と柏野氏は笑います。
地域経済のエコシステムを育て、テクノロジーの恩恵を地方から全国に広げていく。柏野経営の挑戦は、まだ始まったばかりなのです。